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東方奔走録  作者: むーあ
紅魔郷
10/32

完全で瀟洒な従者



何で・・・なぜ当たらないの!!?




十六夜咲夜はこれまでに無いほどに狼狽していた


その表情は魔理沙たちと会話を交わしていた時とはさほど大差がない様に思える。

しかしその唇は横一線に固く結ばれ、背中には動いているときとはまた毛色の違う、冷や汗が新調したてのワイシャツを肌に張り付かせている。


「はあっ!!」


咲夜はスペルの宣言もなしに《奇術》を発動させる。

突如として三人の前に弾幕のごときナイフの束が現れ、避ければまた別の角度、場所からも同じ数程のナイフを出現させる。

(わざ)の名は『ミスディレクション』


この咲夜の弾幕(ナイフ)は決闘で使われる弾幕ではなく、殺傷のために用いる殺しの暗器であることが一目で見てとれる。


最初にナイフを投げたであろう咲夜は、その位置から完全に消え去り、瞬間移動としか形容できないほどのスピードで違う場所に移動しているのだ。



だが、驚くべきは霊夢と魔理沙の二人・・・

霊夢はまるで、咲夜の移動する位置が最初からわかっていると言わんばかりに、手にもっていた霊符で正面からナイフを払いのけ、魔理沙はチルノを庇いながら、いや、右手で米俵を抱える様に肩に担ぎ上げ、またがった箒で駆け回り、避け続けているのだ


「あっ・・・ぶねえ!本気で殺す気かよ!!」


「くっあんた正気!?」


「ちょっとお!!魔理沙おろ「舌噛むぞ黙ってろ!!!」


博麗の巫女・・・話には聞いていたがこれほどまでとは!

お嬢様が運命を覗き、この巫女が妹様を救うと断言なさるだけはある・・・と、咲夜は狼狽しながらも奇妙な得心と、感動にも似た気持ちを抱いた。しかしそれ以上の疑問と驚愕が、咲夜の感情を支配者していた。



古風な魔女と思って油断してたわ!・・・・・・ホントに何者なのコイツは!!



魔理沙は、霊夢のように完全に咲夜がどこから現れるかを理解しているわけではない。しかし、妖精を担ぎ上げた状態であるにもかかわらず、博麗の巫女に勝るとも劣らぬ機動力と戦力を見せつける白黒(モノクロ)の魔女の姿は、咲夜にイレギュラーな存在であると感じさせるには充分過ぎた。



一方、魔理沙は先ほどから感じる少しの、しかし確かな違和感に苛まれていた。


『決裂?いや・・・決闘でしょう』


おかしい・・・・・・どういうことだ?

なぜ咲夜は決闘の呼び名を使ったんだ。いや使っただけなら良いんだ。侵入者の油断を誘い、殺す・・・悪い手じゃない。い、いや、悪いやつだけど・・・それはともかく、ならなぜ《紫は止めなかった》んだ。



そう・・・命名決闘法(スペルカードルール)とは幻想郷の管理者(ゆかり)が考案し、(さと)中に広めたルールであり、そのことは以前霊夢から聞いて知っていた。この幻想郷を創り、そしてこの地を誰よりも愛した人物であることも・・・・・・。


紫は初めて会ったとき、異変の場所の特定のみならず、首謀者の種族が吸血鬼であることまで知っていたのだ。十中八九、接触を試みたのだろう。


そして命名決闘法(スペルカードルール)を拒む程の危険人物なら《あの》紫が、自分には告げないまでも、霊夢に何の忠告もなく、そのまま異変に向かわせるとは、魔理沙は思えなかった。


そして本当に危険な者たちであるなら、紅霧を発生させるだけなどという無害な異変を起こさずとも・・・

このような回りくどい魔法を使わずとも、いくらでもやり方はあるのではないか・・・


そして一番の理由・・・魔理沙は短い会話のやり取りでも、対峙している目の前の人間が、策謀を廻らせはしても、対峙しているものに不敬を働く様な人間にはどうしても見えなかったのである



