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東方奔走録  作者: むーあ
紅魔郷
3/32

隙間妖怪



幻想郷には、迷い家と呼ばれる家屋が存在する。


幻想郷の管理者である八雲紫が住む場所であるが、誰もそれが何処に在るのか

明確に知るものは存在しない。あるものは湖の西の畔、魔法の森の中だと言い

あるものは、更に西にある迷いの竹林の中だと言うものもあれば、全く逆の方位の

妖怪の山の中にあると言うものもある。

周到な情報操作か強力な結界か、あるいはその両方なのか、どちらにせよ、並大抵の力を

持つものでないことは確かだ。


そんな迷い家の主、八雲紫の朝は遅い、午後に目が覚めるのが常であり、重要な幻想郷の結界の管理は、自らの右腕である九尾の式神、八雲藍らんに一任しているのが

現状である。

しかし、今日は様子が違った。

まだ日が登り切っていない早朝、紫は強烈な違和感を感じ、

飛び起きた。


「っっ!!」


紫の能力は「境界を操る程度の能力」であり、その能力の汎用性は非常に高い。

この能力の応用で、紫は幻想郷中に張ったセンサーの役割を果たす結界と自らの

距離(境界)をゼロにすることで異変を敏感に感じとる事ができる。

そのセンサーに、尋常でないほどの魔力を感じ、紫は飛び起きたのだ。


「ちょっとこれは、とんでもないわね・・・」


場所は、霧の湖の畔であることは間違いない。

濃密な、それこそ拡散すれば幻想郷中に散らばるであろう魔力

これほどの魔力を1日、ないしは一晩で練り上げたと言うのか、

一体何の目的で・・・最早疑う余地もない異変の予感を感じ、

紫は自らの右腕を呼ぼうとしたその時


「紫様、只今参りました。霧の湖の畔、何者かの魔力が集中しております。

この違和感は異変への前触れかと、排除しますか?」


八雲藍は九尾の妖狐、大妖であり尋常なき美しさを持つ妖怪である

紫より更に切れ長の瞳は見る者の欲を掻き毟り、蜂蜜のような金色の髪は見る者の

心を震わせる

けして妖術の類いではなく生まれながらにして持つ容姿であり、

その姿は傾国の美女としての歴史を垣間見せる


「藍、報告ありがとう。でも早すぎ。もう少し様子をみましょ」


藍の報告と、自らの予想が合致し、異変を間違いないものとしたが、

同時に紫はもう一つ確信していた


「これは、異変であって、クーデターではないわ。

解るかしら・・・この魔力に感じる敵意の皆無さが。」


「ですが、万一もございます」


「ええ、まあ言いたいことは解らないでもないわ、私の判断は

経験による部分が大きい。納得も出来ないかも知れない。

でも、何時になるか解らないけれど、いずれ藍も解る様になるわ。

というかその頃には私なんて軽く越えてるでしょうね」

「勿体ないお言葉です」


「い、いや、割とホントに・・・まあそれはともかく行きましょうか」

「この魔力の発生元ですね。では支度を」

「ああ、良いわよ私行くから」「え?」


「・・・・・・紫様?」


自らの主が目の前から忽然と姿を消した。

比喩ではない、消えたのだ

隙間と呼ばれる紫の代名詞、境界操作の応用であり空間に切れ目を作り移動する

術ともまた違う術に、藍はただただ口を半開きにし、呆けるばかりだった。



同時刻、霧の湖


「ふふっ・・・藍びっくりしたかしら」


現在修行中の術は、認識、距離、次元の境界を操る1日にまだ一度程しか成功しない奥義である


「紫奥義とでも名付けようかしらちょっと安直?ねぇどう思うルーミア」

「いいんじゃない?自分が気に入ればー」


振り返って名前を呼ぶと、小さな少女がそこにいた、ルーミアと呼ばれたこの少女は

妖怪であり、ショートカットの髪に赤いリボンを頭につけている。

そして頭を小さくかしげながらこう続けた。


「そんな事よりあんな派手な館あそこにあったかー?」


此処は湖の東側であり本来その畔にはなにもないはずなのだが、

そこに、見事な紅い洋館が存在していた。

魔力の発生元であることは確定的であり、そこから立ち込めている尋常ない程の妖力も

実際にこの場所に来ることで明らかになる。


「やはりとてつもない魔力ね。ちょっとお邪魔してくるわ」

「そうかー?リボン付けてたらわかんないなー」

「まぁそうかしらね、あ、一つルーミアにお願いがあるのだけれど・・・」

「なんだ?」

「もうちょっとしたらここに巫女が現れるから、相手してあげてほしいのよ」

「えー相手にならないんじゃないか?あたしが。リボンなかったらあれだけど」

「まあそう言わないで、貴方も運動しなきゃあれでしょ?」

「んー、分かった。どうせ異変解決にくるんだよね?

