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18話「心の奥の小さくても強い炎は周りも燃やす」

カーテンの隙間から眩しい光が注ぎ込まれ部屋がだんだんと明るくなってきた。

外からは鳥の囀りや人の声が小さく聴こえてくる。


徹夜後の朝は好きだ。静寂だった夜からゆっくりと心地よい雑音に包まれて空気が澄み渡り、日の光に輝く街が好きだった。

今日もちょっとした達成感に包まれて気持ちが良い。

ただ、徹夜2日目となると瞼がギロチンのように意識の首を持って行きそうになる。


俺は一旦食事を取って仮眠を挟んでから計画を実行することにした。

扉を開けると一階からだろう良い匂いが漂ってくる。


ギロチンの刃を落とさないように気合いを入れて階段を降りると、すでに皆が席についていた。食器の合さる音だけが響いている。


「おはよう。よく眠れたか?今日はよろしくな!」


「はい・・・」「ああ・・・」「うん・・・」


「アキラ様、おはようございます。」


なんだ?お葬式じゃないか!!テンション低っ!!!

まぁこっちは徹夜でハイテンションだが、それにしても低い。

昨日のご飯がマズかったとかか?

ヘルマンは昨日と変わらんな。


「兄ちゃん・・・お願いがあるんだ。」


沈黙の朝食の中、コウが最初に口を開けた。

どうしたんだ?調味料か?万能のソース「タルタル」が欲しいのか?


「どうしたんだ?」


「髪の毛を染めて欲しい。」


は?いや、俺黒髪好きだし。

ってか急になんだ?それもこんなテンションで言われた意味がわからん。


「急にどうした?今更双子と言う事実が嫌になったか?」


「アキラさんとコウさんは双聖だったんですか!?似ている兄弟かと思いました・・・・」


いや、似ている兄弟だけどな。

今更驚くヘルマンを無視してコウが続けた。


「そんなもんだよ。兄ちゃんは『異界の戦士』じゃないよね?だから染めて欲しい。俺と違う色に。それから髪を伸ばして欲しい。お願いだ。」


「お、おう。わかった。できそうならやろう・・・・」


いつになく真剣なコウに承諾してしまった。

なぜか少し寂しくなったが、俺の頭の中はすでにブリーチ剤の精製方法でいっぱいになっている。

まぁ双聖云々と言われるのも面倒だから問題はないか・・・・となるとアレもいるかな?


何も言わずまっすぐ此方を見るアリアスとナタリー。

何かあったのか・・・・・。


「皆んな!物も無いから今日に今日は難しいが、とりあえず承諾した!何があったかは知らないが、コウと見分けがつけばいいんだろ?だから皆んなは今日の計画に集中してくれ!」


「はい!」「わかった!」


「兄ちゃん、ありがと!」


俺たちは食事を終えると準備に取り掛かった。

3人ににベントレイの口説き文句を伝えて最悪な状況の場合の対処法も伝えた。


「では行ってきます。」


「気負うなよアリアス。それとナタリー、コウをよろしく頼む。」


「俺は子供じゃないっての!」


「皆んな、行ってらっしゃい。」


『行ってきます!』


揃った声に少し安心して見送った。

少し寂しいのかもな・・・・


さぁ俺も始めようか!!


「ではヘルマンさん。これを・・・・・」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「あれでよかったんですよね?」


