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東方奔走録  作者: むーあ
夢時空
30/32

夢幻伝説 前編

夢幻伝説は、前編 中編 後編でお送りしたいと思います。多分。

 

更新間隔はそんなに空かないと思いますが、遅れたらごめんなさい・・・・・・




 「危ないから離れてなさい!」


 霊夢はだれに向けるわけでもなくそう告げると、その場にいる巫女と学者以外の総ての者たちが飛び立った。

 始まろうとしているのが分かる。

 かつてない激闘が・・・・・・。 

 しかし・・・・・・


 「づう・・・・・・」

 「フラン・・・・・・私たちは流石に中に戻ろう」


 太陽の熱に当てられて、体調を崩しかねないと判断したレミリアは咲夜に目線を向けようとしたその時・・・・・・

   

「えい!!」

  

 !!?


夢美が外套マントをはためかせた後、一瞬にして透明な粉がフランドールとレミリアの頭上に降り注ぐ。それは何か、神秘的な天からの祝福のようであり、瞬間的に体調の悪化が抑えられた二人は、日中にも関わらず、まるで真夜中にいるような錯覚を起こした。


「・・・・・・なにしたのよ」

 霊夢が呆れたように質問する。その声に怒気は無く、また何か得体の知れぬことをしたのか、というある種信頼めいた口調とも取れる。



UVガードひやけどめよ。これで大丈夫でしょう?レミリア、フランちゃん」


「え?え?・・・ええ!?」


「あ、ああ・・・助かった。流石だな・・・・・・相談役に恥じぬ動きだ」


「・・・・・・」

レミリアが横をチラリと見ると、ズーンと効果音が鳴り響きそうなぐらい落ち込んでいる咲夜の姿があった。


「いや!・・・咲夜が悪いわけじゃないから!!おい夢美、行動が早すぎだ!!」


「ええ!それは理不尽過ぎでしょ!?」



 『命名決闘法スペルカードルール!!』

 

 突如、始まりそうになる茶番コントを遮るように、凛とした鈴が如き声が鳴り響いた。

 夢美はその声の主に顔を向け、語り掛ける。

 

 「あら!奇麗な妖精さん!審判なんてしてくれるの!?素敵ね!!」


 「違うよ?そうでしょ霊夢」

 

 「ああ、違う」


 その掛け声の主たる蒼き氷精――チルノの短い返しに、博麗の巫女は即座に察して更に短い言葉で返す。


――そう、これはスポーツではない。制約こそあれど、決闘なのだ。

 決闘に審判ジャッジなどいる訳が無い。なぜなら、その勝敗を決めるのは、認めるのは、他でも無いお互いだからだ。

 チルノは、決闘の開始を告げようとした意外の意図など、全く無い。

 

 「……なるほどね」


 次ぐように、赤い学者が得心の言葉を漏らす。

 そして、その意図を察したのは、巫女と学者だけではない。この場にいる全員が、今までの決闘たたかいの経験から、瞬時に察していたのだ。幻想郷で互いを認め合った、その経験から。

 

 そしてその掛け声の主は、更なる制約ルールを二人に求めようと、この決闘の主役たる、巫女と学者に問いかける。


 『通常弾は!?』

 

 「「有りよ!!」」


 通常弾幕とは、術名符スペルカード以外のシンプルな弾幕の事であり、宣言をせずとも撃つことが出来る。そして、無論なのだが、これに当てることで、勝利することも可能だ。

 このルールを追加するか否かで、決闘の難易度は大きく変わり、しかし、この二人は(夢美こそ命名決闘法スペルカードルールは初めてだが)跳ね上がる難易度をものともせぬ程の完全な強者なのである。


 博麗霊夢と岡崎夢美、その互いの距離――約七十メートル。

 短くは、無い。

 しかし、遠くも又、決して無い。

 その気になれば、瞬時に距離を詰めることは、互いにとって可能であり、そして、そのことは互いに厭というほど分かっている。

 それ故に、眼光で殺し合うかの如く睨み合う。

 互いの行方を、0コンマ1秒とて見逃しはしない、と。



『勝負……開始!!』

 


 鈴音のごとき最後の氷精の声色が、心地よい決闘の合図ゴングとなって鳴り響く。


――その刹那……夢美の前から霊夢の姿が消えた。


「!?」


下か!!  


