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東方奔走録  作者: むーあ
夢時空
29/32

可能性空間移動船

すみません、決闘の前にまずはこっちを・・・・・・。


副題をつけるなら、『岡崎夢美の手記』でしょうかね。

 

 岡崎夢美という少女が居る。

 

 この少女は、秀才、天才、鬼才・・・・・・あらゆる賞賛の名詞に当てはまらぬ様な、逸脱性をうちに秘めているのだ。


 その少女を言い表すなら、たった一言のシンプルかつ凡庸な名詞に尽きる。


 変人キチガイ、だろう。


 彼女は、もともとは幻想郷の住人ではない。しかし、だからと言って、外界の住人というわけでも無い。

 元をただせば、霊夢が彼女と会ったのは1年半前に遡る。


 彼女は、助手である北白河ちゆりと共に異世界から船を使い、幻想郷に自力で渡ってきた異世界人であり、彼女は、この地で異変を起こした。

 突如現れたその遺跡のような船に来れば、一人だけ願い事を何でも一つ叶えるというチラシがバラまかれ、そのチラシを手にした何名かの実力者が決闘を演じた、というものだ。

 霊夢と魔理沙が遺跡異変と呼んでいるこの下らない異変は、目的があった。それは不思議な力を調べ、情報データを得る事。


 すべては異世界に戻り、自身ののめんでいる異様な学説を・・・・・・四つの統一原理にすら当てはまらぬ力が、『魔法』という力がこの世に存在すると云う、『非統一魔法世界論』という荒唐無稽な学説を立証する為だけに、わざわざこのようなしょうもない異変イベントを起こしたのだ。


 結果としては、データを得ることは叶った。

 あの時、多くの者達との乱立する決闘を制し、可能性空間移動船に到達できたものは二人、博麗霊夢と霧雨魔理沙の二人だ。


 定員が元々一名である船に、二人で来た事で、若干の一悶着けっとうはあったものの、意気投合し、しばらくの間幻想郷に居付いたのだ。




しかし・・・・・・問題はその後である。





――帰れないっ・・・・・・!!?




 十分なデータが取れて元の世界で論文を推敲しようと思い、愛用の船を動かしても、私が元に居た世界に、その時代にすらどうあがいても帰れなかった。


 座標は合っている。

 時代も間違えてない。

 燃料も十分すぎる程に残っている。

 

 それはまるで見えない力に、天という見えぬ存在に『お前は帰ることを許されていない』とでも言われているように、私はその時代に阻まれていた。

 私は狼狽えた・・・・・・こればかりは素敵で済む事柄ではなかった。

 考えられる要因は総て考え、船の点検チェックも抜かりは無い。

 

 慌てている場合ではない。まずはこれからの行動を考えなければ成らないだろう。


 これからの行動としては私の助手、北白川ちゆりと話し合い、二つの案が出ていた。

  


1. 様々な『世界』を転々とし、元の世界に帰る策を練る事。

 

 私たちが到着した幻想郷は、時代が数世紀は前に遡っている世界であり、この地を離れ、出来るだけ時代を元の世界に近づけながら、帰る方法を模索するといるものだった。

 しかし、この案に私は反対した。燃料がもたない可能性の考慮である。

 

 可能性空間移動船は、ガソリンのような化石燃料ではない。 

 核融合エンジンと言われる代物なのだ。これが開発されたのは、この時代から二十年は立っていないが、この時代からの移動には、それなりの燃料の消費を要する。いかにあと何回かの移動を行えるほどの残量が残っていたとしても、燃料が底を尽きては意味は無い。そして、この推進を行うための燃料の取得は、莫大な費用がかかるのだ。それに私に原因が分からぬ以上、どれだけ時代を近づけたとしても、科学的な面でいえば期待はできないだろう。



2. この地に残り、原因を探る。

 

