□046■リタイア
横田純一編-ファイル02
突如として彼女のユカリの死に直面した純一。
耐え切れない絶望に彼の心は精気を失いつつあった。
そんな最中NOAH CUBEに選ばれた純一……
過酷なヒントの少ないルールーの中、加藤重秋の慈悲により助かった彼は何を思い、どう行動していくのか――
加藤 重秋と戦った翌日。
別段問題が無かったため、学校に向かった。
だが少し吐き気がする。
未だに信じられない、あんな非現実が現実だと思い知ったからだ。
誰がいつ敵になるか分からない……
でも、行かなくてはいけない学校……
ユカリの分まで俺が生きてやらなくてはいけない。
そうだ、俺が元気じゃなきゃユカリが悲しむ。
元気出せ俺!
初心に戻るんだ!
……―――
「やっとついた~」
席に深々と腰を下ろすと、いつものように机の中に教科書をつめこんだ。
すると他のクラスの奴が俺のほうに向かってくるのが目の隅に見えた。
けどそれは俺のほうに向かってるだけで、終着駅は俺のところではなく、斜め後ろの大沢だった。
そんなこんなで、いつもの俺が始まった。
授業中、昔のようにわかる問題はすべて挙げた。
皆はそれに驚いたようで、少しずつ仲良くなれていった。
「お前が元に戻るなんて思わなかったよ~」
「俺はいつもの俺だけど?」
「そういう意味じゃなくてさ~」
高橋は、いつものように俺のところに来てくれた。
今思えば、この携帯を捨てれば、全てが上手くいくような気がする。
あんなゲームをしなくてすむし、ユカリとのいい思い出だけになるし……
ユカリ自信俺にあんなゲームをして欲しくないはずだ。
ユカリはしてたんだけど……
何でこんな残酷なゲームに参加してたんだろ?
小さな疑問を残しつつ捨てることを決めるとゴミ箱の中に携帯を放り投げた。
「いいのかよ……?」
高橋は心配してくれた。
「いいんだよ、新しいの買うから」
「ふ~ん」
「って、おい! 次、共同体育じゃねーか!!」
俺らは急いで更衣を済ませ体育館に向かった。
……誰もいない教室には沈黙だけが漂っていた。
そこに一人の青年が現れる。
彼はゴミ箱のなかに手荒に手を突っ込むと、何かを探し出した。
探している物を掴むと、小さな微笑を浮かばせながらどこかへ消えていった。