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転生女神の英雄譚(リメイク版)  作者: 槻白倫
第1章 女神の始まり
21/59

閑話 勇者達1

前回、一年近くと言いましたが、一年経ってました……

本当にすみません。


ここからは四話ほど勇者の話になります。毎日投稿にしてあまり伸ばさないようにはします。


感想、評価、ブックマークありがとうございます。

 美結達勇者が異世界に転移してから早いもので、一ヶ月が経過した。


 勇者達は今メルリアにある、冒険者の間で『狩り場』と呼ばれる場所の一つ、セリア大森林と言うところにいる。


 何故、美結達勇者がセリア大森林にいるのかというと、修練の為だ。


 ここ、セリア大森林はメルリアで一番広い森林で動物も沢山いる。だが、同時に魔物も多くそれなりに危険な場所だ。


 それなりに危険というのも、ここセリア大森林は、魔物が多く存在するが、そのどれもが低ランクの魔物ばかりだ。そのためここは、新米冒険者、及び騎士見習いが実地訓練する場所として使われる。だから、『狩り場』と呼ばれているのだ。


 だが、低ランクとは言え魔物は魔物。油断をしていたら怪我することだってあるし、最悪死ぬこともある。なのでそれなり(・・・・)に危険なのだ。


 そんなセリア大森林で、美結は今まさに、魔物相手に剣を振っていた。


「はあぁっ!!」


 気合いと共に剣を一閃。蜂型の魔物――ダンシングビーを切り裂く。


 ダンシングビーの大きさは子犬くらいで、地球の蜂よりも大きい。そんな、地球からしたら規格外の大きさの蜂だが、この森の力の序列では最下層に位置する。だが、そんな最下層に位置する魔物も、いかんせん数が多いので新米冒険者などは倒すのに手こずったりする。


 そんな、新米冒険者などが手こずるダンシングビーを美結は一度に複数体相手取っていた。その数はおよそ七百匹。それを、一人でだ。


 後ろには仲間が控えているが彼らは手を出していない。いや、手を出すことが出来ないのだ。何故なら、美結の戦い方が仲間を巻き込むような戦い方だからだ。


 美結は、剣に炎を纏わせ一閃する。ダンシングビーを斬ると剣に纏わせた炎と共に爆散する。斬られたダンシングビーの爆発に巻き込まれて周りのダンシングビーが焼け焦げ、時には体の一部を爆炎により失う。


 この戦い方により接近戦が主体の者は誰も参戦できないのだ。後方支援の者ならば参戦出来るのではと思うのだが、美結が早すぎて未だ素人の域を出ない者達では誤射をしかねないのだ。そのため、誰も手出しが出来ない。


 至る所で爆炎により散ったダンシングビーが舞う。


「らああぁっ!!」


 炎を先程よりも多く剣に纏わせ剣を振る。振るった剣から炎が放たれる。放射状に放たれた炎が数十匹のダンシングビーを灰にする。


 炎をよけたダンシングビーが美結に殺到する。


「くっ!!」


 毒針を突き出し迫るダンシングビーのことごとくを、なんとか切り裂き灰にする。


 全てを斬り伏せ周囲のダンシングビーが粗方いなくなると、美結は唱える。


「目に映る全てを、刃を向ける全てを焼き尽くせ! 『大爆炎(だいばくえん)』!!」


 詠唱の直後、灼熱の魔力の塊が宙を舞い一匹のダンシングビーに当たる。その瞬間、膨大な炎の嵐が吹き荒れ数百匹のダンシングビー巻き込み灰塵(かいじん)にする。


 『範囲系上級魔法・大爆炎』は膨大な魔力を圧縮し物質に触れた瞬間に魔力を解放し大爆発を引き起こすという魔法だ。


 美結はこの一ヶ月の間炎系魔法の習得に力を注いでいた。


美結の得意な魔法が炎系と言うのもあったが、下手にいろんな属性に手を出してどれも中途半端になるよりは、一つの属性を向上させて、決め手となる上級魔法を修得した方が良いと考えた結果だった。