 これは私が挙げた案だ。原因が不明な以上、船が近づけないのは不思議な力オカルトが関わっている可能性が高い。

そして科学が未発達なこの幻想郷という地には数々の不可思議な存在が宿っている。その存在に関わることで、私は見えざる要因に近づくことが叶うのではないかと考えた。


 要因は何なのか・・・自然発生的な怪異か、誰かの意図した行動によるものなのか。

 妖怪か・・・妖精か・・・悪魔か・・・あるいは神か・・・・・・いずれにせよ、このミステリーを解き明かさなければ、私たちは故郷には帰れない。


 しかし、この案にも、欠陥が存在する。


 それは、この地の管理者、八雲やくもゆかりの存在だ。

 私たちはこの地に誰かの許可を取り、移動してきた訳では無かった。詰まる所の侵入者であり、前述した管理者の目を欺いて、私たちには潜り込んだのだ。

 隠密ステルスを労し、情報操作を駆使し、今のところは私たちの存在は彼女には漏れてはいない、だろう。

 だろうというのは、それ程に彼女の扱う力は強大であり、私が所持している科学力の総てを使用し、初めて対抗できるような力だった為だ。

 普段から彼女が張ってある妖術センサーは、時空にまで影響を及ぼし、この地に来てからは一層その力は強くなっていった。


 このまま此処に居れば、私たちの存在が、彼女にもれてしまう可能性も無いでは無い。

 そうなって来ると、彼女との衝突は避けられないだろう。


 私はこの地の概要を、靈夢から訊いて知っている。

 この地は、外界に忘れ去られ、存在を維持できなくなった魑魅魍魎の類が、安全に生きるためのいわば理想郷ユートピアなのだ。

 そんな地に、私のような所謂いわゆる科学の民が居れば、この地の均衡が崩れ、害をす。

 いや、為さずとも、そうは思われるだろう。

 

 この地は私にとっても、理想の地だ。

 この地の代表とも云える、彼女に(出会ったことは未だ無いが)そのように思われるのは、私としても得策では無い。

 

 いや、もっと単純な話だ。

 私は彼女に、嫌われたくは無い。

 

 彼女が此処までの力を使うのは、一重ひとえにこの地を、この地の住民を愛しているからに他ならない。

 この地を外界から守るため、そもそもの話に返ると、そうで無ければこのような地は創らないだろう。

  

 今私が執っているこの手記は、すらすらと書いているように思えるかも知れないが、此処まで考えるのにも計り知れぬ苦悩があったことを、恨みがましく感じるかも知れないが、ここに記しておく。


 

 さて、苦悩があったと書いたが、実のところ、今の現段階では結論は出ている。

 そしてこれから、私、岡崎夢美と北白河ちゆりの現状の報告と、今後の活動についての話に移ろう。


 私は幻想郷を一旦離れ、今は外界の京都府に住んでいる。

 この地は私にとっても特別な地だ。 

 なぜなら、私は異世界にある日本の、京都府の出身だからだ。

 首都であった故郷とは違い、この地の京都は条例で建物の高さが制限され、歴史的な建造物も多く残っている。

 不思議な力オカルトの発見も他の地よりは確率が高いだろう。

 

 この地で私は、論文の研究をしていくことにした。

 まずは、統一原理すらも証明されていないこの科学の世界に、一石を投じるべきだろう。不本意だが、仕方ない。そして無論、情報の操作は怠らない。

 

しかし嬉しいことに、予想以上に京都では様々な情報が入ってくる様だ。


 現地の妖怪の話。

 神道、仏教に基づく神々の話。

 文化カルチャー歴史ルーツ、etc…


 何もかもが新鮮で、輝かしいものばかりだ。

 同じ京都でも、時空が違うだけで何もかもが違う。 


 いや、京都だけではない。私たちはより多くの不可思議と関わるため、外国にも遠征に飛ぶ。


 風の便りで聞いた、ルーマニアのトランシルバニアにあるのろいの森、『hoiaホヤ baciuバチュー』 

 其処は数々の現代科学でも説明がつかないような現象が起きる事で有名な、怪奇の地域だ。

 地元の住人ですら、好んで近づきはしない。


 以前より往きたいとは感じていたが、吸血鬼ツェペシュの赤い伝説に導かれ、私はとうとう足を運び、そして出会った。 

 現実に住まうオカルトに。

 妖怪あやかしに。

 

――本物の、吸血鬼に。


 少女(?)の名はレミリア・スカーレット

 曰く、この地に500年住まう吸血鬼らしい。彼女は紅魔館と呼ばれる城のように荘厳な館で、仲間たちと暮らしていたようだ。此処に同居していた彼女の親友である、魔女の掛けた魔法による防壁で、私の探査装置サーチが壊れた処、逆に見つけることが出来た。

 並みの者なら彼女の翻弄で、近づくことすらも儘ならないだろう。 

 

