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35話「爆走兄弟とはこの事かと思ったが世間には受け入れてもらえないらしい」

「きゃーーーーー!!!」


「・・・・っうプ・・・・」


「っあ!ナタリー!!!」


慣れていない揺れと速度にナタリーが青褪めて口を押さえている・・・・


ルーイは先程から一切声を上げていない・・・恐らく気を失ったのだろうか。

やはり板バネだけでは揺れが酷かったか・・・・


「すまない!だが耐えてくれ!!」


俺の声が聞こえているのかいないのか悲鳴は収まらない。


今、通っている街道は比較的ならされている方だ。

だが窪みや小石などといった障害には、タイヤもサスペンションもない車輪では、かなりの衝撃を伴ってしまう。


それは想定内ではあり、しっかりと強度を上げる魔法陣は組み込んであるのだが揺れは収まることはない。

コウの運転に慣れている俺ですら若干吐き気を覚えるほどだ・・・・


元気なのはコウだけか・・・・・


「ヒャッハーーー!!!!」


世紀末か!!


元の世界でもバイクが好きで乗り回していた。コウだけテンションが高い。


道すがら、すれ違う商人やキャラバン、狩人や旅人などが顎を外す勢いで驚く声に慣れた頃には後からの悲鳴も収まっていた。


日も高くなり始めた頃にようやく中間地点の村が見えてきた。

ここは《キグナル》という村だそうだ。

いかんせんコウの魔力を回復させなければならない。

そのため、ここで食事を取り、夕食を買い込んでまた出発の予定だ。


「到着〜!!」


ゆっくりと馬屋に停止したのだが、見たことのない速度で向かってきた《ガンドーベル》を見ていた人達が固まって動かない。


「オッチャン!!オッチャン!!」


「・・・・・・ななななななんなんだおまえらーーーーーーーー!!」


「すいません、《ワンド》です。馬車を預かって貰えますよね?」


腰を抜かして倒れた中年の小太りのオジサン。

馬屋の人だろう。


街や村の中では道が狭かったりするので基本的に乗り物は馬屋で預ける。

所謂、駐車場だ。商売として成り立っている。

預けている間の馬の世話と、馬車の管理が仕事らしい。

俺達も《ガンドーベル》で村の中に入るわけには行かないので一旦預けるつもりだ。


大丈夫!!鍵は付けているよ。

鍵を抜くと起動用の魔法陣が外れる仕組みだ。

《ガンドーベル》に抜かりはない!


「そんなもん預かれるか!!何なんだあの速度は!!そんなもん管理も出来ねぇし、その馬か魔物かが暴れだしたらどうしてくるんだ!」


「大丈夫です。動きませんから。なので、よろしくお願いします。」


「嫌だね!!!」


「ケチ!!!ケチ!ケチ!デブ!」


態度の悪いオジサンに向かってコウが舌を出して抵抗をしていたが完全に無視だ。


てゆうか、最後のは悪口じゃないか!!


困った・・・・・・・


オジサンは腕を組んでそっぽを向いてしまった。


預けれないか・・・・・


これは暖かいご飯にはありつけそうにないな。


アリアスが不貞腐れるな・・・・


見張りを残して昼もパンとか屋台の物で済ますか・・・・


「わかりました。では預けるのは諦めます。その代わり、見張り番を置くので一時的に場所だけ貸してください。もちろんお金は払います。」


「んぁ?・・・・・・あーーー場所だけだぞ!暴れたりしたら200万ダイトは貰うからな!」


高っ!!!


まぁいいか、鍵は抜いて行くし問題ないだろう。


承諾してお金を渡すと停める場所へ案内してくれた。

そのまま駐車すると手続きや支払を済ませた俺たちは《ガンドーベル》の見張り番を決めるため、アリアス達の乗る荷台に向かった・・・・・


それにしても静か過ぎる・・・・・


「兄ちゃん・・・・ヤバイんじゃね?」


荷台に近づくに連れ、歩みが段々と不安な足取りへと変わって行くのが分かった。


ドアに手を掛けて恐る恐るゆっくりと開ける・・・・


荷台の情景に頭の中で仏壇の鐘の音が響き渡った。


「おい!アリアス!!大丈夫か!!?」


ベルトに体重を預けて俯いているアリアスを揺さぶると、何かを思い出したかの様に目を見開き、目にも止まらぬスピードでベルトを外して馬屋の影に走り出した。


向かいではコウに起こされたナタリーも目を覚ますと同じように走り出し馬屋の影に消えていった・・・・・


これは到着しても使い物にならんかもしれんな・・・・


「ルーイ!ルーイ!」


「・・・・・んにぁ?旦那、どうしたんだ?」


寝てるだけかよ!!

そういえばこいつは徹夜続きだったなぁ・・・・


「《キグナル》に着いたぞ。」


「もう着いたのか!!旦那!成功だな!!何の問題もないか?」


「その事なんだが・・・・」


アリアスとナタリーが青を通り越した白い顔でトボトボとふらつきながら戻って来た。


「ああだ。どうやら今の板バネの数では振動を抑えきれなかったようだ。板バネを増やせるか?」


「そうか・・・・・・おし!まかせな!!」


ルーイは一眠りして回復したのか、あるのかないのか分からない胸を叩くと荷台の下に潜り込んでいった。


戻ってきたアリアスとナタリーに馬屋の状況を説明すると二人共、少し休みたいと見張り番を買って出てくれた。

案内は誰がするんだよ・・・・・


「ルーイ、すまないが俺と買い物に行ってくれないか?」


「板バネはいいのか?」


「戻ったら一緒に調整しよう。二人があの状態だから仕方ない。」


「しゃーねーなー!俺に任せな!!」


丁度いい。買い物の帰りに預かった手紙も渡しておこう。


俺とルーイは3人を残して《キグナル》へと買い物に出かけた。

次回1月14日

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