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東方奔走録  作者: むーあ
紅魔郷
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華人小娘

 

京都 某所 研究室




赤い髪を後部で三つ編みにした女性、否、少女は、ビルにある研究室の隅で、パソコンのワードを使い、資料をまとめ上げていた。

佳境に入っているのか、そのタイピングスピードにも拍車がかかり、すさまじい集中をしていることが窺える。しかし・・・


「ご主人、もうそのくらいにして帰りませんか?」


声を掛けたのはセーラー服のような青い襟のついた服を身に纏った赤髪の少女と同じ年齢ほどの少女であり、金髪をツインテールにしてまとめ上げている。

時計を見れば午前六時、今はもう日が昇る早朝の時刻であり、赤髪の少女は昨日の晩から、もうかれこれ何時間も寝る間を削り、パソコンに向かっているのだ。

職場での寝泊りがあることはざらであり、金髪の少女も今日は研究室のソファーで眠っていたが、パソコンの明かりと時折唸るような自らの主人の声に、目が覚めた。


声をかけても集中しているためか、少女の声に気づいている様子ではない。しかし流石にこれ以上は体調を崩しかねない・・・そうおもい再び声を掛けようとしたとき・・・


「ふう・・・やったー!終わったわ」


「お、お疲れ様だぜ。」


声かけなくてよかった・・・。しみじみと少女は思った。仕事が終わりかけの時に声を掛ければ間違いなく自分の主人は不機嫌になるからだ


「ありがとちゆり。でも仕事場では教授って呼ばなきゃだめよ」


「聞こえてたんなら返事してくださいよ。」


「何よ生意気に!えい!」


「いたっ!横暴っ!!これ仕事場だとパワハラってやつですからね!!!」


そこそこの強さで頭をこずかれた少女、北白河(きたしらかわ)ちゆりは涙目になりながら、自らの上司であり、主人である少女に毒を吐く。


「あ、みてみて、日が昇ってるわ!」


「無視!?・・・いやいいですけどね?・・・あ、ほんとだ。きれいですね。」


二人の少女は部屋の窓に視線を移す。すると太陽の淡く赤い光が街並みを照らしていた。


ここは京都のビルの一角であり、歴史ある建物の文化財の景観を守る条例により、建物はそれほど高くない、しかし、それでも研究室は最上階に位置し、東側の窓がついているため、このような景色が見えるのだ。


