第17話 『 ポチの正体 』
ポチは威圧を放ち、立っている。
「なんていう威圧だ! さっきの奴とは、ケタ違いでござる」
「なんてことするんだ。隊長じゃないのか?」
桃太は言った。
「奴は隊長の器ではなかったのだ。隊長の座を狙っていたので、隊長を
譲ってやったのに。この役立たずが!」
そういうと、倒れている邪犬を見下ろした。
「では、お主は……」
「オレは本当の犬隊隊長、犬丸」
犬丸は刀を抜き構えた。犬丸は二刀流だ。
桃太たちも身構えた。
「二人とも待ってくだされ。ここは拙者にまかせていただきたい」
「なんでですか?」
「これは山吹家の問題でござるから、拙者の手でカタをつけたいんで
ござる。」
「わかったぜ。ザコはオレたちにまかせな」
「かたじけないでござる」
新之助と犬丸は向かい合った。
「いくでござる」
新之助は犬丸に跳びかかった。
犬丸は刀で受けると、もう一方の刀で斬りつけ、新之助もその刀を
かわす。
二人は激しい攻防を繰り広げる。
「お主、なぜそんな強いのに隊長の座を譲ったんでござるか?」
「フン、オレにとって鬼王様の野望のためなら隊長なんかどうでもいい
こと。だから奴に面倒な隊長を譲ってやったんだ」
そういうと、犬丸は攻撃をした。
「このままでは……」
新之助は後方に下がって、刀を鞘に納めた。
「山吹流剣技『居合い斬り』 」
すると新之助と犬丸は交差した。二人の動きは互角で無傷だ。
犬丸も負けじと技を繰り出す。
『竜巻斬り』
犬丸は刀を持った手を広げ、すごい横回転をして迫ってくる。
新之助は防ごうとするが、吹き飛ばされた。
「うっ」
新之助は迫りくる犬丸をなんとか避けて攻撃を加えるが、犬丸には効か
ない。
「くっくっくっく。これで終わりだ」
犬丸は新之助に向かっていく。
しかし、新之助は刀を構えたまま目をつぶっている。そして、
「山吹流奥義『一刀両断』 」
新之助は刀を振り下ろす。
すると、犬丸の動きが止まった。刀は折れて、体には深い傷を負った。
「ぐっ……ここまでか」
犬丸は後ずさりすると天守閣の柵から下へ落ちる。
新之助が駆け寄って下を見ても犬丸は見えなくなっていた。
「うわっ」
桃太たちも、まわりのザコを倒し終わった。
「終わったでござるな」
新之助は戦いを終えると大きく息を吐いた。
鬼王軍犬隊を倒したことは、その日に町中に広まり、次の日には町中で
盛大な祭りが行われていた。