不毛
離婚をしたことがある人は、きっと理解できるだろう
その理由が、どちらにあろうと、かなり心と体の力を弱め、精神を疲れさせることを
私もまた、例外ではなく、かなり全てを消耗した
心も、擦りきれたようになり
体も、まだ28歳だというのに、起きるのがやっとのような日々
そして
何故か慰謝料を請求されたので、金銭的にも消耗した
人と出会い、別れるだけで
金銭の授受が発生するとは
しばらくは、それも理解できずにいたけれど
仕方がない
そう言うならば、それでこの気持ち悪さが解消するならば
そう思って、払った
入社してから、6年、欲しいものもしたいこともなかったから、働いているだけで貯まっていったお金、半分通帳から消えた
彼の家は、多分今の日本の中でもお金がない方ではない
寧ろ、ある方ではないだろうか
私には何の関係もないから、考えたこともないけれど
小金持ちは、ケチなのかもしれない
心が
ちょっと気の毒にも思った
そんな日々の中、職場では上司が、どんどん新しいプロジェクトを私に与えてくれて、なんとか自分を奮い立たせることができていた
ある日、上司から、食事をしながら打ち合わせをしようと言われ、ある都内のホテルに誘われた
そのホテルには、中華もフレンチも料亭もあるので、そのどれかでの食事だろう
そう思っていたら、先にロビーにいた上司はエレベーターに向かい、そのボタンの上階を押した
何かおかしい
私の中でざわついたけれど、まさか、と打ち消す方が強かった
着いた階は、レストランなどない、客室だけがある階だった
それでも、打ち合わせならば
自分に言い聞かせ、上司のあとに続いた
そして
オートロックの、『ガチャッ』という音が鳴り響いた
上司が私に近づき
私を抱き寄せた
なんだ、これは
瞬間、わかっていたことのような、まさかこんなことになろうとは?という気持ちとが、ぐちゃぐちゃに混ざりあって
私は、思い切り上司を突飛ばし、ガチャガチャと、わけのわからない鍵を弄り、なんとか開けたあと
飛び出した
ふざけるな
ふざけるな
何故か、普段使わないような言葉が頭を往復した
そして、すぐに私は、コピー室での仕事に変わった
「これ、1000部コピー」
上司は、毎日言う
それをし終わり、上司の元へ持って行くと、
「あ、シュレッダーかけて」
その繰り返しだ
こんなことをしながら、時間を費やしていることの不毛さ
こんなことをしている自分が、もらっている給料の無駄
なんだか
結婚に似ていた
そして
会社を辞めた




