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17話「本当の変態は自分が変態だと知っているから変態をかくせるらしい」

「兄ちゃん!もどったよー・・・なにこの暗いかんじ・・・」


ノック無しで扉が開きコウとナタリーが重そうな荷物を担いで入っていた。


「お疲れ様。いや、ちょっとした懸念があってな。それがどうなのか悩んでたんだ。」


「ああ、また兄ちゃんが難しいこと言い出したのね。アリアスちゃんごめんね〜」


「いえいえ!そんなことは!お二人共お疲れ様です!!おかえりなさい!」


失敬な!お前と違って常に冷静に考えているだけだぞ。

コウとナタリーは2人とも荷物を下ろし近くに座って一息ついていた。


「それより全部あったのか?」


「んーあるにはあったんだけど物が違いすぎて正しいか分かんないよ?」


コウはメモを開くと頭を掻いている。バツが悪そうだ。

そりゃそうか。同じような果物でも味も違えば成分も違う。一応こんな物と概要は伝えておいたが照らし合わせる方法もないよな。

まぁそのために俺は残るんだが・・・・・

するとナタリーが荷物を開いて見せてくれた。


「コウ様に聞いて私なりに頭を捻って買ってきたのだがこれで良いだろうか?」


袋の中には酒だろうガラスの瓶や鉱石、様々な金属、それにビートなどの野菜。あとは付近で狩って来たであろう獲物の肉や魚、希望した効果の薬草が入っていた。


「ビートです!!!」


「ビートは今は食べないぞ!ナタリーしまってくれ!」


「うぇ!!」


今にも飛びついて食べだしそうなアリアスを止めて、再度袋にしまってもらうとアリアスがしょげてお腹をおさえていた。

何だかすぐにでもご飯をあげたくなってしまうが、そんなにゆっくり出来ないんだ、ごめん!


「それでこれが本題の物!ナタリーが全然役に立たなかったよー」


コウは笑いながら袋を渡してきた。


「し、仕方ないだろう!私は虫が嫌いなのだ!」


ナタリーは顔を真っ赤にして会話に割って入ってきた。

普段は無口でキリッとしてるけどナタリーも乙女なのだな。


「む、虫ですか!?」


そうだ。これが今一番必要なのだ。


「それでメモの残りは手に入ったのか?」


「すまないが肉や魚は手に入れ辛かった。1年前から、この辺りで魔物化したオークが数多く目撃されていて容易に狩りに行けず、肉や魚をあまり食べれていないらしい。買うのに気が引けたので少し外に出て狩ってきたが、それでいいのか?」


「ありがとうナタリー。いい情報だ。それに思ったより揃った!皆でご飯でも食べて来てくれ、明日にはベントレイを追ってもらうことになる。今日はゆっくり休んでくれ。」


「サンキュー!でも、兄ちゃんは休まないの?」


3人とも何か不安そうだな。

まぁここは邪魔されずに研究出来た方が俺としてもありがたいし、出ていってもらうか。


「これから少し研究に入る。ヘルマンさんには早馬でコウ達に面会をしてもらうようにベントレイに伝えてくれるよう頼んである。皆が出て行ってから爆睡させてもらう。」


「兄ちゃんズルっ!」


「そうか、では遠慮なく休ませてもらうとしよう。アリアス、空腹ではないのか?」


「ペコペコです!!あ、でも・・・・」


アリアスが俺の方を見てモジモジしている。

何かこそばゆいな・・・・


「大丈夫だ。何かあれば聞きに行くから。」


「ではお言葉に甘えます!行ってきます!」


笑顔になったアリアス達を見送って俺は気合を入れ直すと研究に入ったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「アリアスちゃん、この辺だと何の料理が美味しいの?」


「この町だと有名なのは《タイニーズ》のビートフライです!」


私とコウさんとナタリーはヘルマンさんの屋敷を出て少し歩いたところで何処に食べに行くのか決め兼ねていました。

この町は人口は少ないのですが特産のビートを各地の商人さんが買付けにくるので、比較的に宿と飲食店が多くあります。

先日の火災では飲食店の連なる通りは被害に合っていないようなので美味しい料理のあるお店もきっと営業しているはずです!

その中でも以前から噂を聞いていて食べに行きたかったのが《タイニーズ》でした!!


コウさんとアキラさんを迎えに行っている時は急いでて寄れませんでしたがチャンス到来です!


「行きにもアリアスが行きたがってた店だな。そこにしよう。コウ様もよろしいですか?」


「おっけー!」


前を歩くナタリーにコウさんと私が並んで付いていく形で進み始めると、コウさんが歩きながら急に謝ってきたので驚いてしまいました。


「アリアスちゃんごめんね。兄ちゃん、あんな性格だからさー、言葉の選び方が下手だったり、合理主義過ぎるせいで面白くなかったりするのに嫌な顔をせずに付き合ってくれて色々とありがとうね!」


普段はアキラさんとコウさんの会話を聞く事は少ないのですけど、お互いの事を理解し合って尊重していて、本当に仲のいい兄弟なんだとで分かります・・・・・


「大丈夫です!コウさんはお兄さん思いですね!アキラさんは本当に凄いです!私では思いつかないことを次々と考えつかれます!そういえば、アキラさんは今日の様に一人でよく研究されるのですか?」


コウさんは笑いながら遥か彼方の空の先を見上げました。


「確か高1だったかな?俺と兄ちゃんが16歳の時なんだけど、妹の学校で事件が起きてさ。」


その表情は、懐かしむような微笑みと少しの哀愁が混じっていて、いい思い出なんだと感じ取れました。


「飼育小屋の鶏がいなくなる事件。それを聞いた兄ちゃんは俺も相部屋なのに締め出しちゃってさー丸2日食事も取らずに出てこなかったよー。流石にトイレは行っていたみたいだけど」


えー!!2日とか餓死しちゃいます!!!