どれもこれも推測の域を出ない。

首謀者の魂胆もわからない。



『ミスディレクション』によるナイフの雨を掻い潜りながら、魔理沙は明確な意図も無いまま、口を開く


「おい・・・チルノ!」


「なんだ魔理沙!」


「その妖精たちを連れ帰っためーりんとやらは悪いやつだったか!?」


「大ちゃんたちを連れていったんだぞ!悪いに決まってる!」


「だよなあ・・・・・・!」


・・・何聞いてるんだ私は。でも紅魔館の住人と決闘したやつなんてチルノ以外にはいないし、情報収集としては間違ってな・・・


そこまで考えた魔理沙はハッとしてチルノに再度質問しようとしたが、チルノの言葉に遮られる


「あいつ!!『正々堂々決闘で勝負だ』なんていっといて!

弾幕使わずにいきなり殴りかかって来たんだぞ!!もう極悪人だ!あんなやつ!詐欺だ!」


!!!!!


「なにしてんの!!避けなさい魔理沙!!!」


悲鳴にも似た霊夢の言葉が放たれる瞬間、咲夜のナイフは目の前に迫っていた。



魔空(まくう)ー『アステロイドベルト』



コオオオオッッと魔理沙の手のひらから多くの魔力が解き放たれ、その魔力は実体化し、カラフルな星のようないくつもの弾幕が形成される。


その密度は結界のようであり、殺傷力はあれど、半端に束となったナイフが通り抜けられる道理などなく、いくつもの星に弾かれ、総て地面に落とされていく。


「なっ!?」


あまりの美しさと、魔法使いでなくとも感じる並々ならぬ魔力に咲夜は気圧されてしまった。


そして魔理沙は、咲夜に問いかけずにはいられなかった




なあ咲夜・・・命名決闘法(スペルカードルール)って知ってるか?




「え?・・・なにそれ」



「「・・・(ゆかり)ィィィ!!!!」」



霊夢と魔理沙の怒号が紅魔館に(こだま)する。最も紅魔館にいる誰に向けた言葉でもないのだが・・・


紫は決闘の内容をレミリアたちに話していなかった






同時刻 迷い家 茶の間




「へっくし!!」


「紫様、お風邪ですか。」


「そんな感じじゃないわね・・・ちょっと鼻がむずむずしただけよ。誰かが噂でもしてるのかしら」


「左様ですか・・・?」


八雲紫は卓袱台(ちゃぶだい)の上のちり紙をとり、ちーんと鼻を噛む。


此処は幻想郷のとある家屋、迷い家。八雲紫とその式神、藍。二人は茶の間の卓袱台で、藍が剥いた桃を食べながら、駄弁っていた。


ひとしきり鼻をかんだあと、紫は言葉を続ける。


「でも、さっきの霧の湖の波動は凄かったわねえ」


「はい、流石は博麗の巫女かと・・・」


「いえ、霊夢だけじゃないわ・・・それにしても、魔理沙は本当に何者なのかしら」


霧の湖でルーミアに接触(最も神社周辺あたりからつけられていたのだが)した時に霊夢と魔理沙が発した強烈な《力》の増大は、当然のごとく紫と藍に気づかれていた。


二人がかりとはいえ、あの練り上げたであろう紅霧発生時の魔力を凌ぐ程の力の波動だったのだ。


「・・・・・・」


「まあ、懸念は何も無かったわね。あの二人なら、異変を解決して、何ならレミリアとも仲良くなれるでしょう。」


懸念があるとすれば、レミリアたちが異変や博麗の巫女を知っていたことで、スペルカードルールも知っていると思い込んでしまった紫の完全な失態だけなのだが、本人はそんな事は露知らず、木製のピックフォークを桃に突き刺し、口に運ぶ。



紫の言葉を聞いた藍は、茶の間に面した外の景色を眺め、薄く微笑んでいた。





紅魔館 一階 玄関ホール



「霊夢!咲夜は決闘(ルール)の内容知らないっ!!」


「わかってる!ああもう!!

