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27話「肉球の魅力は世界を支配してるよね?」

「おい、ふざけてんのか?獣人だからって奴隷じゃねーんだぞ!!」


「誤解です!多分、アキラさんはそんなつもり無いと思います!」


猫人がブチ切れて殴りかかって来るのをどうにか躱し、俺はアリアスの言葉で本人へ誤解が生じているのに気づいた。


「待て!そういう事ではない!雇うと言っている!」


「アホか!?お前に雇われて好きに魔道具を触れないくらいなら死んだほうがましだ!!」


「じゃあ死ね。」


「うるせぇ!クソジジイ!!」


困ったなぁ・・・・

この人材が欲しいのだが、そんな口説き文句は持ち合わせていない。

困ってアリアスを見ると、アリアスも何時もの困り顔が、より困っていた。


「獣人さんを雇ってどうするつもりなんですか?」


「作ってもらいたい物がある・・・いや、それだけでなく、今後思いついた物を形にしたいんだ。技術流出は絶対に避けたい。だからこそ専属がいい。」


猫人は少し興味が出たようで、爪をしまい攻撃体勢を止めた。


「・・・・・何か作りたいんだ?」


犬人の眉が動いた。

それを見た俺は犬人に聞こえないように猫人の耳に、今一番作りたい物をと雇用条件を囁いた。

アイディアだけでも漏れたら不味い。


「ふざけっ・・・・・・」


俺の囁きが終わると猫人は顎に手を当てて悩みはじめてしまった。

やっぱり給金無しは駄目か。


だが猫人の表情は不敵な笑みへと変わり・・・・


「これ以外にもあるのか?」


「ああ、勿論!大量にな。」


暫くの沈黙の後、猫人は犬人に向かって頭を下げた。


「俺は乗った!!俺は《ルーイ》てんだ!ヨロシクな旦那!!ロイのオッサン、今まで世話になりました!!今日までの給金は盾の謝罪にまわしてくれ!」


「えーーー!!!本当にアキラさんに雇われるのですか!?」


「好きにしろ!!!」


ルーイは胸を拳で叩きながらドヤ顔をして握手を求めてきたので、こちらも握り返した。

肉球がキモチいい・・・・


アリアスは今にもアワアワと言いそうな具合だ。

犬人に至っては大きな音をたてて店の中に入ってしまった。


「本当に大丈夫なんですか?お給金とか出せないんじゃないんですか?」


「うん、出せない!それでいいんだよな?」


「ああ!3食昼寝付き!魔道具作製の時にはしっかり働く!掛け持ち仕事はいいけど、技術は流さないようにする!それより早くさっきの魔道具案を聞かせてくれよ!!ワクワクして止まらねー!」


「まぁ待て待て。いったん薬屋に・・・・」


再び魔道具屋の扉が開いて犬人・・・いや、ロイさんが出てきた。


「なんだよ!まだ何かあんのか?!」


ルーイがロイさんに食って掛かるが、ロイさんは無言でカバンをルーイに向けて差し出した。


「お前の荷物と道具だ。要らんから持っていけ。」


「お、おう。ありがとう・・・・」


「・・・・・・・」


荷物を渡すとロイさんはそのまま店に入っていった。


「っで、こっからどうするんだ旦那?」


小さなリュックを背負うとルーイが俺の前で手を振った。気づいて視線を動かすとルーイは笑いながら立っていた。


ロイさんの背中が何故かとても寂しそうだったので、つい目で追ってしまった・・・・

本当に良かったのか・・・・・?


俺は今後の予定をルーイに話すと薬屋で買い物を済ませ店を出た。

作成してもらう魔道具の材料はこちら持ちになるので、金の無い俺は材料を得るためにルーイが教えてくれた廃材置き場に案内してもらうことにした。


「仲間が増えて良かったですね!二人共きっと驚きますね!」


だろうな。コウに至っては・・・・いや、考えるのをやめておこう。


ルーイの後ろを歩きながら、ふと気になった事をアリアスに聞いてみることにした。


「なぁアリアス。獣人ってのは親とは離れて暮らすのか?」


「・・・・・獣人さん達は5年前の大きな戦闘で散り散りになってしまった方が多いのです。獣人さんの住む地域が戦場の間にあって・・・・・その為、孤児も多く奴隷として取引される事が多いんです・・・・・」


そうか。だからルーイは怒ったんだ・・・・

そうなれば誤解も生みやすいよな・・・・

後で謝っておこう。


「着いたぞー!」


使えそうな廃材を集め終わると、俺たちは荷車を借りて兵舎まで戻り、荷物を置くことにした。


廃材だけあって良いものではないが、なんとかギリギリ足りるくらいは集まった。

これくらいあれば上出来だろう!


兵舎に到着するとアリアスが廃材を置く許可を取りに行ってくれたので俺たちは荷車を背に待つことにした。

ガヤガヤとした喧騒が元の世界のようで心地良い・・・・・


「旦那たちは新しい兵士なのか?」


想いに浸っているとルーイが首をかしげて聞いてきた。


「いや、今日はここに泊まらせてもらうだけだ。」


「兵士じゃないのに?」


「ああ、明日は領主との謁見があるからな」


「にゃ!にゃあんと!!!!!????」


「ップ!」


こいつビックリすると猫になるんだな。

ということは、やっぱり素は猫なのか?


ルーイは目を白黒させながら後ずさっていた。

そういえば俺たちの素性を話してなかったな。

自分で言うのもなんだが、コイツよく付いてきたな。


「アキラさーん!許可がおりましたー!!」


アリアスが兵舎から出てきて、こちらに手を振りながら走って来た。俺は手を振り返しながら


「俺はアキラ。訳あって《時の魔女》に会うために旅をしている。これからよろしく頼む!・・・・・そしてこの子がアリアス。《ワンド》の《聖女アリアス》だ。」


「・・・・にゃ・・にゃ・・・にゃ!にゃあんとーーーーー!!!!!!???????」


「ほぇ?!!」


ルーイの叫びにアリアスがビックリして変なポーズで固まってしまっていた。

次回12月1日

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