 しかし、瞬時に下に目線を移すと、テラスの土瀝青アスファルトの上を、こちらへと全速力で駆ける霊夢の姿があった。夢美の観察眼を嘲笑うかの如きその体術うごきに、思わず感激の念を抱くが、一瞬のうちに夢美も行動を開始する。

 

「甘いわ!」

 

 夢美は外套マントを手でつかみ、真下に振りかざす。

 ドドドドドドドドッッッ・・・・・・っと、外套マントの内側から、幾つもの光輝く球状の弾幕が霊夢に向けられて放たれた。

 それは通常弾幕。――荷電粒子砲と呼ばれるものである。

 

「!!?あり得ない!!!」


 フランドールは驚愕、かつ感嘆の念を込めてそう叫んだ。

 

 そう、夢美の弾幕わざ有り得ない・・・・・のだ。

 荷電粒子砲と呼ばれるものは、亜光速の粒子を直進させるものであり、通常、電子等の粒子を集め、発射する装置が要る。しかし、原理的には平成の現代科学でも成すことは出来る。

 そして、それはあくまで『原理的には』、の域を出ないものだ。


 何故なら、その装置は現代においてすら、用意する装置の直径が1000メートルは要する物であり、粒子を帯電させることの難関さ、直進させることの難関さ、莫大な電力調達の困難さ、様々な自然的要因の受けやすさ等により、実現は限りなく不可能だからだ。

 その不可能を極める技術を、魔力も何も感じさせぬ一個人が、直線レーザーとしてではなく、見たことも聞いたこともない球体として撃ち出している目の前の事実に……フランドールは、ただただ度肝を抜かれていた。


――本当にいたんだ、『前人未到の研究者』、岡崎夢美ユメミ・オカザキ!!   

  

「おおおおおおおお!!!!」


「あははは!それはそうよね靈夢!!」


 しかし霊夢は躱す。

 ことごとく躱す。 

 亜光速の弾幕を。

 そのどの弾幕もが寸分たがわぬ精度で上から霊夢を付け狙うのだが、霊夢のステップは、その弾幕を嘲笑うかのように躱していく。

 その動きは横這う蛇の様であり、しかし、確実に夢美との距離を詰めていた。

 

 霊夢と夢美の距離、現在――約三十メートル。


 瞬間、霊夢の体が空を駆る。


 !!――飛んだ!!!!


 夢美は一瞬狼狽した。否、飛べることは分かっていた。決闘が始まる先ほどまで、霊夢はそらに居たのだから、それを否定する材料はない。

 しかし、一年半前の決闘時、夢美は空を飛ぶ霊夢ではなく、玄爺という亀の妖怪の背に乗り、行動をしている霊夢の姿が目に焼き付いていた。その為、いかにそれが可能な挙動と云えど、夢美にとってそれは対峙する姿としては初めて見るものであり、脳がどれほど理解していようと、身体が固まってしまうものなのだ。


――いけないわね・・・・・・まだ脳髄あたまで考えてるわ・・・・・・


夢美は短く思考した後、目を閉じた。


「はあああっ!!」


 飛ぶとほぼ同時、霊夢は懐からふだを取り出し、数枚夢美になげうつ。

 そして擲つ符を追うように、紛れるように、霊夢は夢美に向かい吶喊した。

 手に持つは梵字の刻まれし、鬼の意を宿す赤い神符カード

  

――即行で決める!!


 霊夢がスペルを放とうとした時・・・・・


 ぞわあああああああああああああっっっと強烈な寒さが全身を走り抜けた。

 勘は働く。

 しかし・・・・・・身体が動かない。

 

 擲った符が容易く夢美の外套で払いのけられた。

 

 そして・・・・・・夢美は目をいつの間にか開いていた。

 その赤い瞳は、夕昏のような優しさを湛えたようにも、また、地獄の業火にも似た剣呑さを秘めているようにも見える。


 「ああ・・・・・・」


 自然に声が漏れていた。自分が何を感じているのか・・・分からなかった。

 否、その感情は、今までにも感じたことはあるが、此処までの強烈なものは、例え魔界の神を相手にした時でも抱かなかったのだ。



 恐怖心。


 それは、何にたとえようもないほどのものだった。

眼球に直接短刀を突き刺される鮮烈なものとも、矍鑠と在り続ける混沌に、永劫に飲まれるような果てしない物とも取れるそれに、圧し潰されそうになる。


――動け!動け!!動け!!!


 霊夢は自分に言い聞かせる。

 気持ちの悪い汗が背中せなを始め、身体中の汗腺からとめどなく溢れだす。

 



「霊夢!!どうしたの!??」


「分かんない!なんか固まっちゃった!!」



 咲夜、フランを始めとし、多くの者が疑問を呈する。

 夢美が放つ凄みは、対峙しているものにしか分からないのか。

 否、断じて否だ。

 この恐怖は、霊夢にしか分からない。他でも無い、博麗の巫女としての勘が全力で告げているのだ。

 ――ただ逃げろ、と。


「来ないの?」



――動け・・・動いてくれ!!・・・頼む!!!



「じゃあ・・・・・・こっちから行くわね」




――――Strawberryストロベリー Crisisクライシス

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