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不幸なんですけどなんとかなりますか?  作者: フスマ
アルゲディン学園編
9/14

07、初めての土地ではやっぱり不幸?

読んで下さった皆様のおかげでいつの間にか69pt!!!

ありがとうございます!投稿し始めて約1週間!これからもできるだけ投稿していきますので今後とも『不幸なんですけどなんとかなりますか?』をよろしくお願いします!

 

「お客様方、アルゲディンに着きましたよ!起きてください!」


 とてもうるさい。せっかく気持ちよく寝ていたのに。すごくイライラしてきた。いやいやいや、今なんて言った?聞こえていただろ。ついに、ついにアルゲディン王国についに着いたのだ!

 馬車での4日間はとても辛いものであった… 主にキーンにより行われた特訓が!馬車の揺れなど気にならないほどしごかれたのだ。馬車の中でもできることともなると限られていたのだがそれがとてもしんどかった。なにせ魔法の使い方やコントロールの仕方を叩き込まれたのだ。毎日MPが尽きるまでずっとだ。


 けれど一瞬にしてその疲れも吹っ飛んだ。馬車を降りると地面には切りそろえられた石によってタイルが形成されていて周りにはたくさんの店が並んでいたのだから。


「まるで別世界だな…」

「す、すごい!」

「村とは比べられねぇな」


 昼過ぎぐらいで日が照っていて暑い中、俺達はそれぞれ口を開けて驚いていた。そんなことは気にせずにキーンはロイツ達に命令をした。


「おい、お前達、俺は馬車の中でで言った通り少し用事がある。寄り道はせずにまっすぐに中学に向かえ。絶対にまっすぐ行くんだぞ。絶対にだ。」


 やたらと心配しているキーンに俺達は生返事をした。


「「「...分かった。」」」


 そしていつの間にかキーンがいなくなってたことに気付くまで5分はかかった。それほど街がすごかったのだ。


「と、とりあえず中学行くか。」

「あ!そ、そうだな!」

「う、うん!」


 マイクの声にようやく正気を取り戻すロイツとチーク。それを見て物陰に隠れている人影はニヤリと笑うのであった。ロイツはその視線が分かっていたのだが気分が浮かれていたのであまり気にはしていなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そこのアンちゃん!今年から中学生かい?それならこの店で準備しておくといいよ!特別価格にするよ!」


「そんな店の言うことなんて聞く必要ないよ!価格は高いし品質は悪いしイイトコなんて何一つありゃしない!うちの方が安いし品質もいい!兄ちゃん、こっちで買っていきな!」


「あぁ!? なんだと!? 冗談はてめぇの頭だけにしやがれ!」


「てめぇの薄毛と違って俺は自分で剃ったんだよ!無茶な努力なんてやめとけ!同情を買いたいってんなら別だがな!がっはっは!」


 そう言って頭がつるつるの店主とハゲを隠している店主が俺達を巡って喧嘩していた。


「あ、あの!喧嘩はやめてください!私達今お金ないんです!」


 店主達の様子を見て優しいチークは耐えられなかったのだろう。

 店主達も中学生には見えないチークの美貌を前にピタリと喧嘩をやめてしまった。


 つるつる店主が言う

「そ、そうかい。嬢ちゃん、見苦しいとこを見せちまったな。迷惑かけちまったな、金に目が狂いすぎてた...」


 そしてハゲ隠しの店主も

「すまねぇ、姉ちゃん。さっきは喧嘩しちまったけど結構仲良しなんだぜ?俺達。何か欲しい物があったらまた来てくれ。姉ちゃんべっぴんさんだから特別サービスしちゃうからな!」


