□028■心音
ケータイの蓋を開けると新着メールが届いており、そこには文字化けとヒントが記載されていた。
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Ядxи
"胸躍る者の元に探し物がある"
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「胸躍る?一体何のことだよ…」
とにかく皆で思いつくものを探し始める。
僕はそういった感じの人形や置物がないか調べてみた。
しかし結果的には時間の無駄だった。
また皆と合流してしまう。
「皆は、みつかったかい?」
「全然だめです」
「終わったよ俺たち…」
「もぉ、パラシュートになりそうな物でも見つけて飛び降りようぜ?」
「無理だって、外は雷の巣なんだぞ!」
「大丈夫だって、見てみろよ!わけわかんねぇーけど外の時間は止まってる!俺たちならやれるはずだ!!」
この時、何かを思い出せそうな気がした。
「胸躍る…胸躍る…胸躍る…!!まさか」
そうだ…あれだ!!!
「みんな!僕に思いあたるふしがある、きてくれ!」
僕らは首のない血だらけの男が座っている座席の周りに立っていた。
「ここのどこかにあるはずだ」
「なんで?」
「聞いた話によると、この人は胸が苦しそうに最初は抑えてたんだ。そして、こうなった」
「…!!あぁ〜なるほど、胸躍る=心臓発作的なことという訳だ」
しかしここは既に探した場所だ。
本当にあるかはわからない。
が、胸躍ると聞けばここしか思いつかなかった。
それに残り時間も3分、ここで見つけなくては終わってしまう。
座席の周りや、首のない男性の上着ポケットや持ち物を調べてみた。
しかし見つからない。
そして次にシャツの中を触ってみた瞬間だった。
胸の辺りを触ると心臓が激しく動いている。
そのことを皆に告げると、辺りは静まり返った。
「胸躍る者の元に探し物がある…って言うことはよ…体の中にあるんじゃねーの…?」
里山君がそういうと田梶間君が勢いよく吐き出す。
「しかし、もぉそこしかありませんよね?」
中年男性は他人事のように言う。
「一体誰が取るんですか?」
吐いている田梶間君が言う。
考えた末に決断した。
「…僕がやろう…」
皆の視線が一気に集まった。
僕はゆっくりと首の辺りから心臓に向けて手を伸ばした。
食道や骨などが邪魔で、自分自身吐きそうに何度もなる。
しかし、生きるために、根性で激しく振動する心臓の元に手がたどり着いた。
あたりをかき回してもそれらしき物は見つからなかった。
時間は30秒を切っていた。
なんとなく心臓を握ってみた。
どことなく不自然な感触を味わっていた。
残り、10秒。
「おい!長谷川さん!!早く!!!」
皆の焦りが感じ取れる。
しかし、僕には心臓の鼓動だけが聞こえる。
残り3秒、2、1!
その時、思うがままに心臓をつぶした。
残り…0…秒。
悲鳴と同時にあたりは白く輝き、目を開けられなくなった。
終わった…