準備運動ぐらいなら付き合ってあげるよー」

「感謝しますわ。さてここまで来ればあとは・・・」


挨拶に行きましょうか


会話を終えると同時に紫はまた、能力を発動させる。

これは使いなれた術であり、また、自らの代名詞と言える術、境界を操り、空間に切れ目を生じさせ、遠くの位置とを繋ぎ、移動する。紫が隙間妖怪と云われる所以であり、それはまさに、見る者にとっては異界の隙間から出てくる様な異様な光景だ。

大妖であると同時に高名な妖術士である紫は、離れた位置から妖気を感知することもできる。館のおよそ上層であろう位置に魔力を練り上げている者の気配を読み取り同時に多くの妖気がそこに集まっていることも分かっていた。


どんなやつが移り住んで来たのか、


「見物ね!!」


《隙間》を使い移動すると、そこは高さ数十メートルはあろうかというほどの天井に

何千、否、何万もの本が棚に敷き詰められた大図書館であった。まさに圧巻。

これほどの図書館は世界でも類を見ないだろうと今までの世界を飛び回って来た思い出を

過らせながら、前にいるものたちに視線を移す


「何者だ?ひょっとしてお前が博麗の巫女か。」

「・・・・・・え?」

眼前で仁王立ちしている銀髪の美少女、吸血鬼の発言に面食らい、

紫は思わず間抜けな声をあげてしまう。


「お嬢様、お聞きした容姿とは随分とかけ離れています。恐らくは別人かと」

「それもそうか」


割って口を開いたのは、吸血鬼と同じ銀髪をしたメイド服を着た美少女であり、

一挙一動に隙がない。超一流の従者であることは一目瞭然である。

しかし、全く妖気を感じない所に違和感を感じ、紫は口を開く。


「・・・人間?」

「十六夜咲夜と申します。以後、お見知りおきを。」

「うちのメイド長だ。そして私が紅魔館当主、レミリア・スカーレット。宜しく頼む」

「?・・・私は幻想郷の管理、統括をしております、八雲紫です・・・早速ですがこちらにお邪魔したのは「おお!!この地の管理者か、なら話は早い。博麗の巫女を呼んでくれないか?私はこれから異変を起こすのだ」

「!!・・・何を言っているのですか!」


訳がわからない・・・。

博麗の巫女の存在を知っていることもそうだが、異変と云われる怪異は妖怪が自らの利の為に起こすものであり、ましてやそれを自らばらしてしまおうなどと考えるものではない。


「何って・・・ああ、どんな異変か言ってなかったな、言った方がいいか?あ、いや、待て、見てもらった方が早い。つまり」


こういう異変だ


いい終わると同時に世界が赤く染まって行く


先ほどからレミリアの後方で図書館の学習机に突っ伏しながら椅子に座って魔力を練り上げている魔法使いがいた。彼女の魔法なのだろう。紅い霧が出始める直前、彼女を中心に紅い巨大な魔方陣が地面に広がったのだ。


「紅い霧が世界を覆う・・・紅霧異変というのはどうだ?」

「目的はいったいなんなのですか?」

「うーん紅い霧に目的・・・?こっちのが綺麗じゃないか?」

「悪趣味ですわね」

「うー!じゃあ吸血鬼が過ごしやすくするためだ!ほら、太陽隠れるだろ!」


・・・目的はそもそも無い?


今まで感じていた奇妙な違和感と安心感はこれかと、紫は考えていた。

異変が起こる予感こそあれど、全くの敵意の無さと妖怪らしからぬ相手への配慮

普通はいきなり自分の家に侵入されれば、人妖関わらず、怒り散らかしても全く

不自然はない、元に紫はそうされるだろうと思い、戦闘、ないしは逃亡の準備は

抜かりなかったのだ。しかしあろうことかレミリアはメイドに紹介を許し、

当主である自らも先に名乗った。宜しく頼むという発言も不可解である


ハロウィーンか何かと勘違いしてるのかしら


(まあ、あの子にとって成人して初の異変だからこれぐらい優しい相手でも良いのかも知れないわね。それに・・・)


紫は目を凝らし相手の妖気を観察していく、すると、レミリアはもちろんだがその回りにいるものたちも恐るべき実力を隠していることがわかる。

紛れもない強者なのだ


「わかりました、それでは巫女に解決をするよう促しておきます。」

「助かる!あ、出来れば今日中にな!」

「はいはい、それでは皆様、ご健闘お祈りしておりますわ」


1話 巫女と魔法使い 真相

「うー・・・ゴホン、まあ・・・感謝はしているぞ。これで博麗の巫女も今日中にはこちらに向かって来るだろうからな。」

「来ると思う?いや、来るでしょうけど、最低でも場所の特定に数日は要するでしょう」

「来るさ、私の能力、最近調子いいからな。」

(実は八雲紫に頼んでおいたのだ!)

「あ、そう」

(突っ伏しては居たけど聞いてたわよバカ)

「反応うすっっ!!」

(うー!ばれたか!?)


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