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20話「時には自己中にならなきゃ状況は変わらない」

「灯りを消せ!」


馬小屋から街道を挟んだ先にある森を抜けて、私達とベントレイさん達は小高い丘の上に到着していました。

右手に馬小屋、丘の下には森が街道との間に広がっています。ここから見ると、この丘と森を避けるように街道を作ったようですね。


ベラデイル方面の街道を見ると遠くに鎧を纏った100人前後の野営が見えました。


「あんな分かり易い所で野営とは舐められたもんだな・・・」


ベントレイさんは白い口髭を撫でながら野営を睨んでいます。


「駄目です!ベントレイさん!20人そこらで訓練された兵士には勝てません!ここは私達が行って話をしますから待っていてもらえませんか?」


道中の説得にも聞く耳は持って貰えずここまて来てしまいました。もう間に入るしかありません。どうにかここで両者とも下ってもらうしかありません。

ただ私達ワンドも国家に認められてはいるももの私兵でしかありません。

話が通るかどうか・・・・


いえ!弱気ではいけませんね!諦めちゃ駄目です!


「話し合いで済むならもう折り合いがついてるはずだ!俺達は買ってベラデイルの体制を変えてやるんだ!じゃなきゃ貴族共しか医者の治療が受けられない!」


男性の一人が強い眼差しで否定してきました。

その手には鉄製のスコップが強く握られています。


ベントレイさんはそれを見て私の肩に手を置き、優しく、でも悲しそうに・・・・


「アイツは嫁さんを無くしたんだ。嫁さんはアイツの幼馴染でな・・・あのスコップは嫁さんの墓を掘った物だ・・・・」


言葉の出せなくなってしまった私の肩を二度優しく叩くと皆さんの方へ歩いて行きました。


どういったらいいのでしょうか・・・・

一人ひとりに理由があって、決意を持ってここに来ています。

私があの人の立場だと考えたら・・・・・


「さぁ!皆の者!今が好機だ!この辺りなら地の利もある!」


「爺ちゃん!」


丘を下りようとした集団の前にコウさんが道を塞ぎーー


「それでも駄目だ!そんなの悪い事しか起きそうにない!一人ひとり事情はあると思う。でも俺は戦ってほしくない!勝手な言い分でいい!俺は力強くでも止める!俺はここで行かせて後悔したくない!」


コウさん!ありがとうございます!!

そうですよね!絶対止めないと!


「私もここでお前達を止めさせてもらう!アリアス!ベラデイル兵のもとへ!」


「はい!」


「行かせるか!!」


ベントレイさんのすぐ後ろの男性が私に向かい鍬を構えるとコウさんとナタリーも剣を抜き止めてくれました。


「行け!アリアス!頼んだ!」


「俺たちに任せて!大丈夫!誰も死なせない!」


行きます!絶対に止めます!


コウさんとナタリーを振り返ることなく私は野営地へと走り出しました。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おい!人影だ!!お、女?一応隊長に報告しろ!」


見回りをしていたのでしょう2人兵士が私を見つけると、そのうちの一人が大きな声で隊長さんを呼びに行きました。

私は走って来たので息が上がってしまって声が出ませんでした・・・・落ち着いて私!


「だれだ!?何かあったのか?」


体の大きな若いベラデイル兵が私に気づいて声を掛けてくれました。


「ハァ、ハァ・・・・・ダリル・・・反乱の鎮圧を・・・ハァ・・・やめてください!」


言えた!言えました!


「なんの事だ?それよりお前は何者だ?」


あ!名乗ってませんでした!

あれ?なんの事ってどう言うことでしょう?


「す、すいません!私は《時の魔女エスティナ》に遣える《ワンド》第三部隊所属アリアス・グラディルです!ダリルの反乱の鎮圧をやめていただきたく陳情に上がりました。部隊責任者にお目通り叶いませんでしょうか?」


「せ、聖女アリアス!!?承った!要件はよくわからんがカルマン隊長のもとへお連れする。ついてこい!」


よかった・・・どうにか隊長さんに会えそうです。


「《ワンド》第三部隊、聖女アリアス殿をお連れいたしました!」


野営の中央のテントに案内されると、中には銀の細工の入った青い鎧を纏ったベントレイさんより大きな体の黒髪短髪男性が地図を広げた机を前にどっしりと座っていました。


「初めまして、会えて光栄だ聖女アリアス。私がこの部隊を預かっているカルマンだ。要件が分からんのだが何用か?」


私が事情を話すとカルマンさんはとても不思議そうな顔をされ、ゆっくり立ち上がると側にあった水を汲んで渡してくれました。


「アリアス殿、すまないが我らの任はアリアス殿の言うそれではない。我らの任はダリル近辺のオーク狩りだ。ただ・・・反乱が起きているとなれば黙ってはおれんがな。」


「お水ありがとうございます!では鎮圧の派兵ではないのですね?」


「ああ、そうだ。去年から多くなっていたのは聞き及んでいたのだが、そこまで深刻ではないので見送っていた。ここにきて行き交う商人や狩人が減少していてな。調べてみるといなくなった者が多い事に気づいたのだ。半年前から《ダリル》の流行病の事もあり、ベラデイル卿がオーク討伐の命をくだされたのだ。流行病があるから《ダリル》に赴く予定はないがな」


「では医者の派遣の件についてはご存知ですか?」


「存じている。こちらとしても派遣はしたかったのだが街にいる医者は王族系貴族のお抱えでな・・・医者が病になっては困ると断られ続けている。なんの為の医者なのだかわからん。」


私は水を一口飲んで頭の中を整理する事にしました。

病で倒れる人々に失踪する商人や狩人・・・・


そうです!あの人の存在!絶対関わってます!


黙りこける私を言及するでもなくカルマンさんはじっと待っていてくれていました。


「カルマンさん!ヘンリーとゆう商人をご存知ですか?見た目は・・・・」


「隊長!!!緊急事態です!!!」


テントの外から悲鳴に似た驚く声が聞こえたのと同時に兵士の方が青褪めて入ってきました。


カルマンさんは机に立てかけられた剣をとると私に一礼して問いかけました。


「なんだ?オークの群れか?」


「いえ!!!ダリルの村人の反乱・・・・奇襲です!!!」


驚愕で土色になった顔色でカルマンさんと私はテントの外へ走り出しました。

次回11月5日

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