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24話「今ある喜びを大切にしなきゃ前に進めない」

「アキラさん!!」「アキラ殿!!」


倒れたアキラさんの所まで駆け寄るとアキラさん寝息をたてていました。


「多分、兄ちゃん昨日も寝てなかったんだね。」


よかったぁ・・・・

本当に良かったです!ずっと不安だったんですよ!

起きたら少し意地悪しちゃうかと思います!


コウさんがアキラさんを背負うと、カルマンさんの方へ歩き出しました。


「こ、コウ様は大丈夫なのですか?」


ナタリーがボロボロになったコウさんを見てしどろもどろになっています。

深くはないですが、たしかに傷が結構目立ちます。


「あー、これくらい大丈夫!親父との鍛錬の方がキツいくらい!」


コウさんは笑っていましたが、放って置くと跡が残ります。あとで治さなきゃ!


それにしてもコウさんの投げたナイフの威力・・・


言われたとおり全力でウォルターバリル(水弾)を出していて正解でした・・・・


ナイフを投げただけ・・・・

それだけなのに、あの爆音は一体何だったのでしょう・・・・そしてあの紅い湯気のようなもの・・・


「あ、ありがとう。助かった『異界の戦士』殿。あのまま戦っていれば悲惨な状況になっていただろう。」


ベラデイル兵の野営に着くとカルマンさんの方からコウさんに声をかけられました。

ただ何かコウさんを怖がっているようです・・・・


「スティング・・・・・スティングとゆう奴はいるのか?」


コウさんは先程の調子とは打って変わった低く重い声色で話されたかと思うと、コウさんから、また、紅い湯気が出ていました。

今にも飛びかかりそうな目でカルマンさんを睨んでいたんです!

私は慌ててカルマンさんとの間に入ると、あの後聞いた事を話しました。


「スティングはいませんでした!その名前の兵士すら存在しなかったんです!ナタリーにも面通ししてもらいましたがいませんでした!だから落ち着いてください!」


「・・・・・そっか!ごめん!」


コウさんがいつもの様に笑顔をつくると私もナタリーも力が抜けてしまいました・・・

スゴい威圧感です・・・・少し泣きそうになりました・・・・


あ!そうです!あの件!


「すいません!これは私の想像なのですが、今回の件はヘンリーの仕業かもしれません。」


「なに!?」「マジか!?」


コウさんとナタリーが目を見開き驚くのをそのままにして続けました。


「ヘンリーの《ダリル》に来た時期、往来の商人と狩人の失踪。ベラデイル兵さん達の出兵の内容の情報操作。タイミングが良すぎます!恐らく、狩人を失踪させ、いや消して魔物を溢れさせ、往来の商人から商品を奪い、《ダリル》反乱討伐の情報を流す・・・・そして最後の詰めとしてスティング・・・・こういうことではないでしょうか?」


「っクソ!!アイツ!!!そういえばスティングの仲間も名前を口にしてた!マジで許さねぇ!!」


「確かに辻褄が合うな・・・・」


「恐らく、こう言った一件はここだけではないかもしれません・・・」


コウさんもナタリーも考え込むように押し黙ってしまいました・・・


するとカルマンさんがーーーー


「ちょっといいか?内容は私も理解した。その件をベラデイル卿に話してはもらえないだろうか?勿論今回の件も含めて。何しろ目撃者が多すぎるのだ。ダリルの者達を庇いきれん・・・・犯人がそのヘンリーであるとしても今回の件で魔人になった者の仲間は捕らえさせてもらうことになる。報告が情状酌量の糧となるように取り図らせてもらう。」


「わかりました。行きます!いいですか・・・?」


「お!流石アリアスちゃん!わかってるねー!」


「どうせ通り道だ。そうしよう。」


皆が納得してくれたのでホッとしました・・・・


「では一旦、一小隊に護送は任せて《ダリル》へ向かうとしよう。我らの任は終わってないからな。荷物を纏めたら討伐に向かい、任務終了と同時にベラデイルへ案内させてもらう。」


カルマンさんが優しい笑顔で微笑んでくれるとアキラさんの為に馬車を一台貸してくれるように手配してくれました。


良かったですね!アキラさん!グッスリ寝てください!!




ーーーーーーーーーーーーーーーーー





目が覚めると俺は何故か、温かいベッドに寝ていた。


横ではアリアスが寝言を言いながら寝ていた。

ヘルマンさんの家か・・・・・


正直起きたくない。

ベントレイさんは亡くなり、町民の男性を2人も・・・いや3人か・・・手にかけてしまった。


俺はアリアスを起こさないようにゆっくり起き上がるとベッド端に座り、寝癖を直した。


あれからの記憶が無い。ヘルマンさんの家のベッドに寝ていると言うことは《ダリル》に帰ったのか・・・・


ベントレイさん・・・・


俺は石のように重い腰を上げて扉に向かうと音を立てないように部屋を出た。

歩む速度が遅くなる・・・・・

謝ってもどうにもならない事だから・・・・

帰ってはこないから・・・・・


意を決してリビングの扉を開けるとヘルマンさんが奥さんとリリーと抱き合っていた。


「あ!すいません!アキラさん!」


ヘルマンさんは涙で真っ赤になった目を擦ると俺に向き直り、家族三人で頭を深くさげた。


「ありがとうございます!お陰でリリーも回復してきました!親父のことも助けようとしてくださりありがとうございます!町の者もご一行様への感謝の念でいっぱいです!」


いや、感謝されるような結果になっていない・・・・

ベントレイさんを助け切れず、ましてや魔人となったとはいえ町人の男性を手にかけることになったんだ・・・・・


「皆さん。頭を上げてください。俺は何も出来ませんでした。ベントレイさんの事を助けれなくて本当にすいません・・・・」


「ううん!本当にありがとうございます!治らないと思ってたの・・・・でもね!アキラ兄ちゃんのお陰で元気になったよ!」


最初の声より数段元気そうなリリーの声がリビングに響き渡った。

ヘルマンさんはリリーの頭を撫でながら微笑むとーー


「親父は皆さんがいなければ反乱分子として処分されていたでしょう。魔人になってしまった三人も、もう元の生活には戻れなかったんです。だから暗く考えないでください。リリーも良くなったんです。親父も絶対笑ってます!多分、アキラさんはこれからもっと困った人を助けれると思うんです。だから前を向いてください!これから出会う人のために。」


「・・・・ありがとう・・・ございます・・・・」

目の奥から熱いものがこみ上げてきた・・・


救われた気がした・・・・


無くしたものを省みるより守れたものに感謝するということか・・・・


だが決して良い結果とはいえない。


だから、俺は決めた。

もう同じようなことは見過ごさない。

多分見過ごしたら今より後悔すると思う。


魔法・魔物・魔人化。

魔素が密接に関わった異世界の理論。


魔素量がなく治癒されない者、魔人化してしまう者、巻き込まれて傷つく者・・・・

こんなことがもう起こらないようになってほしい・・・・

俺の手の中で消えてゆく命が、そう思わしてくれた。


だから、俺は決めたよ。


元の世界で決め切れなかった俺の専攻。






魔素を解き明かす。







次回11月19日

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