 そのかいがあってか、美結は『大爆炎』を辛うじて実践で使える程度ではあるが習得することが出来た。


 だがそれでも『大爆炎』の威力はすさまじいもので、相手の数はだいぶ減り、今は百匹いるかいないかだ。


 その後は今まで使っていた剣に炎を纏わせた魔法と剣技の融合技『魔剣技』でダンシングビーを蹂躙していく。


 数分後に最後の一匹を灰にして、戦闘は終了した。


美結は、荒げた息を整える。


「はあ、はあ……ふう…」


 息を整え終わった後振り向き皆の元へ戻る。


「お疲れ美結ちゃん」


「ん、ありがと真樹ちゃん」


 労いの言葉と共に差し出されたタオルを受け取り汗を拭う美結に、真樹は微笑みながら言う。


「それにしても美結ちゃんはどんどん強くなっていくね。私びっくりだよ。さっきの戦いも凄かったし」  


「それは当たり前だよ。加護を二つも持ってるんだから、あれぐらい出来るようにならなくちゃ」


 美結の謙遜の言葉に、真樹が口を開こうとするタイミングで言葉を被せられる。


「だが、君の戦い方は危険だ。ミユ、君はもう少し連携という物を意識した戦い方を学ばねばならん」


 美結と真樹の会話に割って入ってきたのは、付き添いで来てくれたメルリア王国騎士団の副団長――エリナ・シールズだ。この修練には、他十数名ほど付き添いできてくれている。


 エリナは男勝りな所はあるが可愛い物に目がない。普段の凛々しい感じからは想像も出来ないそのギャップから騎士団や勇者の男子から人気がある。


 しかも二十歳という若さで騎士団副団長を勤めているので、剣も魔法の腕も一級品だ。ただ、家事が苦手らしくよく料理を焦がしては、しょんぼりと肩を落としているらしい。


 そして、他の騎士団員も皆揃って優秀な者ばかりだ。そのため、美結達は安心して実地訓練を出来るのだ。


 しかし、安全に戦えるのに、美結はそうしない。これでは、エリナたちが付いてきている意味がない。


「それに、訓練に関しても君だけ量が異常すぎる。もう少し訓練の量を減らさないと、その内体を壊すぞ」


「のんびりなんてしてられないんですよ……」


「美結は、何をそんなに焦っているんだ?」


「……エリナさんには関係のないことですから」


 そう言うと美結は森の奥へと歩き始める。


「待つんだ美結!」


 先に進もうとする美結に制止の声がかけられる。制止の声に美結は苛立ちながらも振り返る。


「なに、紫苑君?」


 そう、美結に制止の声をかけたのは荘司だった。


 冷たい目で荘司を見る美結。その視線に、一瞬荘司は怯んでしまうが、自身を奮い立たせて口を開く。


「いくら君が強くても一人じゃ危険だ。皆と一緒に行動すべきだ」


「またそれ……」


 美結は辟易して呟く。


「人は一人だと限界がある。だから、助け合わなくちゃ――」


「必要無い」


 荘司の説得をバッサリと切り捨てる美結。


 美結にとっての綺麗事を並べる荘司は、正直今の美結にとっては鬱陶しいだけであった。ゆえに荘司に向けるその目は暗く冷かった。


「何であたしが皆と足並み揃えなくちゃいけないの?」


「俺たちは仲間だろ? それに、この国は安全だ。なら、無茶をしないで徐々に強くなっていけばいい」


「……確かに、王国の周りでは大した戦争もないし、国は豊かで内戦も無いしテロだって無い。うん、それならゆっくり強くなっていくのも問題無いよ……寧ろ慌てる必要ないから安全策もばっちり考えられるしね」


「それなら――」


「でもあたしは違うっ!!」


 声を荒げる美結に荘司は二の句を飲み込む。


「いい? あたしは早く強くなって、この世界の何処かにいる幸助を助けださくちゃいけないの。皆は良いよね、自分と親しい人が無事なんだから。でも、あたしは幸助がいないの! 欠けてるのよ、あたしの『大切』が!! それを取り戻すためにはあたしは一分一秒でも早く強くならなくちゃいけないの! 皆と足並み揃えてちんたら強くなってく暇なんてあたしには無いの! 今あなたに説明してるこの時間も惜しいのよ! 分かる!? 今この時も幸助は苦しんでるかもしれないの! 分かったらあたしから貴重な時間を奪わないで!!」


「落ち着いて美結ちゃん」


 怒りで止まらなくなった美結を真樹がなだめる。  


「落ち着いて、紫苑君も悪気があったわけじゃないと思うの。美結ちゃんは確かに強くならなければいけない。けど、あまりむちゃして自分が怪我をして修練が出来なくなったら、それは本末転倒だよ? 無理せず、時には休まないと、崎三君を見つける前に美結ちゃんが壊れちゃう。だから、ね?」


 真樹の言葉で段々と落ち着きを取り戻していく。それと同時に自分が皆に対し失言をしたことにも漸く気づく。


「……ごめん…………」


「ううん、いいの。気にしないで?」


「そ、そうだぞ美結! 焦る気持ちも分かるけど今は落ち着いて」


(焦る気持ちも分かる?)


