30話「信じてくれる人が周りにいる時って勇気がでるよね!」
「押すね〜兄ちゃん!」
「アキラ殿・・・・流石にそれは・・・・」
「・・・・・・」
「そうです!魔学師殿は魔人を増やすおつもりか!!?」
予想はしていたがカルマンさんに凄い勢いで怒られた・・・
エリオットとルーイもカルマンの発言に顔色を変えた。
まぁそうなるよな。
「そうでありません。カルマンさん、今回の件・・・いや魔人化と言うのは、おかしいとは思わないですか?」
カルマンさんもエリオットも何のことか分からないとでも言いそうな表情だ。
「3人にも聞きたい。なんか変だとは思わないのか?俺はハステルの件から不思議に思っていたんだ。何故魔人が生まれるのかを。」
カルマンさんは頭を抑えて溜息を吐くと
「魔素の過剰摂取だろう。それは既に各国の周知の事実だ!」
常識ってやつね・・・・
その場にいる中でもカルマンさんが一番反対のようだ。
この際、皆に俺の考えを聞いておいてもらいたい。
魔素の謎を解くと決めたんだ。魔人化の研究は通らなければならない道。
俺はカルマンさんと目線を合わせて離さずに疑問を投げかけた。
「では《ダリル》のような魔素の低い状況の街ではいざ知らず、王都やここベラデイルでは魔人化が後をたたないのでは?」
「・・・・・・それは皆が節度を保ち生活しているからであろう。」
「食べ物の魔素量なんて見えないのに、限界なんてわかるのですか?そもそも、ビートのように産地によって魔素が少ないものも存在する。それが何処の植物を食べたか分からない肉になれば尚更わからないでしょ?飲食店での食事なら余計に使っている食材の魔素量がわからない。カルマンさんは何か食べるときに『この料理の魔素量はどれぐらいだ?』って聞いているのですか?そんなもの店員に聞いても分からないでしょ?」
「それはそうだが・・・・」
「それに今回の件。確実に人為的に魔人化を促していた・・・・あの干し肉、《魔装の肉》を研究すれば、魔人化の謎が解けると考えているんです。そして魔人化の工程が分かれば治療も可能ではないかと俺は思っています。」
部屋全体に沈黙が流れた。
やはりそれでもダメか・・・・
危険なのは分かっている。誤って食べたらアウトだ。俺達は食べることはないが、魔人が生まれる可能性を持ち歩くのはマズイ。
諦めてソファに持たれながら天井を見上げたその時、沈黙は破られた。
「わ、私はアキラさんを信じます!・・・・多分アキラさんにしか出来ないと思うんです!アキラさんの魔法は特別です!多分、いや絶対に魔人化を解く方法を見つけ出してくれると思うんです!責任は私が持ちます!なのでアキラさんに渡してはいただけないでしょうか?」
アリアス・・・・・
「さっきから聞いてても何のことか分かんねぇーけどさ。聖女さんがこう言ってるんならマジなんじゃねぇの?」
今まで黙っていたルーイまでもが味方してくれたことに目頭が少し熱くなった。
堪らなくなってきてアリアスとルーイから目線を逸らすと横でコウがニマニマしながら俺を見ていた。
「兄ちゃん、アリアスちゃんもルーイちゃんも可愛いね!」
真っ赤になったアリアスが俯いたのを見て俺も顔が熱くなってきた・・・・
ナタリーが目をひん剥いてコウを見たが、すぐに腕を組み微笑んでいだ。
「俺からも頼むよ!エリオットちゃん!兄ちゃんならマジでなんとか出来ると思うよ!」
コウが笑いながらエリオットの肩を叩いた。
エリオットは曇っていた表情をガラリと変えて晴天のような笑顔で微笑んだ。
「わかりました!魔学師に託します!」
「領主様!!?」
エリオットはカルマンを手をかざして抑えると
「私も信じてみたくなりました。聖女が認めた魔学師を。それに私達が持っていても何も生みませんよ!警備費用がかかっちゃいますしね〜」
そう言って手でお金のジェスチャーをしてみせた。
やった!やったぞ!ありがとうみんな!!
腹の奥から叫びたくなるような気持ちが湧き上がってきた。
誰かに信じて貰える。
こんなに嬉しいものなんだな・・・・
「ただし!!!」
なっ!なんだ!!?交換条件!?
確かに、頼み事を聞いてもらうと言うことは弱みとなる・・・・・・
なんだ!?何か望みだ?場合によっては諦めざるを得ないか・・・・・
「アリアス様がご所望のパン屋に『聖女御用達』の許可をくださいね!」
「はい!喜んで!!!」
アリアスの弾けるような笑顔が部屋いっぱいに煌めいたように見えた・・・・・
確かに可愛いね・・・・・・
次回12月17日




