6章「レンマ」
セーラは本当にみんなから慕われました。「まるでプリンセスのようだ」と。
3月。一人の15歳の少年が父親と日本からはるばるまだ寒さの残るロンドンに来ました。
数日後…
「また新入生が入るってさ」
「今度は男子生徒なんだって」
「オリンピックの選手候補みたいよ!」
「オリンピック!?マジかよ!」
セーラの時ほどではありませんが、オリンピックの選手候補だということで話題にはなっていました。
ミンチン先生が来たので、生徒たちは慌てて席に着きました。
「皆さん、転校生を紹介します。」
その黒髪の少年がミンチン先生に呼び出され、前に出てきました。
「日本からはるばるやってきた黒棘レンマくんです。オリンピック柔道の日本代表候補です。皆さん、仲良くしてあげてくださいね」
レンマはたちまち学院内でも有名人になりました。フランス語の授業も簡単な単語や文章ならスラスラ読め、スポーツも万能です。
しかし、人間ならだれにでも得意不得意があります。彼にも不得意なものがありました。それは、ダンスの授業です。
レンマはやむを得ず制服でその授業を受けることになってラビニアに小言を言われました。
「ダンスの授業に制服で出るなんて、いい根性ですわね」
「…文句あるか?」
「TPOをわきまえて?」
「制服は冠婚葬祭に着ていけるんだぞ。知らないのか?」
レンマはスポーツこそ得意でしたが、ダンスは苦手です。ペアになった女子生徒に先に足を踏んでしまったらごめんと言っていました。
セーラも、かっこいいけど少し不器用な彼のことが少し気になっていました。
4月になって、パラレルにレンマが迷い込んだ時のことです。
セーラたちが来るまで、レンマは持ちこたえていました。しかし、柔道の投げ技を決めてもダメージを与えることができません。
「くッ…どうすれば…」
その時です。レンマは和装の侍戦士のような服装になっていました。首には黒と赤のグラデーションのマフラーもまいています。レンマはミラージュ能力を覚醒させたのでした。