 その言葉を聞き美結はまた激昂しそうになる。


「紫苑君、今は黙ってて」


 だが、美結が激高する前に真樹がピシャリと言い放つ。真樹の言葉で荘司も自分の失言に気付いたのか言葉をつぐむ。  


 今の美結に必要なのは安っぽい同情や共感の言葉ではない。それを真樹は理解していたから、今の美結の行動を肯定しつつその行動によるデメリットを言って落ち着かせようとしたのだ。


 このまま修練を続ければ美結は必ずどこかで壊れてしまう。そのことを分からせるために真樹は言葉を紡いでいたのだが、それを荘司によって壊されかけた。そのことに苛立ちを覚えて真樹は思わず強い口調で言ってしまったのだが、そのことについてはさして後悔はしていない。


 なにせ相手は荘司だ。ここ最近の美結への態度を考えれば、今の態度になってしまっても当たり前と言えた。


「……もういい、落ち着いた。ありがとう」


 美結はそう言うとさっさと歩き出してしまう。


「そう、なら良いのだけど……」


 真樹はこれ以上言葉を紡ぐことはしない。それはかえって今の美結には逆効果だからだ。


「分かるもんか……っ!」


 美結の頭は沸騰寸前だった。


 大切な者が遠くに行ってしまった悲しみなど分かりもしないくせに分かったような口をきき、美結に共感しようとする。それが許せなかった。


 この痛みは自分だけのものだ。安っぽい同情などで知った風な口を利かれるのが一番腹立たしい。


 ギリッと奥歯を噛みしめていると、前方の茂みから何かが飛び出してくる。


 茂みから飛び出してきたのは猪だった。名前はクレイジーボア。敵を見ると狂ったように突進してくる魔物だ。その大きさは大型犬ぐらいあり、これまた地球とは大きさが異なる。


 重さと脚力もあり、突進して直撃したならばひとたまりもない。


「ボオオオォォォォォォッ!!」


 雄叫びを上げながら無防備な美結に突っ込んでいくクレイジーボア。


「美結ちゃんっ!!」


 焦った声を上げる真樹。荘司達も思わず息を飲む。


 が、荘司達が思っていることは起こらなかった。  


「ボオッ!?」


 美結は突進してきたクレイジーボアを前蹴りで止めたのだ。数メートル後ろに押されるも、その後ピタリと止まる。その後も力を入れ続けるクレイジーボアだったが美結はピクリとも動く様子はない。


 渾身の一撃を止められたクレイジーボアは驚愕の声を上げる。


 美結は止めた足でクレイジーボアを蹴り後ろに下げる。


「ああぁぁぁぁっ!!」


 美結はそのまま剣でクレイジーボアの頭をかち割る。そうして、クレイジーボアは容易く絶命する。


「雑魚に用無い…………あっ」


 そう言って再び歩き始める美結は思い出したように声を発し振り向く。


「ねえ、紫苑君」


「な、なんだ?」


 美結は不快感を隠しもしない眼差しを荘司に向けると言った。


「あたしのこと、勝手に美結って呼ばないで。呼んで良いのは幸助だけだから……」


「あ、ああ……」


 呆気に取られる荘司をそのままに美結は再び歩き出す。


 取り残された騎士団と勇者一行は居心地の悪い空気の中修練を続けたのであった。  


 その後も、美結は魔物の乱狩りを続けた。美結は、ふらりとどこかへ行くと、魔物と交戦する。相手の力量も考えないで、ただ出会った敵と戦う。


 それは危険なことであり、本当であれば止めなくてはいけない。けれど、誰も美結のその行動を止めることは出来なかった。いや、止めようとしなかった。


 仲間の雰囲気を悪くされたのだから誰も構うことは無く、唯一、真樹だけが気遣わしそうな視線を美結に向けていたが、美結の不安定な精神を刺激しないでなだめる自信が今の真樹には無かったので声をかけなかった。


 ここ最近の美結は不安定だ。理由はとっくにみんな分かっている。


 美結の従姉弟である崎三幸助の不在だ。しかも、生死不明と来ている。美結が不安定になって荒れるのも納得と言える。


 だが、これでも良くなった方なのだ。少し前までは、荒れてはいたが前向きですらなかったのだから。


 こんなに荒れて、焦ってしまっている美結だが、少し前の美結と比べればマシなのだ。ただ無気力に日々を浪費しているよりかは、断然。


 しかし、だからといって今の状態が良いわけではない。このやりかたではいずれ限界が来る。それは、美結も分かっているはずなのだ。けれど、やめられない。


 恐らくは、何かをしていないと不安なのだろう。戦っていないと、直ぐに幸助のことを思い出してしまうから、だから闇雲に戦い続けるのだ。


 真樹は、形の良い眉を寄せる。


 自分は美結の友人なのに、ちょっと落ち着かせることくらいしかできない。それが、悔しかった。真樹としても、こんなに不安定な美結は見ていられないのだ。


(……本当に、ままならないわね)


 何かしたいのに、なにも出来ない自分に、真樹は落胆を隠せなかった。


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