私たちは案内役の方と一緒に町から出て街道を進んでいました。

昨日の出来事の後、3人で帰る途中相談した通りですが、やっぱり内緒というのは辛いです。

コウさんはヘンリーさんとの会話からアキラさんの存在が認知されていないことに気づきました。

そこでアキラさんとの見た目の差別化をして被害が及ばないようにしたかったのです。


「あれでいいんだよ!『異界の戦士』の俺は仕方ねぇけど兄ちゃんは違うしね!」


コウさんの言葉に私もナタリーも何も言えませんでした。

《時の魔女エスティナ》様。いや私たちが巻き込んだ様なものです。


「兄ちゃんなら、何だかんだで何とかするかもしれない・・・・でも、だからこそ俺は強くなるよ!兄ちゃんも公久も明日菜も守れる様に。」


コウさんは果てしなく真っ直ぐな強い目で前を向いていました。



「私も強くなります。皆さんを無事でお返しするために!」


「私もだアリアス。もう誰も失わない。そう決めている。コウ様、私もご一緒させていただきます。」


「まぁその前にこの一件片付けちゃおうぜ!」


コウさんは微笑むと、輝く太陽に拳を突き上げてみせました。


エスティナ様・・・・お二人は本当の意味で強い方々です。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「馬鹿野郎!!!!そんなもん信じれるわけねぇだろ!!!」


白い口髭で申し訳程度に生えた薄毛。年齢の割に岩の様な大きな体の男性がお酒の入った木のコップを勢い良くこちらに向かって投げられました。


壁や柱がボロボロで長らく使われてないであろう馬小屋に到着した私たちは、案内役の方の口添えで中に入れていただきました。中に入ると武器と呼べないような農具で武装した男性たちに迎えられ奥に通されました。

そして馬小屋の一番奥に座っていた白い口髭の大きな男性に挨拶を終えると今回の件の解決案をお伝えしました。

そしてこの状況です・・・・・・・


これは・・・なんとゆうか・・・・


マズいです!


「治るわきゃねーだろ!!2日だぞ2日!そんなんで治ったら医者なんかいらねー!!《聖女》と《独剣》が来るっていうから助太刀かと思えば与太話しに来ただけだと!!??ふざけるな!!」


アキラさんの口説き文句であった薬の話すら信じてもらえません・・・・・


「あーやっぱり兄ちゃんの説得じゃ無理だね〜」


え!?分かってたんですか!?ちょっとコウさん!!!


「ベントレイ殿、熱くなっているのは分かるが、ここは一度町に戻ってはみないか?一見にしかずだ。反旗を翻すのはその後でも良いのではないか?己の目で見れば分かることもあろう。」


「そうだよ爺ちゃん!兄ちゃんがリリーちゃんを治せるって言ってたし、ここは戻ったら?」


「リリーがか!?・・・・・いや、無理だ・・・。」


大きな力強い目を開いてお孫さんの名前に反応したものの、考えは変わらないようです・・・・

ナタリーの説得で周りの方も少し騒めいたようですが、まだ納得はされていないようです・・・・

でも少し冷静になられて良かったです。


「ここの連中の中には、すでに大切な者を失った奴もおる・・・この先の不安が恨みや怒りに変わった者も多い。それに・・・・」


それに?なんでしょう?

ベントレイさんの目が獲物を狙う熊の様に鋭く変わりました。


「ベラデイルは医者を匿っている。儂らはどうやってもその医者を連れて帰り領主の奴を懲らしめなければ気が済まん!」


「そんな!!」「マジかよ!」


それが本当なら、そんなことってないです!領民が困っているならなんとかしてもよかったんじゃ・・・


「だがその戦力でどうやって医者を拐う気だ?わかっているのだろ?」


「そうです!そんなことしたら失う者の方が大きいですよ!」


するとベントレイさんの横にいた男性は怒りに満ちた目をギラギラと輝かせながら笑ったのでした。


「俺達は勝てる。この《魔装の肉》があるからな!」


男性は普通の干し肉を皆に見えるように高らかに掲げました。


「そうだ!俺たちは勝てる!!ヘンリーから貰った《魔装の肉》があれば!」「勝って領主を同じ目にあわせてやる!」


男性の口から出てきたその名を聞いて、周りの男性たちの声が聞こえないほど私は血の気が引きました。

多分二人も・・・・・。


アキラさん・・・・

どうすればいいですか・・・・・・・?

PV1000超えました!!ありがとうございます!!

皆様の応援ありがとうございます!

次回10月29日

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