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29話「束ねる人がいい人なら、多分その町はいい町になっていくんだと思う」

「ギエール警ら隊カルマン・ギエールです。《ワンド》御一行をお連れいたしました。」


豪華な飾りの扉に通され中に入るとそこには大きな窓から入る逆光で大きな机に座る細身シルエットが浮かび上がっていた。


「右からが《ワンド》第三部隊 副隊長アリアス・グラディル、同じく《ワンド》第三部隊 副隊長補佐ナタリー・コーウェン。そしてこちらの双聖が『異界の戦士』《モガミ コウ》と『異界の魔学師』《モガミ アキラ》そして『魔学師』の従者ルーイ・ローリーです。」


なんか二つ名って恥ずかしいね・・・・・

っておい!!!???アリアスは副隊長なのか!?

ナタリーより階級が上とか信じられん・・・・


驚いた顔でアリアスを見ると赤面してモジモジしていた。


「急ぎ旅なのにすいません!事情はカルマンからざっくりと聞きました。まぁそこに座ってください!」


俺たちが扉と大きな机の間にあるソファーに腰を下ろすと、細身の影が席を立ちゆっくり近づいてきた。

品のある足音だ。ヅカヅカとあまり音も立てず、だからと言って遅くない。

大きな机の前まで出てくると、ようやく容姿が見えてきた。


金髪のくせっ毛に青い瞳、細身の身体と鼻筋の通った顔は中性的といっていい。

年齢は分かりにくいがカルマンさんからの話では同じくらいの筈だ。

だが身長の低さが中学生のように見える。

袖口がインクで汚れた真っ白なシャツに金の刺繍の入ったベスト。生地の良さそうなズボンには飾りもない。


決して悪い印象は感じない・・・・・・


「初めまして。私が《ベラデイル領主》《エリオット・ライン・ベラデイル》です。《聖女アリアス》様と《独剣のナタリー》様!お会いできて光栄です!《ワンド》のお二人はご存知かと思いますが侯爵の地位を頂いております。」


礼儀正しい青年に思わずこちらも立ち上がり頭を下げた。


こいつ以外は・・・・


「侯爵ってどんぐらい偉いの?」


「いいから頭を下げろ!」


コウの頭を押さえつけると向かいのソファーに座ったベラデイル卿は声をあげて笑い始めた。


「はっはっはっはっは・・・・・・そうですよね!『異界』から来られたのですものね!そうですね〜上から数えると3番目くらいですかね!まぁ爵位としてですが。お二人のお話は何度も繰り返し聞かせていただきました!お強いんですね!私のことは《エリオット》でいいですよ!」


「侯爵様・・・・それは・・・・」


「いいのですカルマン!二人はこちらの地位に縛られてないのですから!」


弾けるような笑顔が眩しい。こりゃ根っからのイケメンだ・・・・

すると急に真面目な顔になり話を続けた。


「この度の件、巻き込んでしまい誠に申し訳ありません。《ワンド》のお二方もお手間をかけて申し訳ありません。それも《聖女アリアス》と《独剣のナタリー》のお手を煩わせたとなれば私も何かしなくてはなりませんね。」


「アリアスちゃんもナタリーもそんなに偉いの!?」


こいつ・・・・・

だが気になるな・・・・名が知れ渡っっているのは理解したが自重してるのか、その件は曖昧にされたままだからな。


「先の戦のお話はされていらっしゃらないのですか?」


「は、はい。戦争は誇れることではありませんので・・・・」


エリオットがアリアスに目線を向けるとアリアスは少し悲しそうな目で答えていた。


「そんなことはありません!・・・・では私からご説明しても?」


「構いません・・・・」「私もだ。遅かれ早かれ聞くことになる。」


アリアスもナタリーも俯いてしまった。


「5年前の戦。かなり大きな戦いでした・・・・・・・連合国軍総勢60万。勇者軍20万。勇者討伐のため6国の首脳が集まり、連合軍での殲滅線を行うことになったのです。」