「素敵ね・・・・・・今頃あそこも、こんなふうになっているのかしら。」


「いや、多分全然違うと思いますよ!?・・・というか、教授も悪い人ですよね。」


「あらなんで?わたしはむしろ手助けしたじゃない。」


「あんたがあんなこと言うからあの人たち真に受けちゃったでしょ絶対!!」


「そうね・・・でも、それでいいとおもうわよ?」


「は・・・?」


「あの二人、靈夢と魔理沙は絶対行くでしょうね。そして、必ず・・・あの吸血鬼の少女を救う。」


「じゃあ普通に協力を仰ぐよう言ったらよかったんじゃ・・・。」


「ま、幻想郷はすべて受け入れるわよ。私だって受け入れてくれたんだから。それに・・・」


先ほどから窓を見ながら話していた赤髪の少女だが、静かにちゆりに振り返り、不敵に笑いかけ、言葉を続ける。


「紅い霧が世界を覆うなんて・・・とても素敵でしょう?」


「・・・やっぱり悪いじゃないですか」

「そんなことないわよ。えいっ」

「いたあっ!またなぐったぜ!」

「もう帰りましょ、あーまたルーマニア行きたいわねー」

「絶対行かねー」

「あ、そういうこと言うの。じゃあ元の世界帰れるようになっても船に乗せてあげなーい。」

「それだけはやめてくださいご主人様!!」

「あははっ冗談よ・・・でもその前に」



  あの素敵な魔法使いに・・・もう一回ぐらい会いたいわ






「ふあ~あ・・・ね、ねむたい」


 幻想郷の中心部、霧の湖の東部に、まるでヨーロッパの風景画から切り取ったかのような見事な洋館が存在していた。

外壁や屋根は総て紅く染まっており、むせかえる程の紅い霧が立ち込める今や、そこはまるで悪鬼住まう悪魔の館のようである。

その館・・・紅魔館の正門近くには常に門番である少女の姿がある。


 赤いロングヘアに正面に「龍」の一字を刻んだ緑のベレー帽をかぶり、帽子と同色の緑の華人服を着たその少女の名はホン美鈴メイリン

遥か昔からこの紅魔館に仕える妖怪であり、気の抜けた態度を取ることは多いが、その一糸乱れぬ立ち居振る舞いは、まさしく超一流の武人であることを感じさせる。

美鈴はまどろみを堪えながら、これから異変解決に来るであろう人物を待っていた。


「い、いや、皆さん頑張ってくれてるんです。私がそうやすやすと突破を許すわけにはいきません!!」


独り言が多くなっているのは自らの眠気に抗っている証拠であり、逆に言うと、この大事に眠気を起こすような、おおらかな、悪く言えばちゃらんぽらんな性格をした人物なのだ。


「でもな~咲夜さんもパチュリー様もいるし、妖精メイドたちも思いのほか優秀だしな~

・・・・・・ちょっとぐらい寝てもいいんじゃないかな。」


 そんなことを口走りながら、不意にこちらに近づいてきた気配を察知し、顔を上げる。


来たか


 その顔つきは先ほどとはまるで比べ物にならないほどに精悍になり、身に纏う妖気の質も、普段のものから大きく、強く、研ぎ澄されたものに変わる。

美鈴は飛んでくる敵意に意識を集中して、これからの戦闘に備えた。


「来るなら来・・・「彗星すいせい!!!『ブゥレイジングスタァーーー!!!!』」


  ズババババッッッッッという轟音とともに、箒に跨った一人の魔法使いの出で立ちをした少女が、否、その少女を先頭に、三人の少女が箒に跨り、異様なまでのスピードで突っ込んできたのだ。


「えっ!?・・・なに、戦闘機!??キャアアアッッッ!!!」


「わりいな!直接ここの当主に話があるんだ!!」


風を受け、箒に跨る魔法使い・・・魔理沙は美鈴の横を素通りし、格子状の門などまるで関係ないという風に、さらにスピードを上げる


「魔理沙前!前ー!!!」

「ぎゃー!!!」


「捕まってろ!突っ込むぜ!!」


バアアァァァァン


魔理沙が言うが早いか、スピードの増した箒に魔力のプロテクトを掛けていた箒は強く輝き、実体化した魔力は、小さな星があふれ出すように変わり、そして散らばっていく。


そのあまりの出来事に、突破を許してしまった美鈴もポカンと口を開け、ただ立ち尽くしてしまった。


「・・・・・・彗星?いや・・・」


一瞬の出来事ではあったが、入ってくる三人の姿は見えた。一人はおそらく魔法使い、後ろにいたのは、おそらく巫女だろう。そしてもう一人の見覚えのある妖気は・・・


美鈴は武術の達人であり、人や妖怪に流れる気の性質をみれば、どれほどの強さやどのような種族かあらかた判別することができる。本人はこれを「気を使う程度の能力」と呼んでいる。そして、自らの能力でついにくだんの巫女と<思わぬ来客>が同時に来たことを知り、不敵に笑う



来たか・・・チルノ!



「ちょッッッ魔理沙止まりなさい!!」

「あばばばば」

「あははは!さあもう一回だ。つかまってろよ!!」

「えっなに!!?」

「しぬー!」


 なにか不穏なことを言い出した魔理沙は、二人を無視するかの如く、更なる魔術のプロテクトを箒に掛け、紅魔館の中庭から館内に入れるであろう巨大な扉に向かい、加速した。


ドガアアアアアァァァァアンンン


突撃した衝撃で大扉は吹き飛び、中に入るとそこは巨大なホールであった。

箒にかけていた魔法ブレイジングスターを解いたまりさは箒から降りると間髪入れず館内に宣言する


「おい吸血鬼!あたしは霧雨魔理沙!!

赤い霧を止めに来た魔法使いだ!そしてここに監禁している妖精たちを返してもらうぜ!!」



「「魔理沙~」」


「ん?」


今後二度と魔理沙の箒には乗るまい・・・そう誓う巫女と氷精であった。





美鈴・・・待っててくれ、君の出番はまだある(´・ω・`)

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