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東方奔走録  作者: むーあ
紅魔郷
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巫女と魔法使い

序章


「魔理沙」


私を呼ぶその声に全身の意識を集中し、目の前の御方の言葉を待つ。

否、私は片膝を着き、頭を垂れている状態の為、目の前では語弊があるのだが・・・


ここは現世とは隔絶された世界、美しく荘厳な地獄の奥深くにある一つの館、その最奥の玉座の間である。


私の前に座すのはエメラルドグリーンに彩られた艶やかな髪を持つ長身の女性。

青を貴重とした星をちりばめたようなデザインをしたローブを着ているが、服の上からでもわかるほどの引き締まった体躯をしている。しかし、腰から下はローブと同系色のロングスカートだが、そこから覗き見る足は存在しない・・・。

所謂幽体、おどろしくもあり、逆にそのアンバランスさが全体の美しさを返って強調しているようにも思える。


いつもは気さくな私の魔術師範であるこの御方がわざわざこの場に呼び出してまで、このような公の雰囲気を醸してまで、なにを伝えようとしているか、私は既に理解しているのだ。


「時が来たよ魔理沙、今度こそ博麗神社を潰す、そして魔理沙、おまえが・・・」


一息着き、鋭い眼光で薄く笑みを浮かべ、宣言した。


「博麗靈夢を、潰せ。」


私も同様の笑みを浮かべ、誓う様に返す。


「総て、魅魔さまの御心のままに」



第1章紅霧異変


「「ふあ~あぁ」」


とある神社の境内、そこに面した廊下に、二人の少女が煎餅を喰いながら寝そべっていた


「魔理沙あんたあくびしたでしょ」

セミロングの黒髪をした赤白の巫女服少女がしかめっ面でぼやく


「はぁ?してねえよ、お前こそでっかい口開けてたからばればれだったんだからな」


魔理沙と呼ばれた少女は、腰まで伸ばした柔らかい金髪を揉み上げの場所のみ三つ編みにしている、その編んだ髪を人差し指でいじくりながらだるそうに返した


此処は幻想郷、森や山が九分九厘をしめる土地。

人は自然と共に生き、魑魅魍魎が跋扈する。機械や人口物が蔓延る現代とは一線を画す、現代の桃源郷である


妖怪、妖精、あるいは神。様々な種族が暮らすこの地は、やはり様々なトラブル《異変》が巻き起こると人里では語られる。

悪霊が神社を呪い、潰されかけた。

花の妖に神社を潰されかけた。

果ては、魔界から移ってきた妖怪が神社を潰しかけただの「あんたは私に恨みでもあんのか魔理沙!」

じょ、冗談だぜ


他にも大小様々な異変があったのだが、最近はめっきりその様な現象も起きていない、飛び回れば妖怪同士が決闘による小競り合いをしていたりもするだろうがそんなのは日常茶飯事の些末な事だ。


「ひまだなーまあなんも問題が無いってのは良いことなんだろうけどなー」

「こんだけ何もないと商売上がったりだわ、どっかで誰かやらかしてくんないかしら」

「ろくでもないやつだぜ」


巫女の名は博麗靈夢、改め博麗霊夢。

この幻想郷の《異変解決》を一手に担う楽園の巫女である。

ノースリーブに袖を付け加えたような奇抜な衣装は飾りではなく、戦いに特化した軽量の戦闘服だ。幻想郷の成人年齢である15歳になってからは名を改め、正式な幻想郷の巫女としての衣服も賜った。

もともと警察部隊もいるにはいるが、せいぜい食い逃げなどの小さな犯罪を取り締まる程度である。大妖が起こすような異変は警察も歯が立たないのだ・・・。


「今度人里にパトロールいこーかな」

「いや、小兎姫のしごと取んなよ・・・」


暫く軽口を叩き合ったその時、変化は起きた


「おい、霊夢あれ・・・」

「!??なに・・・あれ!?」

ほぼ同時に空を見上げた二人が、同時に気づく。


夕焼けではない、空が一瞬にして紅に染まったのだ。

否、空だけではない、まるでこれまで空気に溶け込んでいたかのように空が染まると、紅い霧が視界に顕れる。しかし決して視界は不明瞭ではなく目の前にいる互いの姿、博麗神社の外観、写る景色は鮮明に見えている。

真に比喩でもなんでもなく、景色が紅に染まったのだ。


「ふざけた事するやつがいたもんね」

「魔法使いの仕業だぜ、それも超一流のな」

「分かるの!?」

「水の属性魔法の応用だ、しかし土地一体を埋め尽くすなんて・・・規模の桁が違うな。」

「専門的な話されてもよくわかんないけど、一個だけ私にもわかるわよ」

「多分私にもわかるぞ、これは・・・」


「「異変だ」」


同時刻 紅魔館


幻想郷のほぼ中心部に位置する巨大な湖。数多くの妖精たちが駆け回る幻想的な場所がある。その湖の東側に、まるでヨーロッパの風景画から切り取ったかのごとく場違いで巨きな洋館が存在する。それも、外壁や屋根は総て紅く染まっており、窓は少なからずあるが、出入りできるところは外壁で囲まれており、格子状の正門が一つしか存在しない。紅魔館と呼ばれるこの場所は、妖精や湖に住む小妖にとっては、まるで異界の場所のように近寄りがたくなっている。

その様な排他的な洋館は今は、まるでむせかえる様な尋常でないほどの紅い霧が立ち込めている。


この異変を起こした者は、今、まさにこの館に存在し、これからの事を同朋と共に話し合っていた。


「ご苦労だ。ノーレッジ卿、暫し休め。」

「何なのかしら、妙な大物感醸し出して。」

「おい、台無しになるから突っ込むのやめてくれ」


先に口を開いたのは、紅魔館の城主であり、この「紅霧異変」の紛れもない首謀者、レミリア・スカーレットだ。銀色の髪をした美少女であり、しかし、その幼い外見とはアンバランスなほどの妖艶な雰囲気と、知性を覗かせる、齢500の吸血鬼である。


「見た目からしてもう台無しでしょうに、そんな態度ばかり大きくしても大きくはならないわよ」


「うー!うるさい!」


吸血鬼をからかう少女は「パチュリー・ノーレッジ」

紫の髪と、同色のローブを着た魔法使いである。吸血鬼の無二の親友でありこの紅い霧を生み出した魔術を発動させた張本人である。


「うー・・・ゴホン、まあ・・・感謝はしているぞ。これで博麗の巫女も今日中にはこちらに向かって来るだろうからな。」

「来ると思う?いや、来るでしょうけど、最低でも場所の特定に数日は要するでしょう」

「来るさ、私の能力、最近調子いいからな。」

「あ、そう」

「反応うすっっ!!まあそんなわけで、咲夜!美鈴!」


「「此処に」」


「相変わらず早いな・・・まあいい、咲夜は私の警護、美鈴は紅魔館周辺の警備及び門の番だな。あ、そだ、二人とも妖精メイドの配置は館全体に散らばるよう命令しておきなさい。」


「かしこまりまし「わかりました!」

「ちょっと!そこは打ち合わせどおりかしこまりましたでしょ!」

「あぁ!ごめんなさい咲夜さん!いつものくせで!」


「ちょっと!いつも通りでいいから!」


「お気遣いありがとうございます、しかし、せっかくレミリアお嬢様が晴れ舞台に向けて格好つけているのに私どもがいつも通りでは・・・」


「ちょっ・・・カッコつけてねえわ!!」


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