 しかし、この紅魔館には私のような研究者、メディアに怖いもの見たさ、バウンティーハンターや、妖怪などなど、侵入しようとしてくる者は後を絶たないらしい。


 しかも、この館には苦しんでいるもう一人の吸血鬼が居る。

 吸血鬼の少女(?)、フランドール・スカーレット。

 彼女はレミリア曰く、自分の妹のような存在であり、且つ、自分に血を寄与し、妖怪にしてくれた・・・・・生みの親のような存在でもあるのだという。

 しかし、レミリアに血を与えたことで、そのレミリアが吸血鬼になってしまい、血が共鳴したことで、本来不安定である混合獣キマイラとしての妖気と魔力さいのう、血が鬩ぎ合い、徐々に狂気に冒されていったのだという。


 彼女を解放しようと、レミリアたちは様々な努力をして来たようだ。


 レミリアは彼女の為に商いに身を投じ、一代で地位を築き上げ、紅魔館を設立した。

 霊薬としての伝説を聞き、竜の血を求め『龍』を同朋ともとした。

 魔法使いの総本山、金色の夜明け団ゴールデンドーン勧誘スカウトされ、しかもそれを断り続けたほどの天才魔術師と親友になり、果ては自分を滅そうとした時間ときを操るハンターを従者とした。

 



――この少女達の力に成りたい・・・・・・。

 少なくとも、報われるべきだ。

 最初は、純粋にそう感じたのだ。

 その時は。


 彼女たちに紹介しようと思ったのは、出会ってから、かなり早い段階だった。

 あそこなら、あの幻想郷エルドラドならこの子たちを受け入れてくれる。

 言語の疑似魔法を使うことで、彼女たちも馴染めるだろう。(フランドールは結界に阻まれているため、少し順応に時間を要するかも知れないことを追記しておく)

 しかし、せっかく仲良くなったのだ。

 ここで縁を切りたくはない。


 閃いてしまう・・・・・・。

 彼女たちを使えないだろうか、と。

  

 彼女たちの仲間として、幻想郷と通じる。

 否、私が彼女たちのパイプとなって、外界と、紅魔館とを繋ぐのだ。

 私は彼女たちに外の世界の情報を渡し、尚且つ、幻想郷の情報を呉れるようにそれとなく、説得しようと試みた。

 

 しかし、私の企みは一瞬で天才魔術師、パチュリー・ノーレッジに見破られてしまう。

 

    




 

「ご主人、もうそのくらいにして帰りませんか?」


――ちゆり起きたの!?もうちょっと待って今いいところだから!!





 

  

 彼女はこう言った。 

 『貴女が幻想郷そこの情報を欲しい事は解る。それにここまで支持してくれたのだもの。何を言われようと断りはしないわ。・・・貴女はもう、私たちの大切な同朋なかまよ。赤い学者さん』と。

 赤い学者はコードネームのようなものらしい。

  

 永遠に紅い幼き月

 知識と日陰の少女

 華人小娘

 完全で瀟洒な従者

 悪魔の妹

 そして私が赤い学者だ。

 

 その後、紅魔館の非常勤相談役として、パチュリーに任命された。

 感慨は、計り知れぬ程に深かった。

  

  

 しかし、私に悪戯心がないというと、嘘になってしまう。

  

 パチュリーには後で怒られるかもしれないが、異変を唆しておこう。  


 彼女たちは必ず、フランドールを救う。

 これは、予想ではない。

 確信でもない。

 これは・・・・・・確定事項だ。


 それほどにあの二人、博麗靈夢と霧雨魔理沙は実力を持ち、並みならぬ天運を持つ。

運に・・・天に見放された私とは、持っているもの(・・)が違うのだ。

 それに、あの二人の成長を見たくもある。彼女たちには悪いが、少し遊んでもらおう。




 こうなってくると、私が願うことは只の一つだけだ。

 

━━願わくば、後で皆に殺されませんように・・・と。



                     旧 比較物理学教授

                    現 物理学教授    岡崎夢美


 





「ふう・・・やったー!終わったわ」



 ちゆりに聞こえる様に、私は大声で宣言する。

 さあ・・・・・・これから忙しくなるわよ!





何処の場面か分かりますかね。

 

野暮ですが、『華人小娘』の時の話で、夢美がワードで何打ってたか書きました。

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