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東方奔走録  作者: むーあ
紅魔郷
12/32

最強の氷精

・・・行くか!


気絶した咲夜と美鈴を回復の魔法と、持って来ていた自作の回復薬を使い手当てしていた魔理沙は、作業しながらふと、今までずっと動きっぱなしだったんだなあと・・・考えていた。


そして少しの間ではあるが、落ち着いて座ることも出来、これからの行動を整理し終えたところで、決意を固め動き出そうとしていたのだ。


「ま・・・魔理沙」


「!?・・・咲夜!お前まだ!!」


振り返り視線を落とすと、気絶していたはずの咲夜が掠れた様なか細い声で語りかけてきたのだ。

ファイナルマスタースパークは魔理沙の奥義とも呼べる魔法であり、いくら建物の崩壊をさけるため威力を押さえてはいても、くらえば重傷は避けられない。

にもかかわらず、いくら回復したとはいえどれ程の執念と忠誠がこの少女を突き動かしているというのか・・・魔理沙は驚愕の気持ちを抱いていた。


「っ!・・・もうやめとけ。そんなんで闘っても無意味だろ・・・」


「違う・・・言わなきゃいけないことが・・・」


「?・・・・・・なんだ?」







「本当に・・・ごめんなさい」







「・・・・・・え?」


「ごめん・・・私、あなたの箒を・・・奪って・・・・・・そんなに大切なものだなんて知らなかったの・・・許して貰おうなんて思ってないわ・・・ただ、言わなきゃって」


「・・・・・・・・・」


「ごめん・・・なさい」



咲夜の眉間にはシワがより、魔理沙の顔を伺うような面持ちで謝罪の言葉を繰り返した。


主と従者は似ると云う・・・優しく、強き吸血鬼の姿を常に見続けていた咲夜は、不器用ながらも義を重んじる優しき少女に成長しているのだ。

主の為に盲目になることはあろうと、その本質は変わらない。

その咲夜のある種の不器用さと優しさを看破していた魔理沙は納得はしていても、いきなりの発言にあっけにとられてしまった。


「はあ・・・ははっ・・・・・・咲夜お前、ばかだな~~」


「え?」


「気にしてないってもうそんなの!!

て言うかお前にとってはお嬢様のほうが大事だろ?」


「それは・・・」


「それにほらっ・・・無くなっちゃったりしてたらそりゃキレてたかもしんないけど、もう返して貰ったしな!」


「でも・・・」


「でももへちまも無い!・・・・・・よし!じゃあこうしよう!!罰として私が教えるから、絶対 命名決闘法(スペルカードルール)覚えろよな!!」


「・・・・・・ありがとう魔理沙。

魔理沙はお嬢様のところに行くの?」


「この紅霧を出したのはお嬢様か?」


「いえ・・・パチュリー・ノーレッジ様よ。

・・・そう、そういうこと・・・魔女だものね。

多分パチュリー様は二階の書斎にいらっしゃるわ」


「そうか、行ってみる。じゃあまたな!」


「ええ、宴会(バンケット)・・・楽しみね」


「・・・・・聞こえてたのかよ」


魔理沙は目的に向かって走り出す・・・・・・館の魔女に合う為に


「まったく・・・」



━━━━幻想郷(ここ)には良い奴しかいないのかよ






魔理沙が決意を固め、二階へと出発するおよそ二時間ほど前、二階へと上がった霊夢とチルノは更なる驚愕をすることとなる。


「うわっ、多っ!」


「みんな!!!」


そう・・・そこは2階であり、様々な部屋を繋ぐための廊下となっているが、その広さは幅も奥行きも並の館のものではなかった。その異様な程の広く長い廊下に何人もの、否、何十人といる

