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12話「新幹線を国中に通した総理の声は異界の俺の頭にまで響く」

「・・・ほ、本当にありがとうございました!何が起きてるかすら、わからなかったです!!」


「そうだな、是非聞かせてくれないか?」


俺たちはハステルとの戦いの後、村に戻り爆睡した。


いかんせん俺が吐き疲れて動けなくなったから説明なんてしていない。

コウの肩を借りて俺は牢獄に戻ってそのまま撃沈!


なので今は朝食の最中。

俺の前にアリアス、コウの前にナタリー。男女で分かれて座っている。


昨日の一件が嘘のように落ち着いた朝食の時間なのに、俺は向かいのアリアスとナタリーに問い詰められて気分が悪い・・・・なんせ人が溶けていくのを思い出す・・・・

良い子が絶対真似をしてはいけない戦い方をしたんだ。あまり語りたくもないんだが・・・・


「あー、えーっと・・・・」


俺はまず魔法が何たるかの確認がしたかった。

魔法とは詠唱で発するものか否か。そこが第一関門。


俺はヴェルダーさんやアリアスの話で魔法とはイメージが大切だということがわかった。

だが、それだけでもダメで魔法によって魔力の流し方にもコツがいる。


例えば火の魔法「トーチ」。

この魔法を使う時は火が燃えるイメージと一度広げた魔力を火を出したいところに集めるようにする。そして魔力を一気に注ぐ。


ここで思ったのが「これは可燃性気体を集めているのでは?」だ。

試しに酸素と水素の分子構造を集めるイメージをし、試してみたところ最初に使ったトーチよりも炎が格段に大きくなり、そこに衝撃も追加され下に水滴が落ちた。


嬉しかった。魔法に化学反応が適用される。魔法は科学だったんだ。

まぁ魔素とか魔力とかはまだ謎だが・・・・


そして何を集めているのか、どういった反応を起こしたいかを考えることでより効率のいい魔法が生み出せる。


「コウが朝から出かけてたのは覚えてる?あれはリザーヴォルフを狩ってもらってたんだ。」


「ぅえ!?リザーヴォルフですか!?あんな危険なものを!?」


アリアスが涙目になってナタリーは青褪めているが俺は話を続ける。


「こちらに来て、最初にコウが簡単に倒した魔物だからね。任せたんだ。」


「いや、兄ちゃん。今回ちょっと動きが違ったから少し手こずったよ〜」


よし、興味はあるが置いておこう!


「コウの剣に、その毒を塗っておいた。だから最後動きが鈍くなって倒せたんだ。」


「そうだったんですかぁ!凄いです!」


よし!ごまかせた!!

俺は話は終わりだと言わんばかりにパンをほうばる。


「いや、そこで終わりではないだろアキラ殿。最後の魔法だ。あれは一体なんなのだ!?明らかに水魔法ではあんな事にはならないぞ。」


ッチ!無理か・・・・

だが余り科学的なことを伝えても分からないだろうしな・・・・

ええい!ままよ!


「あー、あれは高濃度の水酸化カリウムです。体が溶けます。」


「うわぁぁ・・・溶けるとか兄ちゃんエグ・・・・」


「スイサンカカリウム?よく分からないが、水ではないと?」


「はい、簡単に言えば水ではない毒です。普通の生き物なら触るだけで溶けます。」


「うぇぇぇ!アキラさん毒魔法を作っちゃったんですか!?」


ナタリーが腕を組み眉間に皺を寄せて苦悩している。アリアスは持っている魔法の知識でも人間は水しか魔法で使えないと思っていたので椅子から立ち上がり両手をついて前のめり。

顔が近い・・・・

硫酸を考えたが、岩塩が手に入ったので水酸化カリウムを選択した。

あの土煙の時、作っておいた塩化カリウムを水魔法に放り投げて、2本のナイフを電解用の電極として使い、できた分子を水魔法でより分けて濃度を調節・・・・・


「そうなるかな・・・・」


「アキラさん!すごいです!!是非!是非教えてください!!」


いや、あれはまずいだろ・・・・

アリアスはスプラッター好きか?


「いい趣味ですね。人が苦しみながら溶けていく様を見るのがいいなんて・・・・」


ッハ!っとキラキラした顔が青褪めて、アリアスはすぐさま座り直した。


「すいません、やめておきます・・・・」


よし!それでいい!あれはもう俺も使いたくないしな!


「だがあの混合魔法のクアグマイア(泥沼)も同時に使うとはアキラ殿はトリプルキャストも可能なのか・・・・」


ナタリーは唇にゆるく握った手を当てて考え込んだ。

水魔法とクアグマイア(泥沼)。この二つを同時に使用すると水魔法2つと土魔法でトリプルキャストだ。


実は毒魔法なんてないので、水魔法で水分を維持管理。電解のための電気は風魔法と土魔法で起こす混合魔法を使ったのでシックスキャストだ。

アリアスがフォースキャストまでしかできないらしいから黙っておこう・・・・


そうだ、あの話に決着をつけておこう。


「アリアス、ナタリー。話がある。」


3人の和気藹々としていた空気が真面目な雰囲気に変わり、目線が俺に集まる。


「俺たち兄弟は、《時の魔女エスティナ》に会おうと思う。」


「ほ、本当ですか!!嬉しいです!!」


俺は手の平を前に出し、一旦静止させて続けた。


「待て、別にエスティナを信用したわけじゃない。いかんせん理不尽だ。俺たちに選択肢がない。でもアリアスとナタリーは信じてもいいとは思った。だから会いに行く。」


「俺もそれしか帰る手段がないってのはな〜俺は特に働かされるわけだし!」


確かにコウが一番面倒だと思う。今回みたいな命をかけた戦いに赴かなけらばならない。

それも断ったら帰れないかもしれない。まぁ一番の被害者は公久と明日菜だが・・・・


「だから、連れて行ってくれ。俺たちを《時の魔女エスティナ》のところに。」


アリアスは両手を胸の前で握り、ナタリーと目線を合わせるとお互いに頷いた。


「お任せください!私たちが責任を持ってお守り・・・いえ、お連れいたします!!」


「よろしく頼む。」


「はい!よろしくお願い致します!」


「よろしく!!」


「よろしくお願いする!」


俺たち握手を交わし朝食を終えるとそのまま荷造りをした。

その後ミラディエラさんの元にお礼と旅立ちの挨拶に向かった。


「そうですか、それは長旅になりますね」


ミラディエラさんは頬に手を当てて少し寂しそうだ。

そんな表情されたら行きづらいです!



「・・・・確かにそういえばどんだけかかるんだ?」


「20日くらいですかね?国を渡るわけではありませんので大丈夫です!」


「20日!!??」「そんなに!!??」


俺たち単位落としちゃうじゃん!!

アリアスの言葉に耳を疑った。20日とか・・・・・・


東京から大阪くらいか・・・・新幹線・・・欲しいな・・・



そして俺たちの最初の旅が始まった。

次回10月7日


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