聞いたことがないくらいの規模の戦いだな・・・・


「あちらは人・魔入りみだれる烏合の衆。それに数で勝っていた6国連合。戦いの結果は一方的と思われていました。ですが連合も一枚岩ではありませんでした。前魔王の統制をそのまま引き継いだ勇者軍はかなりの連携を見せ、近隣の2国をあっという間に陥落してしまいました。それを見た残りの2国は自らの国の防衛のみに徹してしまい、防衛線を余儀なくされてしまいました。」


自国可愛さか・・・・・


「その大戦で援軍を失った《ミストラル王国》兵の戦場は荒れに荒れてしまったのです。統制は乱れ、徐々に怪我人が多くなっていき、もうダメなのではないか。そう思った時に現れたのが《ワンド》です。そこで怪我人を治癒したのが《聖女アリアス》なのです!戦場は優しい光に包まれ、その場にいた怪我人は瞬く間に回復し、おかげで戦意は戻り押し戻すことができたのです。私もあの戦場にいたのですが、あの光は忘れることができません!」


「アリアスちゃんスゲーじゃん!!!!」


「そのあと私は倒れてしまい。ずっとナタリーに守ってもらっていました・・・・起きた時には治癒したはずの方の亡骸の山・・・・力の無さを痛感した日です・・・・誇れるものでもなんでもありません・・・・」


そうか・・・・・だから言わなかったのか・・・・・

アリアスとナタリーは見せたことのない悲しい目で床の大理石を見つめていた。


「いえ、あなたワンドがいなければ《ミストラル王国》は無くなっていたかもしれません!そんな英雄に領地の問題を解決してもらうなんて頭が上がりません!・・・・・っあ!話が長くなってしまいましたね・・・・そうです!だから何かさせてはいただけませんか?」


エリオットはアリアスの様子に気づくと立ち上がり、話を移した。


褒美はありがたい。だがその前に憂いは無くしておきたい・・・・


「エリオットさん、その前に1つ聞いてもよろしいですか?」


「エリオットでいいですよ!なんですか?」


「ではエリオット。今回の件、《ダリル》の方々の処罰をお伺いしたい。」


下を向いていた二人もコウも俺の言葉でエリオットに目線を向けた。


「はて、罪人などいないのでは?まぁ街道に寝てた方々は安全の為、保護しましたがね!ねぇ?カルマン?」


「はい、その通りでございます。」


「まぁ焼けた《ダリル》の修復は手伝ってもらうけどね!」


エリオットは両手を顔の横に上げて舌を出して見せた。

こいつ・・・・・・粋だな!!!


ガチガチに緊張してるルーイ以外の3人はエリオットの言葉を聞くなり顔を見合せて破顔した。


「寛大なご処置ありがとうございます。」


「では何がいいですか?まぁできる範囲ですがね!」


エリオットがニコッと笑うと紅茶を一口含んだ。

何かイケメン過ぎて逆に怪しくなってきたぞ!


「はい!はい!はーい!この街の研ぎ師に剣を研いほしい!」


コウが立ち上がって手を上げた。

エリオットはコウを見て目を見開いてたが、直ぐ笑い始めた。


「はっはっはっはっは!!か、カルマン!大丈夫?」


「可能です。」


「やったぜ!!!2本いい?」


「可能です。」


コウはテンションが上がりすぎて立ち上がってガッツポーズを取っていた。横のナタリーは笑みを殺すのに必死だ。


「アリアスちゃんは?」


アリアスはいつになく真剣な顔で・・・・・


「パンをください!!!いっぱいです!いっぱい!!」


食いしん坊バンザイ!

もっといいものあるだろう!?


「はっはっはっはっはっ!ひっぐ!はっはっはっはっはっ!いいです・・・・いいですよ!はっはっはっはっはっ・・・・」


エリオットがウケすぎてヒクついている・・・・


「兄ちゃんは?」


「《ダリル》の人が持ってる干し肉を。」


エリオットとルーイ以外の4人は凍りついたかのように動きも音も止まってしまった・・・・・・

次回12月14日

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