メイド服を着た妖精が清掃に励んでいたのである。


そしてチルノが声を妖精達(みんな)にかけたことで、全員の双眸が一斉にこちらに向いた。


「あ!!・・・誰だっけ?」


「ちょっと!!前ここに来たネビュレでしょ!」


「あ、そうそう!・・・ねえ誰だっけ」


「いやっ違う別人よ!だってメイド服来てないもん」


「そうか!!じゃあ追い出さなきゃ」


「そうね!みんな~」


「「「「「「「「「おーー!!!」」」」」」」」」



一匹の妖精が話し出すと口々に皆が口を開き、瞬く間に二人を排除するという空気にかわっていた。


ここに強制的に雇われていた妖精は暗示を掛けられている訳でも、恐怖により支配されている訳でもない。美鈴が連れてきた後、咲夜がホールへと一所(ひとところ)に集め、皆に呼び掛けただけだ。

「今からあなたたちはこの館に雇われたのだ」と・・・

「だから言うことを聞かなければならないのだ」と、そう伝えただけなのである。霧の湖最強の妖精(チルノ)が決闘でここの住人(メイリン)に負けたため、従うのが当然とも思っていたのだろう。


そう・・・元来妖精はこの程度の知恵しか持ち合わせていない。チルノが特殊なだけで忘れてしまいそうだが、これが普通の妖精の反応なのである。


「あーあーチルノ、あんた完全に忘れられてるじゃないの・・・大方湖にいるあんたと結び付かないんでしょうね」




『道に迷うは妖精の所業(せい)なの』




「・・・はっ?あんたそれ・・・何!?」


横のチルノを見ると、いつもとは明らかに違う静かな雰囲気と、全身に自然と同化するような柔らかな妖気を身に纏い、なにか呪文の様なものを唱える姿がそこにあった。そして呪文は続いていく・・・


黄泉(よみ)の国をすり抜けて、在るべき所に帰りなさい』


「!!!」


短い呪文か、あるいは(うた)か・・・ともかく唱え終わったチルノは淡く、青白く輝いた後・・・何も起こらなかった。輝いた後は徐々に光が消えていき、何事もしていなかったかのような顔のチルノがそこにいただけだ・・・だがその後チルノは言葉を続ける。


「よし!これで皆を倒しても、ふっかつした時湖に帰るよ!!」


「・・・・・・記憶は?」


「え?」


「記憶はどうなんのよ。霧の湖で復活しても、主がここの吸血鬼だと思ってたら同じじゃないの!」


そう問いかける霊夢は、先ほどのチルノがした行動に対しての疑問も疑惑も無い様な態度だった。

それほどに先ほどの姿は神秘性とある種の『力』を感じさせるものだったからである。


「ならそれでいいんじゃない?」


「は?」


「だって!カンキンされてなさそうだし、皆楽しそうだし!ならそれで良いじゃない。妖精なんだから!!」


「なんだそれ」


そう言いながらも霊夢は妙に納得してしまっていた。

湖にもどし、受け入れたのならそれで良し。そして、湖にかえり、それでも尚、自らの居るべき場所が紅魔館だと感じて帰るのであれば、チルノは引き留めない・・・要は選択肢を与えたようなものだ。


「さあいこう!最強のあたいが相手だ!」


「「「「「「「「「かかれ~~!」」」」」」」」」


掃除用具を手放した妖精は、一斉にこちらに向かい、弾幕を放ってくる・・・しかし例えると烏合の衆。

その弾幕に規則性やチームワークなどなく、放たれた弾幕はけして速くはない。そして自分に向かって飛んでくるだけなので、横に移動するだけで簡単に外すことができた。


しかし、チルノはかわさない。

自らの強さを示すように堂々とスペルを、否、ある(しゅ)を唱える。


「カード宣言しろー!パーフェクトフリーズ!!」


右手を翳し、弾幕に対して言った言葉は、霧の湖で霊夢たちと決闘した時のスペルそのままだった。しかしこちらはスペルカードではなく、ルールを無視した妖精に対してお返しとばかりに放たれたあやかしの技である。