 落ち着いた店主を見てチークはにっこりと微笑み返事をした。


「はい! よろしくお願いしますね♪」


『ズキューン!!』

 そんな音が聞こえた気がした。店主はもちろん、ロイツ、マイク店主達の喧嘩を楽しそうに見ていた周りの人達も顔を赤く染めてチークを見つめていた。


「行きましょ♪ ロイツ、マイク!早く学校に行かなきゃ。」


 そう言って俺達の腕を持って道の端へと移動する人を気にもせずにニコニコしながら歩いていた。俺はチークのこういう親譲りの優しいところがとても好きだ。他人を放っておけない性格という感じだ。ただ、やっぱり少し自重してほしい。無意識でやっているのだろうけど、いつか誰かに取られて俺の彼女ではなくなってしまうのではないかという不安が込み上げて来るのだから…


 周りの目線が痛くとても歩き辛かったがようやく中学に着いた。とりあえずそこでは明日にあるクラス決めの試験への要請をするのだ。


「うおぉぉぉぉぉぉ!デケェ!街もすごかったがここはもっとすごいな!俺達はこんなとこで暮らして行くのか!それにしてもやっぱりでかい!村よりも敷地はでかいんじゃないか!?」


 マイクはテンションが上がりすぎて叫びまくっていた。けれど大きいのも本当で自分達が育った村よりも敷地は広く至る所に闘技場らしきものが建っていた。


「わぁ〜!ほんとに大きいね〜」

「ああ、こればっかりは俺も驚いた。」


 チークも俺も口を開けて驚いていた。そんな時に後ろから声がかかった。


「お褒めに預かり光栄でございます。この学園は実技を中心に行っておりますゆえ、たくさんの闘技場、練習場が必要となります。なのでこのような敷地になってしまいました。あ、私はこのアルゲディン学園の学園長を担っておりますナレイル=デンフォートと申します。」


『ビクンッ!』

 体を震わせて俺達が振り向くとそこには背が小さく赤髪をツインテールにしている幼い少女がちょこんと立っていた。


「「「・・・・・・・・」」」


 俺達は考えていた。これは小学生に騙されているのかもしれない、と。


「...あなた達、私はこれでも大人です。決して小学生なわけではありません。あなた達と同い歳の娘もいるのですよ?」


「「「・・・・・・・・」」」


 俺達はまだ信じきれていなかった。確信が得られないのだ。


「はぁ、まあいいです。慣れてますからね。それより私はキーン様にあなた方の試験申し込みの手伝いをするように言われていますので私についてきてください。」


 そうしてトテトテと歩いていく学園長。やっぱり小学生低学年にしか見えない。だがキーンのことを知っているのだから間違いはないだろうと思い少女... いや、学園長について行った。



 ーーー第一闘技場ーーー


「ここは?」

 俺は学園長に尋ねた。


「ここは明日試験が開催される会場です。試験内容はMPの数値と魔法の属性適正、模擬戦を行ってもらいます。中学へ進学をするということは多少は魔法を使えるということですので問題はありません。」


 少女らしからぬ丁寧な言葉使い。


(やっぱり小学生じゃないな)

 とても失礼なことを思いながらそこでロイツ、チーク、マイクの3人は説明を聞き申し込みを済ませた。


 その帰り道。俺達はこれから住む寮に向かっていた。寮は男子寮と女子寮があり結構離れていた。それが分かってチークは寂しそうにしていたが毎日会いに行くと言って頭を撫でるとチークは頬を赤く染めて下を向きながら頷いた。


 そんなやり取りをしていると何かがすごい勢いで俺に向かって来た。


「きゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!誰か助けてぇ〜〜〜〜〜〜〜!私を止めてぇ〜〜〜〜〜!」


