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東方奔走録  作者: むーあ
紅魔郷
15/32

動かない大図書館




重々しくも冷たい空気が、大図書館の中を漂っていた。

この場にいるのは三人の少女。


金髪の少女、霧雨魔理沙は質問を返すと、真顔のままパチュリーの表情を伺うように目を細め、動かないでいた。



対して紫髪の少女、パチュリー・ノーレッジは返された質問の意図を考え混むように、相手の感情と疑惑、真意を探る為に、魔理沙を睨め上げている。



・・・・・・そして楽しいお茶会でも始める気でいた小悪魔は、あわあわと睨み合って動かない二人の少女達にキョロキョロと視線をいったりきたりしながら、困って泣きそうな表情で慌てふためいている。



「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・(オロオロ)」


まさしく、一触即発。

下手に相手を刺激するような発言をするなら、決闘ではなく、最悪殺し合いにすら発展しかねない。そんなものを感じさせる沈黙が、広大であろうはずの大図書館を埋め付くし、まるで密室にでも閉じ込められたかのような重圧を感じる状況であった。しかし・・・・・・



「・・・・・・な~んてな!」


「は?」


不意に魔理沙がおどけたような無邪気な笑みを浮かべ、口を開く。


「いや、なんだ、その・・・・・・私も言いたくないことを無理やりに言わせる気なんてないってこと!

・・・決闘ってのは互いの合意がなきゃな」


「・・・・・・そうね」


(パ・・・パチュリー様、凄いにらんでる)


弁解をした魔理沙は先ほどまで解き放っていた魔力を雲でも散らすかのごとく収束させ、何事も起こしていなかったかのような反応を見せた。

しかしパチュリーは目の前の魔法使いが、得体の知らぬ、一種の『能力』を使い魔力を高めたのではないかと推察していた。




さっきのは気のせい?・・・・・・いや、そんな筈ない!確かに私とぶつかり合うようなオドの波動を感じた!

恐らく何か能力をつかってるのね・・・。小悪魔だってすごいおびえてるし・・・・・・というかここに来た時からね・・・?



魔理沙は普段言いけたりしないが、魔力には自分の中で練り上げて生成する内的魔力オドと自然界に宿る外的魔力マナの二種類があり、先ほど感じたのはオドの方だった。


つまり魔理沙は自然界に宿る魔力を集めたわけでもなく、自らの純粋な魔力だけを解き放ったのだ。しかし自然界の魔力を集め集中させて魔法を成すことの方が遥かに難しいのだが・・・・・・


ともあれその魔力の生成の不可解さにパチュリーは理屈をつけて考えることで自らを納得させようとしたことも大きい。



対して小悪魔はこの状況に半ば混乱していた。 



・・・・・・ていうか、え!?闘っちゃうんですか!?この図書館で!??

間違いなくぶっ壊れちゃいますよ!!!



実のところ小悪魔は出会った時から、否、書斎に近づいてくる魔理沙の気配からこの魔法使いがただものではないことなど気づいていた・・・。


小悪魔はそれほどの年齢ではないといっても魅了と混乱、そして魔術を支配する悪魔の種族であり、パチュリーに召喚されたために契約をして下に付いてはいるが、そうとうな実力者なのだ。


そしてその小悪魔は魔理沙にたしかに宿る《同類》のような匂いと、本能で強靭さを感じていた。


この魔法使いには何が起こっても勝てはしない・・・たとえ天地が反転しようと・・・・・・

この魔法使いには何が起こっても敵対してはいけない・・・たとえ自らの死が確定しようと・・・・・・


それほどに魔理沙から感じた《何か》は絶対的であり、敵対し、操られ自らの主を見殺しするぐらいなら靴を舐め、恥も外聞もなく媚びるだろう・・・それが無理なら自ら死を選ぶ。もっとも魔理沙がそんなことをするような人間でないのはこれまでの会話で小悪魔も判っている・・・。あくまで例えだ。


そしてそれほどの魔法使いである魔理沙と自らの主人であるパチュリーが闘うことは小悪魔には納得などしようもない問題なのだ。



「ちょ、ちょっと決闘とか・・・!お茶会とかそういうのしましょうよ!

