第100話『ウィスパー王国』
僧国を出港して2カ月、とうとうウィスパー王国に到着した桃太たち。
「ここがウィスパー王国かあ」
港にはたくさんの船が停泊していて、賑っている。
「ここはまだウィスパー王国の入り口です。王都は内陸部にあります」
左近は開国してから、海外のことを学び他国のことにも詳しくなっていた。
港から馬車で移動すること半日。王都が見えた。
「わ~」
桃太が見たものは、両端が見えないほど続いている高い城壁だった。門の前では検問があり、順番待ちをしている。
「次!」
桃太たちの番になると、左近が招待状を門番に見せた。
「大会の出場者か。分かった通れ」
門をくぐると人で溢れている。そして、街の中心の一番高い所に巨大な城が建っていた。
「まずは、大会の受付を済ましましょう」
左近はそう言うと、皆で大会会場のコロシアムに向かう。会場に着き招待状を見せて受付を終えると、
「これで当日の試合を待つだけだな」
「そうですね。まずは宿で休みましょう。長旅でヘトヘトですよ」
桃太たちは、宿に向かう。宿は大会出場者用に用意されていて、大会期間中はゲストとしての待遇のようだ。大会まで2週間ほどあるため、桃太たちは観光したり、体を動かしたりして時間を過ごす。もちろん、景虎は単独行動で過ごしている。
2週間後、いよいよ大会が開催される。
「パン、パン」
花火が上がると、
「只今より世界格闘大会を始めます。出場者の登場です」
司会のアナウンスが会場内に響く。
「まずは、北欧の海に敵なしと言われるバイキングチームの入場だ。次は、スパルタ王国からやって来た戦闘民族スパルタンチーム。次に登場するのは、100以上の部族をまとめるジャングルの王者、ズール族チーム。男子禁制、女だけの国からやって来た女戦士、アマゾネスチーム」
続々と呼ばれ、次は桃太たちの番に。
「はるばる東洋からやって来た倭の国代表、サムライチーム」
桃太たちが、入場すると会場は満席の客で一杯だ。そして、
「次も東洋からの参加者。中華代表、三蔵法師チーム」
入って来た人物を見ると、以前食堂で会った大食いの3人が居た。
「よう、お前たちも出場者だったのか」
その中の1人の男が話しかけて来た。
「あなた方も」
「ああ、お互いがんばろうぜ」
男は言う。
「次は、招待チームとは別に予選を勝ち抜き上がって来た謎の5人組。ミステリアスチーム」
そのチームは黒頭巾を被った不思議な出で立ちで、何やらこっちを凝視しているように見える。
「そして、最後に紹介するのは、我らが英雄。ウィスパー王国最強の騎士。ミカエル将軍チームの登場だ~~」
ミカエル将軍のチームが入場すると、会場が揺れるほどの歓声が上がる。これで、全8チームが出揃い開会式が始まる。
「これよりトーナメントによる試合を始めます。ルールは先に3勝したチームの勝ちという単純なもの。勝敗は場外に落ちるか、戦闘不能あるいは降参したら負け。もちろん相手を死なせても負けだ。武器の使用はOKだが、銃は禁止。あくまで格闘主体の試合とする」