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ゾンビアートとうつ病患者  作者: 久良 いつく
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1.りりこ・オブ・ザ・デッド

ゾンビものです。


にせん……ああ、今何年だっけ。

無職生活は日付感覚が狂う。病院とかでよくすみません今日何日でしたっけとか看護師さんに聞いて死にたくなる。

私こと古井戸りりこ、つまらんつらい死にたいと言いながら死ぬ勇気もなくダラダラ生き延びてる生ゴミ。



社会復帰とかもう無理。でも今の世界はイレギュラー。精神科に通う私でも主人公になれるかもしれない。

だから、私が死ぬまで殺し続けてやる。



人体を喰らい脳天を破壊しない限り動き続ける生き物、いわゆるお馴染み『ゾンビ』だ。

根暗の無職でうつ病の私は専ら家に篭もってカーテンも締め切り、ゾンビアポカリプス映画ばかり見ていた。

ので、一応ゾンビに関してはプロフェッショナル気取りだ。

ゾンビは音や光に敏感だし(陽動作戦に使える)、動きは鈍く(前に見た映画は例外、草原を全力疾走していて大爆笑した)、知能は低い(これもたまーに例外あり)。人を人たらしめる部分の前頭葉が機能を失っているので本能で動く。そして人が集まる所を察知して襲ってくる。



始まりは、SNSで拡散されてる動画だった。

日の沈んだ都会の公園らしき場所。不審者防止のライトで敷地内はそれなりに明るい。動画の奥の方にはゆらゆらと近づいてくる人影。でも、明らかにおかしい。顔中の穴から進行形で血が流れ出ているし、何より顔が濁った緑色だ。

『ヤバいなんか血出した人が変な声出してフラフラしてるんだけど病気の人?救急車呼ぶべきか警察?』

そのアカウントは、そこで投稿が止まっている。



数日後、ニュースで見たテロップは『新型感染症?予防策は?原因解明に急ぐ』。コメンテーター達が各々考えを述べる。

「いやー恐ろしいですね、原因も分かってないんでしょう?」

「そうですね。現在専門機関にてウイルス培養の研究も行われているそうですが、一方で非合法なアッパードラッグ乱用者だという意見も出ているそうです」

「私も長く医者やってますけどこんな事例は初めて見ましたよ。ウイルス由来だとしたら日本に本来いなかったものと考えて、場合によっては入出国の規制や検疫を強化すべきだと」

「視聴者の皆様も、もし様子のおかしい方を見かけた場合迷わず119番をしてください。では、つぎのニュースです。89才の男性がアクセルとブレーキを踏み間違えコンビニに突っ込む……」


そう、問題は感染経路。ヤバい順に並べると

①空気感染

②傷口や粘膜経路で感染

③噛まれて(及び引っ掻かれて)感染

の、順番だろう。

まずは①の線は捨てた。空気感染するなら人が蟻のようにひしめき合う東京なんかでもっと爆発的にパンデミックを起こしているはずだ。

②は……有り得なくはない。返り血が目に飛んだりささくれに入ったりするだけで感染を起こす。願うのは『攻撃されなければセーフ』の③だ。



―――さらに数日後、外は生きている人間を探すほうが難しくなった。人類が事態をあまりに能天気に構えていたせいで。

つまり陥ったのだ。パンデミックに。


まだ上下水道やガス、電気などのライフラインは正常なことが救いだ。今のうちに田舎特有・キンキンに冷えてやがる水道水でも飲んどこう。引きこもりが部屋から出ましたよっと。息をするように自虐。

社会は当然真っ当には動かず、平日の昼間のリビングには何やら春も近いのに手袋やらマスクやら厚着しているお父さん。


「あれ、お父さんどっかいくの?」

「ああ、ちょっとイオンに買い物。りりこも来るか?」

ショッピングセンター……。つまり、食料やら武器やら様々必要なブツを手に入れに行くのですねお父様!?


一瞬悩む。なぜならこういう場合ショッピングモールなどは同じ考えの生存者が集まりやすい。人の多いところにゾンビは集まりやすい。最初こそみんな一致団結してゾンビをボゴボゴにするが、その後人間同士の領土・物資争いになるのがセオリーだ。

……いや、それを考えたらむしろ行動は早い方がいい。遅ければ遅いほど物資は減っていくし、ゾンビは増えていく。敵対勢力だって現れるかもしれない。


「お父さん、今日何曜日?」

「えーっとぉ……水曜日」


「火曜市じゃないから人少ないし、私も行く」




to be continued……

スローペースで進みます。

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