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おしえて  作者: イチニヤデアケ
2/11

年齢


30


そう、あの男性の言ったところの30から前後3歳


ではなく、どんぴしゃ30


結婚は、していない


離婚してからどのぐらい経ったのだろう


結婚は一度、した


仕事は…


ジーンズにTシャツ


そのTシャツも、気に入ったら何度も着てしまうから、薄とぼけた色になったブルー


ちょうどスカイブルーになったから、自分的には尚更お気に入りになったけれど、同時にヨレヨレになるという副産物もついてきている


でも…


ヨレヨレでも、スカイブルーの方を私は選ぶ


そんな私を見て、カタい仕事はしていないかもしれない


でも、休日にラフな恰好をしているだけかもしれない


もしかしたら、何もしていないのかもしれない


そうあの人は、言った


何もしていないわけではないけれど、カタい仕事をひと月前に辞めた


そのあとは、近所のコンビニで、夜中のシフトを選び働いている


本当は、しばらく失業保険をもらえるはずで、その金額もそう少なくはないけれど


失業保険をもらうのが嫌だったから


その理由は…


いや、理由はないに等しい


そして


『穴』だ


その言葉が一番私の真ん中に刺さった


どんな『穴』なんだろう?


形も去ることながら、深さは?大きさは?色は?穴だから、黒いのか?どんなイメージなの?


私には、『穴』が開いているの?


それは、嫌な感じなの?それともどういう意味合いで言ったの?


あの時のように、鬱陶しいぐらいに質問が湧いてくる


ふとした瞬間


歯磨きをしているときとか


ドライヤーで髪を乾かしているときとか


眠りにつく数分前とか


どうして?


どうしてそう思ったの?


そして


なんとバカげたことが頭を支配するのだろうと、頭に浮かんだそれらを払拭し、目を閉じているといつの間にか眠りについているようだった


大体が、何故私はそんなことをあの男性に訊いたのだろう


あの男性は、何故あんなに真剣に答えてくれたのだろう


そもそも、『穴』が開いているように見える


なんてことは、言うにとても勇気のいることではないだろうか


初めて会った、いきなり変な質問をしてくる相手に


初めてではなくても、知人だったり、もっと親しい間柄であっても躊躇するはずだ


なのに私は、そう言ってもらえたことが、驚きはしたものの


どこか嬉しかった



あの後、ふたりでわけもわからず笑いあったあと、じゃあこれで


とお辞儀をして別れたのは、私が声をかけてからどれぐらい経っただろうか


多分、暗くなりかけていて、夕焼けがきれいだな、と思ったのだから、私があのあたりをぶらついていた2時ぐらいから2、3時間はいたのではないだろうか


所謂、『アカの他人』って方とそんなに長く一緒にいた自分が、今ではとても不思議なのだけど


それでも私は、あの時間が愛おしくてたまらかった



もう、二度と会うこともないあの男性


もう一度会ってみたいという感情が、私の中で充満していた


どこかで、映画やドラマのように、そんなことがあるのではないだろうか?と、期待している自分もいた



そんなこと、これまでの人生で思ったことなどなかったのに



『アカの他人』は、親族や周りの親しいと呼べる誰よりも


家族のような気がした


こんなこと、普通に世の中で発言した日には、『イタイヒト』と言われてしまうのだろう



普通


「普通…普通ってものも、何を基準に捉えればよいかわかりませんけどね」


あの男性は、そう言った


あの瞬間、もしかしたら、『穴』が開いていると言われたよりも深く、何かが刺さったのかもしれない



私もずっとそう思っていたから




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