第15話 『 故郷 』
次の町に向かう三人。
「次の町は、確か犬山城下だったな」
半蔵が言う。
「城は初めてだなぁ〜」
浮かれる桃太に対して、新之助は黙っている。
「どうしたんですか?」
心配する桃太。
「いや。ちょっと……」
「なんだよ」
「実は犬山は拙者の故郷なんでござるよ」
「そうなんですか」
「なんで今まで隠してたんだよ」
「隠してるつもりはなかったでござる」
「じゃあ、新之助さんの故郷だから、ゆっくりしていきましょうよ」
「これが、そうはいかないんだな」
「どういうことです?」
「今、犬山は鬼王軍が支配しているんでござる」
「じゃあ、どうするんですか?」
「近くに村があるんで、詳しい話はそこでするでござるよ」
そう言うと三人は村に向かった。
村は貧しく小さい。
「ここでござる」
新之助は一軒のボロボロの家に入った。
「ただいま帰りました」
「兄上!」
「新之助かい?」
十歳ぐらいの男の子とその母親らしき人物が言った。どうやら新之助の
家族のようだ。
「元気だったか? 千代丸」
「うん」
久々の再会で話が盛り上がる。
「ところで後ろの人たちは、どなたなんだい」
「そうであった。こちらの二人は桃太殿と半蔵殿で一緒に旅をしてます」
「そうですか。私の名はハツ、新之助の母でございます」
「どうも」
新之助たちは、いったん落ち着くと話を始めた。
「実は拙者は犬山城主、山吹 時長の子なのでござる」
「えっ」
桃太たちは驚いた。
「二年前、犬山城は鬼王軍の犬隊に襲われたんでござる。拙者たちは戦った
が鬼王軍相手では手も足もだせず。そして、父上が拙者たちを逃がすために
犠牲に……」
「そんなことがあったんですか」
「その時はどうすることも出来なかったでござる。だから、拙者は犬隊を
倒すため修行の旅に出たんでござるよ」
「で、どうなんだい。倒せそうなのかい?」
母親が新之助に聞いた。
「はい。きっと倒してみせます」
「桃太さんたちも協力してくださるのですか?」
「いいえ。桃太殿たちに迷惑はかけられんでござるよ」
「なにを言ってるんですか」
「そうだぜ。水臭いこと言うなよ。この前、手伝ってくれたんだから、
今度はオレが助ける番だぜ」
「かたじけないでござる」
「ありがとうございます。汚いところですが、ゆっくりお休みください」
桃太たちは、今後のことを話し合うと明日に向けて休んだ。
翌日。
「よし、行くでござるよ」
三人は犬山城下町にいた。