これじゃあ《今まで通り》じゃないの!!」


「・・・幻想郷(このち)では死んでも復活するのでは無いの?」


「そんなわけあるかあ!!妖精だけだそれは!」



怒りにも似たツッコミを放ちながら、魔理沙は八角形型の魔道具、『八卦炉』を左手でベルトについたポーチから取りだし、次のスペルを発動させる。


「悪いがしばらく寝て貰うぜ!!出力50パーセント・・・恋符『マスタースパーク』!!」


ゴオオォァオォオオォォオオッッ!!


と、炉の口から魔理沙の前方のホール一体を埋め尽くす程のレーザーが、獣の咆哮と聞き(まご)う程の轟音を放ちながら、咲夜のいた場所を吹き飛ばしていく。しかしレーザーの余韻が消えると、その位置から咲夜はいなくなっていた。



いない!何処に行ったんだ!!



先ほどのマスタースパークは咲夜を吹き飛ばす程度の威力に調節していたが、跡形もなく消し去るほどの威力はなく、忽然と姿を消した咲夜の気配を感じ取ろうと意識を集中させようとしたその時


あなたの時間も私のもの、古風な魔女に勝ち目はない


「!!!!!」


突如として後方から聞こえた声に振り返り、後ろを見ると至近距離でナイフを放とうとする咲夜の姿があった


しかし、咲夜の死角に入るように咲夜の横数メートルの位置に低い姿勢で、霊符を構える霊夢の姿もあり、攻撃に移るスピードは若干霊夢のほうが早い


「夢符!『封魔陣』!!」


このバカ!!こんな建物のなかでそんな大がかりな術つかったら崩壊するだろ!!


先刻マスタースパークを打った魔理沙が言える立場ではないが、自分は威力を押さえていたし、何よりルーミアとチルノとの決闘で霊夢の万華鏡のごとき弾幕を見ていたため、周囲に尋常ならざる被害が及ぶことしか想像できなかったのである。



「っっ!?」



しかし霊夢が構えた霊符からは符の束は広がらず、代わりに神々しい光の奔流ともいうべき霊力の塊が、咲夜へと一直線に放出されたのだ。


同じ術名(スペル)でも全然違うのかよ!!

魔理沙は安堵しながらも、妙な心配をさせた霊夢に心の中で悪態をつきながら、咲夜の吹き飛ばされたはずの位置に目線を移す


いない、まただ。

先ほどから捉えたと思ったらその場所から移動している。否、思えば最初の(ミスディレクション)からおかしかった。


おそらくそれが咲夜の能力なのだろう。

そして何度もその能力の発動を目にしている霊夢と魔理沙は、それがどんな能力か、大体の目星の様なものはついていた。


「魔理沙」

「ああ」


「あいつは時間を止められるのよ」

「やつは空間を操れるんだぜ!」


「「・・・・・・」」


二人は何とも言えない顔で互いに顔を見合わせる


「化け物ね・・・両方正解よ」


見解を違えた二人に応える咲夜は、再び階段の(もと)に移動し、こちらへと歩み寄りながら言葉を続ける。


「あなたたちみたいな化け物を相手取るのに一人じゃ厳しい・・・というか無理ね。だから・・・」


こちらも二人でいくわよ


ザッっ・・・と、魔理沙が始めに魔法(ブレイジングスター)で崩壊させた扉のあった玄関から、一人の人物が刺す様な闘気を全身に纏わせ、ホールへと入って来る


「咲夜さん!・・・来ましたよ」


「めーりん!!!」


担ぎ上げられていたチルノがいきなり声を発したことで、その少女が妖精をさらい、チルノに決闘を仕掛けた(くだん)の『めーりん』だということがわかった。


「さあここからが本番よ・・・紅魔の館の恐ろしさ、語り継ぐといいわ」















霊夢の 夢符「封魔陣」は・・・


ルーミア&チルノ戦の時(永夜抄)と咲夜戦の時(紅魔郷)とで二種の弾幕が使える設定にしてます。


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