すると向かって来た数多の弾幕は凍りついた様にその場に静止した。


「へえ・・・」



霊夢は妖精達の弾幕が妖気もろとも凍りついている事象に薄いながらも感嘆の声を上げる。


「魔理沙とか霊夢とか・・・あと美鈴(アイツ)ほどじゃないもん。よゆうだね!!」


「じゃあいくわよ!こんなやつら、スペルカード使うまでもないわ!」


そう言うと霊夢は懐から手のひら程の大きさの針を取りだし、一斉に放つ。そのすべてが妖精達の額ど真ん中に命中し、声すら上げることなく消滅していく。

チルノも負けじと妖気を込めた弾幕を放ちながら廊下の先へと突き進んで行く。


しばらく進んでいくと、廊下の先から更なる妖精たちが大漁にこちらに押し寄せてきたのだ


「ちょっとこいつらどんだけいるのよ!!チルノあんたどんだけつれてかれたの!」


「いっぱい」


「ザックリ!!・・・・・・もういい!!私が囮になるからあんた先に進みなさい!!あの大扉の向こうよ!」


霊夢が指差した先、妖精達の隙間から覗く大扉があった。

その扉には紅い円状の魔方陣が施され、魔法の結界が張られていたのだ。


「はっ!!」


霊夢はその扉に向かい、霊符を巻き付けた針を数本 (なげう)

すると扉に描かれた魔方陣はガラスがくだけ散るかの如く消えて、拒絶するように感じた力もすっかり無くなったのだ。


「霊夢・・・ありがとう!」


この先に小さい・・・しかし神聖な自然とも似かよった気と、今までとは次元の違う妖気を感じたチルノと霊夢は、二人の目的が同じところに在るのだと確信する。しかし・・・



アイツはチルノのために2対1を引き受けたんだ。

私もチルノのために・・・いや、チルノに託す!



霊夢は今は離脱している魔理沙に、一瞬だけ思いを馳せた。

親愛なる友を助ける為・・・これは紅い霧を止めるだとか、魔法使いに会いたいなどということよりもよほど優先されるべきことであり、そのチルノの強い思いに霊夢と魔理沙も突き動かされたのだ。


「あんたら!!暫く大人しくしてなさい!封魔陣!!」


今日で三度目の術名を発したが、これまでの弾幕とはまた違う。

符を前に掲げ、その符から重なるように数多の符が散らばるのは湖の決闘時と同じだが、今回はその符が周りに盛大に散らばっていき、妖精達に狙い済ましたかのようにその符は張り付いた。

その妖精たちはまるで金縛りにでもあったかのように動けなくなったのである。


もう使わないと思ってたんだけどね・・・


これは弾幕ではない。霊夢が幼き頃修行により身につけた霊術であり、博霊の秘術といえる業である。

スペルカードルールが浸透してからは、霊夢はこの様な妖怪を封じるための業は使わないだろうと思っていたのだ。


これ私も動けなくなるのよ・・・どう切り抜けるかな



そしてチルノは迷っていなかった。

ここまで見送ってくれた二人に感謝しながら、この先にいるであろう大妖精を助ける為に、勢いよく、体に妖気を冷気を纏わせ、体当たりするように扉を開く。



バンッッ



「大ちゃん!!!」


「チルノちゃん!」


そこは玉座の間なのであろう。広大とも言える空間に、紅く美しいマットがチルノが開いた扉から一直線に敷かれていた。途中小刻みで数段の階段をはさんでその最奥、マットの先に玉座に座った銀の髪をした、幼い容姿とはかけ離れた蝙蝠のような羽の生えた美しい少女と、その横に沿うように立つ緑の髪をサイドテールにしてまとめた、羽虫のような、しかし透明な美しい羽を持つ、メイド服姿の一人の少女がいた。


緑髪の少女・・・大妖精は掛けられた声に対し、花が咲いたような可愛らしい笑みをうかべ、その声に応える。しかし・・・


「え・・・妖精!?」


銀髪の吸血鬼、紅魔館の当主、レミリア・スカーレット。

彼女は想定外の来客に戸惑っていた。









幻想郷に来る前の他愛無い会話


「ねえ・・・」


「なんだパチェ」


「エコーロケーションってあるじゃない」


「ん!?なんだいきなり」


「あれレミィできるの?」


「うん、まあ出来るかな・・・」


「どういう感覚なの?」


「え・・・難しいな・・・声聞こえるのってどんな感じって聞かれるぐらい難しい」


「あー・・・・・・なるほど」


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