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19話「気をつけろ!だろう運転事故のもと!」

「はい、これを1日1つ無理してでも食べさせてください。」


俺はヘルマンの屋敷のリビングで調達した物資から作り出したキューブ状の固形物を渡した。

その名も《タンパク君固形仕様》!!


「こ、これをですか?」


ヘルマンは当然、疑いの目で見てきた。

まぁそうだろう。これで治るとは思わないよな。


「この街の皆さん、いや、特に今症状が出ている方はオークの発生で去年からあまり肉や魚を食べていないですよね?」


「は、はい・・・・ですが飢えることなく私たちは生活しています。肉や魚も手には入りにくいですが食べ物の不足はありません。それとなんの関係が?」


ヘルマンは渡した固形物には目をくれることなく、困った顔で俺の方を見ている。

んーどう噛み砕くかなー・・・・・


「えーっと、そのですね。肉や魚は生き物ですよね?ヘルマンさん、あなたも生き物だ。その生き物は何からできていると思いますか?」


「血と肉・・・ですか?」


「そうです!その血と肉は食べることで人の血と肉を作る素材になるんです。子供は成長をします。大人も垢がでますよね?この町の人たちはその素材が足りなくなっているんです。」


これでいいかな?我ながら結構噛み砕いたぞ!


ヘルマンは難しい顔で固形物に目をやると俺の言葉に返した。


「わかりました。よくわかりませんが毒でないのなら試す価値はありますね。」


むむむ!やっぱり理解までは無理か・・・

まぁ食べてくれさえすれば何とかなる!良しとしようではないか!


「ありがとうございます。ではこれがなくなる前に出来るだけ肉や魚の仕入を・・・・!?」


急にドアが開いたかと思うと、荷物を背負った30代くらいの男が転げながら入ってきた。


「オルステン!どうした?!」


「ヘルマンさん!!!!!ベラデイルが!!ベラデイル衛兵が動いた!!」


「なに!!!今どの辺だ!?」


汗をぬぐうことすら忘れて必死に叫んでいたオルステンにヘルマンは素早く駆け寄ると肩を貸して椅子に座らせた。


「俺がベラデイルから帰ってくる途中、2日前に動いたって聞いたから、小屋からあと1日もないと思う!」


クソ!クソ!クソ!なんてことだ!これではコウ達も不味い!巻き込まれてしまっては元も子もない!

頼むから手を出さないでくれ!


まてよ・・・・・何故ベラデイルに伝わるのがこんなに速いんだ?

いや、今はどうでもいい!早くコウ達に伝えないと!


「ヘルマンさん!コウ達のもとへ向います!!誰か案内をお願いします!!」


「わかりました!私が行きます!急ぎましょう!オルステン!馬はあるか!?」


「すまない、走ってきたんだ・・・・」


「ではアキラさん!すぐ出ましょう!今からなら夜には着きます。オルステン、これを病気の皆に1日1つ食わせてくれ!では行きましょう!」


どうにか間に合ってくれ!!頼む!!

俺とヘルマンは今持てるだけの荷物を持ってコウ達のもとに向かった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー





「静まれ!!それは出来るだけ使わないようにしなくてはならない!」


ベントレイの年齢からは想像できないような強い声で周りの男性達は口をつぐんでしまいました。


「爺ちゃん、ヘンリーって品の良さそうな黒い外套のおっさんか?」


ベントレイさんは目を見開いた後、目付きを鋭くしコウさんを睨むと、額に手を置くと語り始めました。


「そうだ。大体一年前のことだ。その頃からあの男は《ダリル》に顔を出し始めた。ヘンリーは商人で質のいい野菜を仕入れては《ダリル》で安く売ってくれていた。町の皆も気に入っていた。奴が持ってくる野菜は安くて良い物でな、町にくるとすぐ品切れになる程だ。お陰でオークの影響で狩りに行けなくても皆飢えることが無かった。本当に助かった。」


ヘンリーさんが人助け?勇者側の者が此方に手助けなんて聞いたことありません。


「そんな!あいつは!ヘンリーは勇者側の人間だぞ!」


「知っている」


コウさんは必死で叫んでいました。でもベントレイさんから返って来た言葉に私もナタリーも何も返せませんでした。


「あいつは町で商売をさせてほしいと儂のもとへ相談しに来た時に打ち明けたよ。『生きる金は欲しい、町の皆には損はさせない』とな。用心のため最初は儂が買い取ってやった。奴は変な素振りを見せることなく、質のいい野菜を仕入れては安く売ってくれた。だから勇者側とかではなく、あいつの事を信用したんだ。」


周りの男性たちも口々にヘンリーさんを褒めはじめました。

時間をかけて築いた信頼。

先程着た私達が何を言っても、この人たちはヘンリーさんへの信用を改めることはないのでしょう。

ですが、それでもベラデイルへの報復だけはやめさせないといけません!

この人数で戦いなんて、挑めば返り討ちに合うのは確実です!

ナタリーと目線が合い、同じ気持ちなのが分かりました。


「わかった。それはいい。だがベラデイル兵に勝てる訳がなかろう。その《魔装の肉》とやらが何かは知らんが、この人数のでは結果は目に見えている。大切な人を失くしたからと、自らの命も捨てるのは愚行だぞ。亡くなった者は皆に殺されることを望んではいないはずた。」


ナタリーは強く、でも優しい声でそこにいる皆に向けて伝えました。数名の方の顔が俯くのが見えましたがナタリーの言葉が響いていない方の方が多いようです・・・・


「いや、俺達は勝てる!この《魔装の肉》があれば俺たちは・・・・」


「町長!ベラデイルが!ベラデイル兵が近づいてきている!!!明日の昼には来るぞ!!」


「なに!?クソ!!!どうなってんだ!!!みんな!武器を持って外にでろ!」


突如走り込んできた男が外を指差し最悪の事態を告げてその場に伏せりました。


「爺ちゃん!!まだ間に合う!!町に帰ろう!!」


「そんなもんできるか!!ベラデイル兵が来た以上、帰れば儂らだけで済むまい!!やるぞ!!今なら奇襲もできる!気合を入れろ!!」


「「おおーーーー!!!!!」」


既にベラデイルが動いているなんて考えていませんでした・・・・

まだ間に合うと思っていました・・・・


「コウ様、アリアス、諦めるな!まだ止める機会はある!私とアリアスが《ワンド》として間に入ることもできる!ついていくぞ!」


「はい!!」


そうです!どうにかします!

諦めちゃだめですね!ありがとう!ナタリー!!




次回11月3日

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