□029■答えの先にある運命
終わった…そう思っていた。
しかし、光がやむとさっきと何も変わってはいない。
変わったといえば、窓から見える景色が青々した空に変わっていることと、皆の表情だった。
「このゲームに負けてたら、あのままドデカイ落雷を受けてたんだよな…きっと」
里山君は腰が抜けたようにその場に座り込んだ。
他の皆も同じようにその場に座り込んだ。
しかし、被害が1人だけ出たことに変わりはない。
心に黒いもやもやが出来てしまった。
首の男のほうを見ると、外の圧力のせいで押されたのかは知らないが、顔が見えていた。
痛みをこらえ切れない表情をしている。
「まさか…!?」
顔と体が離れてるからなのか声が小さい。
「――グァアアアッガ、グゥッ!!」
回りの皆は気づいてないらしく、私は知らないふりをした。
でも頭の中では知らないふりなど出来ない。
生きていた人間を僕が殺した…これじゃ僕が殺したようなもの…
機内アナウンスが流される。
もうすぐ目的地に着くようだ。
着いたら警察に事情聴取をされることを考えていた。
窓の景色を見ていると、考えが次第に変わっていった、変えたかったのかもしれない。
空の景色は青海が助けてくれたと感じてさせるような暗示のように見える。
いや、そう思っていたい。
「…ありがとうな、青海…父さんを助けてくれて…」
その時だった、ミシミシと嫌な音が耳の中に入ってきた。
どうやらその音は、僕らのいる真上で何かが起こっているらしい。
上を向くと、男性の頭がはまっている天井に大きな亀裂が出来ていた。
「結局…運命は変えられないというのか…」
ミシミシという音は尚も止まない。
とうとう首が取れた男性の頭が、スッポン!と空の彼方に消えていった。
そこからは全てが一瞬のように思えた気がする。
機体が2つに別れ、後部座席の人間は全員何もない空に飛んでいった。
そして僕達側の人間は、気体から振り払われ外に飛んでいく者がたくさんでていた。
僕は何とか近くの座席に捕まり、命を支えている。
しかし、その衝撃に耐えられず悪いことに気絶してしまった。
最後に見えたのは機体は大きく傾き、もうすぐで到着するはずだった滑走路に衝突し、大きな爆発が起こったという映像だけだった。
***
「…速報です。今日お昼の15時48分ごろ、238便の飛行機が原因不明の事故により、多数の被害者が出ました。
乗客全員死亡と思われ、まだ遺体の確認なども現段階では行われておらず、機体の後部座席に座っていた人たちは――」
運命は変えられなかった…
もぉ、この運命は止められない…
ゲームは始まってしまっているのだから。
被害は拡大し、世界は新たなる脅威を生み出し、変貌する…
そして愛するものは消え、恨み、恐怖、破滅が世界を包み込む。
どれだけの血を流すことになるのか…
どれだけの涙を流すのか…
今日から始まる残りの人生の月日はどれだけ短くなるのか…
飛行機が滑走路に衝突する前に吹き飛ばされた僕は海に浮かびながらそんなことを考えていた。
意識もうつろうつろとしていた。
しかし、死など僕には怖くはない…
あの世ではきっと、2人が待っていてくれるのだから………
まぶたを閉じかけようとした時、近くに島が見えた。
しかし、まぶたは意識とは正反対に、閉じていく。
***
「新たな情報が入りました!飛行機の大規模な爆発により、全ての遺体を確認することが出来ないもようで、
どれが遺体でどれが物なのかも見当もつかない状態です。後部座席の人たちは今だ見つからず、海上自衛隊が、
半分の機体は海の底に沈没したと考え、捜索中との連絡が入り――」