女子が集まってるのにそんな血なまぐさい!!」


「わたしが負けるとでも思っているの?」


「ええ!??別にそういうわけじゃ・・・!」


「悪魔とは思えない発言だぜ・・・」


「ちょっと魔理沙さん黙って!!」


「おい私の扱い雑だな!」


「だいたい二人がこんなところでやり合ったら崩落するじゃないですか!ここ地下ですよ!!」


「・・・・・・」


「・・・・・・なあ、じゃあ正規の決闘法を取らないか?」


「「?」」


命名決闘法スペルカードルールっていうんだけどな・・・・・・」



魔理沙は決闘法について二人に概要を話した。・・・・・・カードに関しては、タロットなどで代用し、極力ルールに則って闘うよう交渉を図ったのだ。



「聞いたこともないわそんなの・・・。」


「うーん・・・ルール破ったらどうなるんですか?」


「特に何も無いぜ?」


「「は?」」


「いや、だから・・・特に何もないんだよ。ルールにおける制約には破ったらどうとか、そういうの。」


「・・・・・・呆れた」


「ええ!?なんですかそれ・・・ガッバガバじゃないですか!!」



ぶふっと、魔理沙は堪えきれずパチュリーの思った通りの反応と、小悪魔の発言に吹き出してしまう。


そう、そうなのだ。幻想郷の管理者は意外にも、大まかなルールの中に食らい弾幕ボムなどの細かな制約の術式を組み込み、綿密に組み上げているかのように見える。しかし、死と直結しているはずの闘いのルールを破ることで起きる制約など、なにもない。いわば殺しても制約による罰はないのだ。



「あははっっ・・・だなあ、そうだよなあ。でもそれでいいんだよ。縛り付けることなんて無い・・・。なあ、ふたりともサッカーって知ってるか?」


「いきなり何なのよ、馬鹿にしてるのかしら。」


「知ってるに決まってるじゃないですか。世界中の人間が知ってますよ・・・。」



この二人の反応と発言で魔理沙はあることを確信するが、そのことは一先ず触れず会話を進める。



「だよな。あのサッカー・・・ルール破る奴いたらどう思う?興覚めじゃないか?明らかに狙ったファール、暴行・・・少なくとも顰蹙もんだろ?

それと同じなんだよ、命名決闘法スペルカードルールは・・・。

確かにこれは意味がないかも知れない。この世で最も無駄なゲームさ。殺伐とした空気なら、本気で殺し合いしようとするなら尚更な?・・・・・・でも、此処はそうじゃない。様々な種族が跋扈する異界のいわば『楽園』なんだ。楽しまなきゃあ損だろう・・・」


「・・・・・・・・・」


「見かけによらず回りくどいのね。つまり、何が言いたいのかしら?」


左手で口元を抑えて思案するように下を向く小悪魔と、目を細め思案した後、結論を急かすパチュリーに、魔理沙は手をスカートの上から脚に添わせるような形で伸ばし、腰から頭を下げ、立礼というより、懇願めいた形で言葉を紡ぐ。



「だから頼む!幻想郷に越してきたお前たちに・・・不安の拭い去れてないお前たちにこんなこと頼むのは酷かもしれない!都合のいいことを言ってるのかもしれない!でも此処にいるってことは、この地のルールに従わなきゃならないってことなんだ!異変を解決するにしても、あんたらの目的を成就するにしても・・・これだけは守らなきゃいけない!!だからスペルカードルールで闘ってくれ!!」



「「!?」」



幻想郷では確かにサッカーが流行ったこともあったが、世界中の人間という小悪魔の言葉は言い違いだとしてもあまりにもおかしい。

どう考えても紅魔館の住民は外界からの移住者であり、しかも妖精ですら知っているほどのスペルカードルールを知らないほど、ごく最近の移住だったのだ。



魔理沙はスペルカードルールが制定され、霊夢から報告を受けた時には感動と安心という複雑な心境をしていた。


もう二度と、あんな殺戮の日々を送らずに済む。妖怪退治、異変解決というと聞こえは良いが、半ば殺し合いのような決闘であったことも少なくはなかった。


そして、このルールを作った八雲紫という妖怪に神社で出会って話をした時には、大妖としての並々ならぬ『力』と、身に纏う胡散臭い雰囲気をまるでかき消すような慈愛に満ちた人柄が感じられた。魔理沙はそんな紫の事を無条件で気に入ってしまっていたのだ。


しかし、ここにきてその幻想は打ち砕かれた・・・・・・この紅魔館の住人はスペルカードルールを誰も知らず、咲夜や美鈴は当然のごとく死を直結させるような攻撃を放つのだ。


この地は混沌に満ちる《あの》現状のままなのか・・・そんな疑問を少なからず魔理沙は抱いていたのだ。


だが決闘たたかいで咲夜や美鈴が人を人とも思わぬような卑劣な輩でないことが判ってくると、少しずつ希望が生まれていた。そして咲夜からの謝罪を受けた時、その希望は確信へと変わる。




・・・・・・こいつらは知らないだけなんだ、幻想郷このちのルールを、どんな事情があろうとそんなもん関係ない!こいつらはもう此処の住民なんだから!!