『バァン!』

 見事に衝突した。すごい砂煙がたっている。


「大丈夫!?」

「大丈夫かロイツ!」


 チークとロイツは心配してくれたが別に大したことはなかった。それよりもだ。俺にぶつかってきた子は大丈夫なのだろうか。そっちの方が心配である。


「いったたぁ。すいません!大丈夫ですか!?」


 声が聞こえてきた。砂煙が収まってきたおかげで顔が確認できた。その顔を見て俺達は呆れた。


「...何してるんですか。学園長。」


 そう、赤髪で小学生低学年の容姿の女性であった。

 しかし


「失礼な!わ、わたしはお母様じゃないです!私の方が大きいんだからそれくらいわかるでしょ!」


「「「おかあさま????」」」


 そう言えば目の前にいる少女はツインテールではなくポニーテールだ。それに学園長も自分に娘がいると言っていた。


「わたしはユミエ、ユミエ=デンフォートよ!お母様より身長は大きいわ!」


 見たところあんまり変わらない気がした。むしろこっちの方が小さいような気もした。


「ああ、ユミエ、君が学園長の娘というのは分かったけど何であんなスピードで迫って来たんだ?風魔法なんか使って」


 身長のことはどうでもよかったので改めて聞いてみた。


「あ、そ、そうだったわね!べ、別に感謝はしてないけど… その、あ、ありがとぅ... えっと、別にあなた達に言う必要はないけど教えてあげる。ちょっと魔法の付加(エンチャント)の練習をしてたら失敗しちゃって... 」


 付加(エンチャント)とは魔法を自分に対してかけることである。俺達もそれは使えた。というか使えるようになった。馬車の中でキーンから教わっていたからだ。


「なるほどな。それよりも魔法の付加の練習なんてしてるのか。そんな歳で大したものだな!」


 マイクが調子よくそう言うと俺は学園長が言っていたことを思い出した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「あなた達と同い歳の娘もいるのですよ?」

「...同い歳の娘もいるのですよ?」

「...同い歳」

「同い歳」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 確認のために何回も同じことを思い出したが間違いはなかった。

(あ。マイク大丈夫かな...)


 やはり期待は裏切らなかった。


「わ、た、し、は! あ、し、た、か、ら! ちゅ、う、が、く、せ、い、よ!!!! 『汝の願いを聞き届ける精霊よ、汝に嵐の如く吹き荒れる力を貸したまえ! 付加(エンチャント)!』」


 詠唱して風の上級魔法を纏ったユミエの右手がマイクのみぞおちに入った。


((マイク、ご愁傷さま。))

 チークも俺と同じことを思っていたようだ。

 マイクは白目を向いて気絶していた。俺から見てもとてつもない威力だった。マイクがこうなるのは当たり前だと思う程だった。


「やった!成功した!」


 ユミエはマイクの様子を気にせずにとても喜んでいた。


「ユミエ、君も今年から中学生らしいね。学園長から聞いたよ。明日の試験頑張れよ。」


「えらく上から目線ね。まぁいいわ!私は今気分がいいの!許してあげるわ!あなた達も今年の入学生っぽいわね。あのザコみたくならないように頑張りなさい!まぁ模擬戦で私に当たったらああなるのは必然ね!」