これは食べ物を持って帰ってあげないと!!

あ、鶏はあちらの世界にもいるのですね!美味しいですよね!

・・・・・そんなことより、その後どうなったんでしょうか?


「その後はどうなったのですか?」


「なんか、《アマミマモルくん壱号》とか言う何故か緑色の毛を付けたセンサーを小屋の天井に設置して犯人を見つけてたよーまぁ猫だったんだけどね」


「センサー?なんでしょうか?設置とゆうことは魔道具かなにかですかね?魔道具作品だとすれば凄すぎます!専門でないと魔法の上級者でも魔法陣なんて書けませんよ!アキラさん凄いです!」


「アリアスちゃん、俺達の世界に魔法はないよー!でも兄ちゃんを褒めてくれてありがと!俺も兄ちゃんは凄いと思うんだ!まぁもう少し人と関わったほうがいいと思うけどね!」


コウさんは鼻の頭を掻きながら照れくさそうに笑ってみせました。


「2人共、着きましたよ。」


やった!!ついに!ついに!食べれます!いい匂いです!お腹が叫んでいます!

煙で燻された木造の入り口が老舗感を漂わせていますね!

私達が中に入ると中は結構賑わってました。

すると店員のナタリーより胸の大きな女性が近寄ってきて席に案内してくれました。


「3名ですねー相席でもよろしいですか?」


「俺はいいよー!」


「私も大丈夫です!」


「構わない、通してくれ」


あー羨ましいです・・・・ナタリーも大きいけど、あんなに胸が大きいと世界が違って見えるのかな?


案内された席に着くと一人の壮年の男性が座っていました。

白髪の多い髪の毛を後ろに流して整えた口ひげを蓄え少し装飾の入った黒い外套に黒いベストに白いシャツ。

商人の方にしては少し上品です。結構稼がれていらっしゃるのでしょうか?


「これはこれは美女お二人と相席なんて幸運ですね!私は《ヘンリー》と申します。短い時間ですが老いぼれを邪険にしないでくださいね。」


「び、美女って!そんな!あ、ありがとうございます!ヘンリーさんもまだまだお若いですよ!」


「先程からお店の男性の目がこちらを伺ってます。謙遜されなくても周りが認めてますよ!」


ヘンリーさんが私達2人にウインクをすると、コウさんが「俺空気ー」と苦笑いをしてました。


ナタリーはヘンリーさんのお世辞に、何食わぬ澄まし顔でヘンリーさんの向かいの席に着きました。コウさんは苦笑いのままヘンリーさんの横です。

私は早く食べたい気持ちを抑えつつナタリーの横に座ると、店員さんに注文を伝えました。ヘンリーさんも同じ物を頼まれました。


落ち着いた所で、私達も軽い自己紹介を終えると待ちに待った食事が運ばれてきました!

衣をつけて揚げた香ばしい匂いにヨダレがとまりません!早速食べ始めるとヘンリーさんから会話を始められました。


「美女が正面にいる食事はいつもより美味しいですね!何歳になっても喜ばしいことです。ところでお2人は旅の途中ですかな?」


「俺!俺ココニイルヨ!!」


ヘンリーさん、コウさんの声が意図的に聞こえないみたいです。


「そのようなものです!ヘンリーさんは商人さんですか?」


「そのようなものです。」


ヘンリーさんはお茶目に笑うと、ビートフライを一口食べて会話を続けた。


「いや~美味しい料理があると聞いてこの町に来たのですが昨日の夜に火事があったみたいで食べれなかったのです。ですが今日は、お店に来れただけでなく美女と食事ができるとは今日はアタリでした!ここのビートの香りと甘みは他のビートとは違いますね!それから・・・・」


・・・・・・この人デキる!!

香りだけでなく、甘みまでの違いを感じているなんて!


しばらく料理について話しをして食べ物がなくなった頃には、どうにかコウさんの声もヘンリーさんの耳に届いていました。

よかったですね!

私達と食べ終わったのが同時だったので一緒に出ることにして、先程の巨乳店員さんに支払いを頼むとヘンリーさんが手を前に出して支払いを止めてきました。


「ここはいい思いをした私が払いますよ」


「では、紳士のお言葉に甘えさせていただこうかな。」


ナタリーが上機嫌です!!

流石、帝都で『美人剣士』で名を轟かせてるだけあります!!返答に馴れています!!

私も見習わないと!!


ヘンリーさんは支払いを済ませると先に席を立って荷物を纏められていました。


ですが、その刹那。先程の表情とは比べ物にならない程冷たい顔でこちらに振り向かれました。

あれ?ヘンリーさん・・・・?


「ではお気をつけください。聖女アリアス、独剣のナタリー、そして『異界の戦士』。ハステルは魔人とはいえ新参です。私は人ですが奴よりも強いですよ。今日はあなた方と話せてとても勉強になりました。帰って勇者様にご報告させていただきます。『異界の戦士以外、取るに足らない』とね。コウさんでしたっけ?ハステルを倒した貴方と殺り合うと此方もタダじゃすまなさそうなので今日は帰ります。」


「なっ!?」「!?」


一気に体の血が引いて行くのがわかりました。

ヘンリーさんはそのまま出口へ歩いて行くと途中で振り返り口だけ笑いながら一言呟きました。


「まぁ邪魔はしないことです。取るに足らない虫けらでも邪魔なら消しますからね。あ、でもコウさん。貴方は次の機会で殺します。では。」


私達は沈黙のままヘンリーさんが出ていくのを、ただ見てるしかできませんでした。




次回10月24日

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