□022■ゲーム始動
体に力がみなぎってくる感じがする。
指の骨を勢いよく鳴らした。
「さぁ、今日はどんなゲームだ?」
振動していたケータイを取り出すと、蓋を開き、新着メールが指すサイトに向かう。
「ふぁ〜、今日は早く済みそうだなっと」
あくびをすると、仕事で疲れた足を動かし、何か獲物でも狙うように住宅街を走った。
住宅街を回ったのはいいが、全部確認することができなかったのはこのA型の俺には許せない。
でも、俺ならやれる。
何故なら、俺はこの物語の主人公なのだから。
死ぬはずがない!
持参しておいた”アル物”をバックから取り出すと、道端にバックを投げ捨てた。
あんな物持っておいたって邪魔なだけ。
安全装置をはずすと、いつ襲われてもいいように、すぐ構えられるよう走った。
「どこだ、どこにいる!?」
走っていると、遠くに太った中学生が見えた。
近づくと、その中学生は、一瞬体を震わせ、こっちを振り向いた。
さすがに、”コレ”を見られると逃げられるので、後ろのズボンの隙間に差し込む。
「ねぇ、君さ、怖がらなくてもいいからちょっと聞いてくれる?」
「なんだよ、おっさん!俺さぁー疲れてるから早く帰りたいんだけど!?」
生意気なガキだ。
でも、これはいい…俺には好都合。
「ケータイ持ってない?ちょっと落としちゃってさー、君が持ってるケータイから電話をかければすぐ見つかると思ったんだよね〜」
「それで、人を見つけて、ここまで走ってきたわけか…でもなおっさん、そんなただで貸してもらえると思ってんのかよ!あぁ!?」
こいつ、いたぶってやらなきゃこの性格直らんな…
まぁいい、こうくるとは大体想像していた。
人間ってのは強欲だ。
無料で人に何か貸すってのは、よっぽどのまぬけがすることだからな。
でも、そうなった場合のストーリもちゃんと用意してあるよ、君。
「ヤッパリそうくるのか、最近の子供は怖いね〜」
「ったく、うぜーんだよ!」
中学生はそう言うと、俺に背を向け帰ろうとした。
そこで、俺は作戦を実行したというわけ。
なんか、探偵になった気分。
犯人を見つけるためにあらゆる手を使うって感じ?
「じゃあ3千円でどうだ?」
中学生はッバ!と後ろを振り向き、あることを思いついたのか、こっちに向かって怒鳴りだした。
「なめてんのかよ!さっきさんざん俺のことを言ったくせによー、金で解決したいなら、その10倍、3万円は持ってこいよ!」
このガキ、大人相手になめてかかって、ただで済むと思ってんのか?
それに、俺はお前の悪口を言った覚えはねぇー!
「まぁ、あのケータイはなくしたら困るし、しょうがない…3万、払うよ」
中学生に千円札30枚を渡すと、ちゃんと金があるか確認するために背中をこちらに向け、一枚一枚確認しだした。
俺はというと、こいつのケータイを使って、メール確認を行った。
すぐに探しているものは見つかる。
中学生は金を確認し終えると、また数えだした。
どんだけ確認すればその気持ちを抑えきれんだよ。
その時、中学生は聞きなれない音を聞いた。
カチャリ…という音を…
中学生はまさかと思いながら後ろを振り向く。
振り向くと、目の前に穴があった。
そしてその後ろには金をくれた男。
こっちを見て不気味な笑みを浮かべている。
中学生はすぐに悟った。
自分が危険な状態にあることを。