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鈴虫の音は聞こえるか

 夜、鈴虫の求愛行動の結果の鳴き声で鼓膜を震わせながら道を歩く。

 秋の夜は好きだ。

 夏の蛍のように網膜に映る幻想的な風景はない。

 しかし、視覚に不備のある私には太陽の光は強すぎる。

 それに比べて鈴虫の、まさに鈴を鳴らしているかのような音は私が特別である事を教えてくれる。立ち止まり、しゃがみ、鈴虫の姿を探す。やがて、草の上で羽をこすり合わせる鈴虫を発見。なにもできなかった私がなにかできる特別な存在であると教えてくれる。

 しゃがんで鈴虫を見つめていた私の視線が、赤く明滅する強い光を捉えた。その光に込められた命令によって、私の行動は強制停止させられる。


「あー。見つけた見つけた」

 夜。月のない空の下で道端にしゃがんだ人影に近づく。

「あ、先輩?こちら巡察3番。対象を発見しました。これから保護します」

『本部了解。それとてめぇ無線でこっちのこと先輩って呼ぶのやめろや』

「えぇ?でも先輩だって今僕のこと3番じゃなくてテメェって呼んだじゃないですか」

『いいんだよ。テメェの報告で状況は終了したからな。だがテメェは状況終了前にこっちのこと先輩って呼びやかっただろうが』

「あ、先輩、この子鈴虫見つめてるんですけど。アンドロイドでも鈴虫の鳴き声がわかるんですかね」

『人の話聞きやがれ・・・・・・。それと、アンドロイドが鈴虫の鳴き声聞くわけねぇだろ。軍用のものならまだしも、それは民間のアンドロイドだろ。人間の発声不可能な音域の鈴虫の鳴き声は聞き取れねぇよ』

「あ、すごい!!先輩物知りですねぇ!」

 僕は無線を切り、パトライトの光に照らされたことで強制的に動きを停止させられたアンドロイドを見る。そこにいるのは煤にまみれた女性型アンドロイドだ。所有していた家が焼け落ち、その際にプログラムにバグが発生したのか、家から離れたため捜索命令が出ていたのだ。

 無事に見つかったので、これからメモリーを取り出し、焼け落ちた豪邸の出火原因が調べられるだろう。


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