いくら大魔術師のパチュリーといえど、あの大規模の紅霧を出す為には相当な体力も魔力も使わなければならない事を魔理沙は分かっていた。


恐らく、館中を巻き込んで、理由は魔理沙には判らないが、『目的』の為に放った魔法なのだろう。この戯言に耳を貸すかどうかは分からない。


魔理沙が行った懇願は、相手の情に訴えかけるような、不確定要素の塊のような行動であり、半ば意味のない行動だともいえる。



ただ、魔理沙はこうせずにはいられなかっただけだ・・・。




あたしは馬鹿なのかもしれないな・・・くそーこれじゃチルノに言えないじゃないか!!




「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」




再び、凍りついたような沈黙が大図書館を埋め尽くす。

━━━永い。魔理沙はそう感じずには居られなかった。



「なぜ・・・」


「え?」


不意に口を開いたパチュリーに顔を上げ、魔理沙は上ずった声をあげてしまった。


「なぜその強さを持っているのに・・・貴方は頭を下げるの?それは日本人の美徳なのかしら。そうでもなさそうね」


「そうじゃないよ。むしろ私は大分わがままな方だぜ?なんならここの本全部持ってってやろうかと思うぐらいにはさ・・・・・・。」


「持ってかないでー!」


「魔理沙さん!!パチュリーさまを困らせないで下さい!!」


「ごめんて。なあ、そろそろ返答を聞かせてくれないか?」



パチュリーの問いかけから始まった他愛無いやり取りからいつもの調子を取り戻した魔理沙は、急かす様に言葉を紡ぐ。そして・・・



違うわね。強いから傷つけたくない。強いから守りたい。そして強いから・・・・・・



似てるのね・・・・・・レミィと


「え?な、なんだ?」


「いいわ!決闘での命名決闘法(スペルカードルール)恒久的使用。私だけと言わず、『紅魔館』は正式にそのルールを受諾する!」


「!?・・・本当か!てかそんな権限あんの!?」


「ただし・・・今回は別よ。小悪魔ァァ!!」


「ああもー!やっぱりこうなるんですね!!分かりましたよパチュリーさま!!!」



な・・・なんだ!!???



名前を主に呼ばれた悪魔は、返事をすると同時に勢いよく飛び上がり、図書館中を駆け回っていく。

すると駆け回り通過した小悪魔の周りの壁や本棚、天井などの隔たりに(おびただ)しい数の魔法陣が浮かび上がったのだ。



結界!?ていうかこの数はおかしいだろさすがに!!



結界の数は優に二百を越えている・・・・・・

それは魔理沙にも不可能では無いかと思える程の魔力を解き放つ行為であり、魔理沙は初めて目にする事象に度胆を抜かれていた。


「防壁結界よ。驚いたようね・・・小悪魔は私の召喚悪魔なのよ?魔力経路を私とリンクさせればこれぐらいは造作も無いわ」


「造作も・・・・・・ない?

・・・・・・てかおい!!スペルカードルールで闘うんじゃないのかよ!!」


「野暮ね魔理沙。・・・貴方とは一度純粋に魔法で語らいたいと・・・そう思っただけよ。喘息の調子もいいし・・・小悪魔、貴方は手を出さないで。これは、決闘じゃない・・・『討論』よ」


「承知いたしました。パチュリー様。」



ああー・・・これはチルノだけじゃなく霊夢にも言えないな。

私も最近異変が少なくて忘れてたのかね。


幻想郷(ここ)にはいいやつも多いけど・・・・・・



「血の気の多いやつは多すぎるぜ!!!」




勝負・・・開始!






ホントはこの話で魔理沙とパチュリーの熱いバトルが展開されてたはず・・・・・・どうしてこうなった。


しかし前話は名前負けも甚だしかったですね(´・ω・`)

今回はちょっと落ち着いたタイトルで、いや、別にパチュリーの二つ名が地味とかそういうんじゃ(ry

私は好きですよ?この名前。なんか厳格で壮大じゃないですか・・・。

なので今回は紅魔郷の『知識と日陰の少女』じゃなくこっちの異名を使ったんです。


さて次回こそいよいよバトルです。乞うご期待!

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