 そう言ってユミエはマイクを指さして笑っていた。


「それじゃあ、俺達はそろそろ寮に行くよ。ユミエ、明日は当たったらよろしくな。」

「よろしくね、ユミエちゃん!」


 俺はマイクを担ぎ、チークは女性の知り合いが出来て嬉しそうにユミエにそう言った。


「あ、もう行っちゃうの?じゃあ、私も寮に戻ろうかな…」

 目をうるうるとさせて俺達を見てくる。


「ユミエちゃん!私と友達になりましょ!私が一緒に寮に行くから心配しないで!いっぱいおしゃべりしましょ!」


 チークがユミエの小動物のような愛おしさ負けて抱きついてしまっていた。


「べ、別におしゃべりしたいわけじゃないけど... その... 友達になってあげてもいい、わよ?」


 ユミエはツンデレだ。典型的な子供らしさが感じられた。


「じゃあ、ロイツ。私達、もう行くね。また後でキーンさんに言われた通り学園長室まで行くんだよ!忘れちゃダメだからね!」


 日が暮れて既に暗くなっていた。俺はチークに言われた通り寮の自部屋の整理が終わったら学園長室に行くようにキーンに指示されていた。


「ああ、わかってるよ。チークまた明日ね。ユミエも。」


「うん!それじゃあね!」

「ロイツ!バイバイ!」


 そう言って彼女達は楽しげに話しながら女子寮に向かった。

 俺も気絶しているマイクを担いで寮に向かった。


 寮は1人1つ大きめの部屋が用意されている。俺とマイクの部屋は隣だった。

 寮に着いた俺は荷物を置き、マイクを自分の部屋のベッドに寝かせて学園長室に向かった。


 ーーー学園長室ーーー


『コンコン』


「失礼します。」

 俺はノックをして部屋に入った。そこにはキーンと学園長がいた。


「意外と早かったなロイツ、唐突だがこれが報酬金だ。受け取れ。」


 そうして俺は大きな皮袋を受け取った。報酬金というのは魔王(ダークネス)を消滅させたことによって与えられる褒美だ。報酬金目当てに魔王に挑むものもいるがその大半は返り討ちにされるか逃げる間もなく殺されてしまう。そのためあまり挑む者はいないのだ。

 そして皮袋の中には金貨が2000枚入っていた。通りで力がある俺でも少し重いと感じるわけだ。

 この世界での通貨はこうだ


 金貨・・・日本円にして10000円。銀貨100枚で金貨1枚


 銀貨・・・日本円にして100円。銅貨100枚で銀貨1枚


 銅貨・・・日本円にして1円。これ以下の通貨はない。


 つまり報酬で2000万円も貰ってしまったのである。大変な大金だがそれほどの功績があったのだ。


「それにしてもその歳で魔王(ダークネス)を倒すなんてすごいですね。明日の模擬戦では力は抜いてくださいよ?」


 大きなイスに座る小さな少女がそう言った。もちろんそのつもりであった。


「ロイツ、お前はおそらくここで3年間生活した後はVDOに入ることになるだろう。今のままでも充分通用するがお前には戦闘経験が足りん。ここで補ってくるんだ。」


「はい。わかりました。」


 そうして俺は学園長室から出て転移で部屋に戻りマイクを起こして部屋に戻し、興奮で晩御飯を食べるのも忘れて明日に備えた。



 ーーー翌日


 俺はとマイクは寮にある食堂で朝食をとり早速試験会場に向かった。



「次の方どうぞー。」


 MP測定。水晶玉に手を乗せると自分のMPの値が浮き出るようになっている。俺はその水晶玉に手を乗せた。


「.....あ、ごめんね。これ壊れちゃってるみたいだから取り替えるね。」


 そう言って教員である男は立ち上がった。が、しかし、そこに学園長が現れた。


「それはこの者のMP総量です。間違いないと思います。私もこれ程とは思いませんでした。MP総量あってますよね?ロイツ君?」


『ロイツ』という名前で反応した教員の男が驚いた表情でこちらを見る。


「あ、あなたが魔王(ダークネス)を消滅させた、あの...?」


 俺の名前は既に魔王を倒した少年として国中に知れ渡っていた。あまり目立つことはあまりしたくなかったが既にキーンによって報告が成されていたことによりそれは叶わなかった。


「はい、私がロイツ=シングラーデです。先生、どうかよろしくお願いしますね。後、この表示は間違いありませんよ。」


 そして再び水晶玉を見た教師はこう呟いた。

「こ、こんなの桁違いじゃないか...」


 特級魔法が使える熟練魔道士でさえMPは5000。

 そしてロイツのMPを映した水晶玉には58000という数字が出ていた。


 第一闘技場は広く、驚いているのは周りで測定していた者だけだったが表情が尋常ではなかった。それに、ロイツがクラス決めの測定に参加している噂は一瞬に広まって行った。


 測定を終えたロイツは周りの様子を気にしてすぐにその場を立ち去り魔法の適正を測りに行くのであった。



はい!やっと主人公が中学で最強っぷりを発揮していきます!

〜お知らせ〜

毎日楽しみにしていただいている皆様には申し訳ないのですがこれからは2日に1回を目安に投稿する予定です。これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。次回の更新日は5/12日です。


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