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44話「最小戦力」

「ブゴァァァァァァ!!!」


「キェェェェ!!!」


オークパーテーの咆哮や《ワンド》の魔法の着弾音が響き渡り平原は静寂から解き放たれた。


すでにヒュージオークよりも素早いゴブリンファイターがアキラ達の数メートル先まで来ている。


後方部隊の魔法が何体かに直撃するも、速度を落とさず突撃する様子にダメージを与えているかどうかもわからない。


最初に標的にされたのは、圧倒的にヒュージオークとの力量差を見せてしまったハルズマンとフィルである。


6体のゴブリンファイターが迫り来る。

二人は横並びとなり背中を預けているかのように構えた。

コウは庇護対象ではない。そう判断した結果である。


先頭を行くゴブリンファイターが地面を蹴り、飛び上がり持っている錆びた剣を振りかぶった。

それに対しハルズマンは大鎚の先端を重力に任せ下ろすと、柄で受ける。


「マシヴグロウマキシム!(最大筋力強化)」


魔法で筋力を大幅増強すると、ゴブリンファイターが剣を引く前に、鍛え抜いた拳を顔面へと送った。

ゴブリンファイターはそのまま縦回転で転がり、3メートルほどで勢いがなくなり地面に伏せると痙攣して動かなくなった。


残りの5体はその光景を見て警戒し、纏まると同時攻撃を開始した。


フィルに2体、ハルズマンに3体。


フィルの方についた2体は積極的に攻撃するでもなく、そのあたりの小石を投げたり、反撃を避けれる範囲での攻撃を始めた。


絶妙な距離感、そして厄介な素早さ。

Cランク(正規兵班長クラス・下級魔導師)の魔物。

一対一ではフィルやハルズマンとて、そうでもない魔物であるが、連携を取られると面倒である。

また後方支援にあたるキャリコが後方に退いているため5対2の接近戦では“速攻”と言う二文字は実現不可能であった。

ましてや通常のゴブリンファイターよりも動きがいいのである。


フィルの横ではハルズマンが3体のゴブリンに攻撃を仕掛けられていた。

その状況から、フィルよりもハルズマンを先に落とすつもりであることは明白であった。


反撃の隙を与える間もなく、ほぼ同時の攻撃がハルズマンを襲う。

2体が同時攻撃を行い、かろうじて防いだ隙を狙って3体目が切りつける。


フィルが動こうとすれば1体がフィルの正面に回り、もう一体が死角から攻撃を仕掛けてくる。

その間もハルズマンの体には赤い線が刻まれ続けていた。

このままでは疲労で、いつミスをしてもおかしくない。


「っクソ!縛られたかっ!!!」


フィルはハルズマンと自分が置かれた状況を察し、ハルズマンに聞こえるように悪態をついた。


先ほどのヒュージオークとの戦闘でオークキングに力量を図られたフィルとハルズマンは、オークパーティーの“最小限”の戦力で動けなくされたのだ。


“お前たちはゴブリンファイター6体で殺せる”


オークキングの的確と言える采配に悔しさと共に情けなさが溢れ出していた。


「ハルズマン・・・舐められすぎだろ俺ら・・・・」


「・・・・っく!・・・戦力配分が的確すぎだ!」


ちょこまかと絶妙な距離を保ちながら仕掛けてくるゴブリンファイターを、かすり傷を負いながらもどうにか現状を維持するので手一杯であった二人はコウとアキラの状況など気にもできなかった。


爆音が聞こえるまでは。


「何の音だ!!?」


ハルズマンは火炎魔法の着弾音ではない音の方に目を向けた。

だが粉塵が舞い上がり夜の闇も相まって何が起きているのか分からない。

火炎魔法の着弾時は一定の爆発音はするものの、その実、対象を燃え上がらせたり燃え広がることがメインダメージのため着弾の衝撃はそこまで大きくはない。

だが響き渡るその音は明らかに爆発である。

ハルズマンの知る火炎魔法には爆発でダメージを与えるものなど存在してはなかったのだ。


「今だっ!!」


火炎魔法のものではない爆音が第二陣の方から響き渡るとゴブリンファイター達にも一瞬の空きが出来た。

そこをフィルは見逃すことは無く、1体のゴブリンファイターを横薙で火達磨にすることが出来た。


これによりフィルとハルズマンに張り付くゴブリンファイターとの拮抗が崩れ、残る4体のゴブリンファイターたちが火炎に包まれ平原に倒れた。


「フィル、助かった!」


ハルズマンの感謝の言葉が耳に入るが、フィルはこの爆発が何なのか気になっていた。

ハルズマンも同じく、二人共が爆音の先に目を向けた。


「魔槌の!!陽炎!」


すると後からテオ爺が年齢を感じさせない速度で二人のもとへ走ってきた。


「テオ爺、何が起きたんだ?」


ハルズマンは息を切らせて腰から俯くテオ爺の背中を擦りながら問いかけた。


「・・・・・あ、あいつは何者じゃ!!?ありゃあ魔法だが魔法じゃない!」


テオ爺は、何が起きたのか解らないが故の好奇心と、爆発を起こした人物の近くにいたハルズマンなら詳しく話が聞けるのではないかと踏んで走ってきたのだった。


「何を意味の分からんことをいってるんだ?ボケたのか?」


「ボケとりゃせんわクソガキが!魔槌の!このガキを懲らしめんといかんぞ!」


「分かった分かった!あの二刀流の奴が何をやったんだ?」


ハルズマンはフィルの無礼にキレたテオ爺を宥めて続きを促した。


「二刀流の方じゃない!ナイフの方じゃ!ウォルターバレル(水球)を放っておったんじゃが着弾した途端に爆発を起こしよったんじゃ!あんなもん見たことない!水魔法は爆発を起こさん!」


二人はテオ爺の言葉に再び視線を戻す。

既に土煙は治まり始めていた。

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