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21話「発芽は止めれないが摘むことはできると思う」

俺とヘルマンはどうにか最悪の事態を避けようと急いで馬小屋に辿り着いいた。だがそこは既にもぬけの殻。

俺とヘルマンは馬小屋から続く足跡を辿り、森を抜け丘にたどり着いたのだった。


「兄ちゃん!!」「アキラ殿!!」


「ヘルマン!?何故来た!?」


あのデカい爺さんがベントレイか。

よかった!間に合った!・・・あれ?


「アリアスはどうした?」


「ちょうど今さっき、ベラデイル兵に交渉に行ったよ!」


そうか、なら一段落だな!

俺は静まる集団の中を突き抜けるように歩くと、コウとナタリーの前で足を止めて皆に聞こえるように町の現状を伝えることにした。


「皆さん!病気の原因が判明し、薬を作成いたしました!病気の皆さんに飲んでもらえるように手配しています!これでもう大丈夫です!ここは一旦引いて頂けませんか?」


「親父!ここは戻ろう!アキラさんがこれからの対処方法も教えてくれた。町の皆も不安がっている。頼む!無謀な事はやめてくれ!」


ヘルマンが地面に膝をついて土下座をすると、ベントレイの周りの男達から動揺がみれた。


するとベントレイが俺の前まできて、年期の入ったドスの効いた声でーー


「アキラとか言ったな小僧。本当に大丈夫なのか?もう起きないのか?」


俺はベントレイの目をじっと見て目線を外すことなく頷いた。


「ああ、病気の原因は動物由来の栄養素の不足だ。既に病気の人達には、その栄養を固めた薬を飲んでもらうようにしている。他の人達もこのままでは同じ病気になりかねないので、必要な栄養を含んだ手に入りやすい食材を伝えてある。」


ベントレイは目を閉じると腕組みをし、暫く沈黙していた。

すると少し口端を上げて見せ、男達のもとに歩きだした。


よかった・・・・これで一見落着だな。

顔を上げたヘルマンと目が合うと二人とも微笑みが溢れた。

その頃には眩しいくらいの朝日がゆっくり周りを照らし始めていた。


アリアスは大丈夫かな?早く迎えに・・・・・


「うるぁ!!!!」


突然ベントレイが口から紅い液体を吹き出していた。

見ると、ベントレイの目の前にいた男に朝日に照らされた鮮血が吹きかけられた。


「ぐがぁ!!」


背中から装飾の施された剣が背中から胸を貫いていた。

ベントレイはその場に膝から崩れ落ち、その反動で剣が抜けてしまい血が流れ出した。


「「誰だぁぁぁぁああ!!!!!」」


コウもナタリーも思わず叫び、剣が飛んできた後ろを振り向いた。

そこにはニヤニヤしながら投げた姿勢ののままの男と、その後ろで笑っている2人の男が立っていた。


「あったりー!な?剣投げるの得意っつたろ?」

金髪の頬に傷のある男


「当らなかったらどうするんだよ。」

茶褐色の長髪、高身長の美系の男


「ウマイ!ウマイ!」

身長の低い頭の悪そうな歯の抜けたモヒカンの男


金髪の男が投げたのだと理解した時には、既にコウが剣を抜き走り出していた。

コウの体から見たことのない紅い湯気のようなものが立ち上がっている・・・・


俺も振り向きはしたが直ぐにベントレイに駆け寄り治療魔法を開始した。

マズい・・・効きが悪い・・・

覚えたての回復魔法は町の人にかけた時と同じように傷口の反応が鈍い。


「町長!!!」


「あの鎧、ベラデイル兵か!!??」


「よくもベントレイさんを!!」


「やっぱり許せねぇ!!!」


男達は倒れたベントレイの側に駆け寄ってきていたが、鎧の3人を見てどんどん顔が憎しみで歪んでいる。

これはもうどうしようもないじゃないか。

彼等にとっての敵がリーダーを攻撃した。止めれない・・・もう止まらない。


「うぉらぁぁぁ!!!」


「うぉわ!!!あぶねー!これ危ねー!」


コウの剣がベントレイに剣を投げた金髪の男の鎧を掠めると男の鎧が抉れて剣筋と同じ穴が開いている。


「スティング!そいつは多分ヘンリーの言ってた『異界の戦士』だ!」


長髪の男が剣を抜くのと同時にナタリーの剣が襲いかかる。


「この外道がぁ!!」


金属のぶつかる音が響き渡り男が距離を取ったが、ナタリーは直ぐに二撃、三撃と繰り出し、高身長の男もギリギリで受けている。


「そんなもん相手にするつもりねぇよ!こりゃまともに交えると剣ごと持ってかれる!ジズ、ダル、帰るぞ!」


言葉と同時にスティングが後ろ飛びで距離を取ろうとしたところにコウの放った二撃目がスティングに向かった。


「待てぇ!!!」


すんでで剣は当たらなかったがスティングは剣から放たれた衝撃波で背中から転がり高身長の男の後ろで起き上がった。


「な?ヤベーだろ?」


「ナニアレ!?コワイ!オレモカエル!」


「な?じゃない!引くぞ!」


鎧の男たちはそのまま一気に丘を降り森に消えていった。


「コウ様!森は危険です!追っては駄目です!」


「くっ!!」


ナタリーが怒りで周りが見えなくなっていたコウを止めて、俺の方に駆け寄ってきた。

コウはその場に立ち止まり唇を噛むと剣を握りしめながら俯いて震えていた。


「アキラ殿!ベントレイは?」


まだ傷が塞がらない。

俺はずっと無言で臓器の傷が治り血管が繋がるイメージに集中していた。

絶対に助けなくては・・・・この後のことが容易に想像できてしまう・・・・


「親父!!」「ベントレイさん!」「町長!!」


胸に開いた傷から段々血が出てこなくなっている・・・・


「アキラ・・・・すまんな・・・もう少し町で耐えることが出来たら・・・皆を・・・・」


「喋るな!!」



「・・・・ヘルマン・・・・頼・・・んだ・・・・」



顔色が青から白・・・・・そして土色にかわっていく・・・・


冷めていく体温・・・・・


そしてベントレイは息を引き取った・・・・・


「うぉああぁぁぁ!!!!!」


「ベラデイルを潰す!!!!!!」


「ベントレイさんの敵を!!!!」


男達は怒りに震えて農具を強く握ると丘を降りて行った。


何もできず何も解決できなかった・・・・

人生で経験することのなんかないと思っていた・・・・

手の中で初めて人が死んでいく・・・・


俺は無我夢中で心臓マッサージを繰り返していた、


知らない人だ・・・・


そう、関わりなんてなかった知らない人・・・・


「・・・ちゃん!!」


「兄ちゃん!!!!」


聞き慣れた声に我に帰り声の元を向くと、そこには涙を流したコウがいた。


「兄ちゃん!追うよ!!絶対に止めないと!!」


「アキラさん。ありがとうございます・・・親父は俺が・・・・」


涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったヘルマンが俺を押しのけてベントレイを抱きかかえた。


「兄ちゃん。追うよ!まだ終わってない!」


そうか・・・・まだ終わってないな・・・・追わないと。


コウに手を引っ張られ立ち上がると服が血だらけだった。


「アキラ殿行きましょう!!」


ありがとうコウ、ナタリー。そしてごめんなさい。ヘルマンさん・・・・ベントレイさん・・・・・


「ああ・・・止める。これで終わらせない・・・・終わらせれない!!」




次回11月9日

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