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転校初日(5)

 目覚めると白い天井が目に入る。体を起こすとベッドの周囲の白いカーテンが開いた。


 「よかった。目が覚めたのね。高塚さん」

 「ここは?」

 「保健室よ。倒れていたあなたを見つけた生徒が運んできたの。気分はどう? まだどこか苦しい?」

 「いえ、少しばかりだるいだけです。もう、放課後ですか?」

 「いいえ、5時限目の途中よ。だけど、あなたはもう帰りなさい。お家に連絡して迎えは呼んであるわ。荷物も四条さんが持ってきてくれたし」

 「百合が? まったくどこがお世話をまかせてよ」

 「彼女を責めないであげて。裏から手を回して休み時間ごとに呼び出したのは、生徒会と風紀委員会だから」

 「あぁ、そういう事ですか。先生、携帯を取っていただけますか?」

 「ちょっと待ってね」


 小夜のお願いを保健教諭は、心良く引きうけると荷物と一緒に置かれていた携帯電話をすぐに手渡してくれた。携帯を開くと百合からの大量の着信と保からのメールが届いていた。メールには、校門前に車を止めて待っていると書かれていた。さすがに校舎内へは入ってこれないのかもしれない。


 「めんどくさい、学校だわ…………」

 「そうね。でも、高塚さんは難しく考えすぎじゃない?」

 「どういう事ですか?」

 「夜叉と鬼克の事情なんてあなたは考える必要はないわ。あなたは、純粋に学生生活を楽しめばいいと思うわ。うるさいやからは、無視しちゃいなさい」

 「先生が、それを言っていいんですか?」

 「私は夜叉でも鬼克でもないもの」

 「そうですか。じゃあ、適当に楽しみます」

 「えぇ、そうしなさい。じゃあ、今日はもうお家に帰りなさい」

 「はい」


 ベッドから出て、服装を整える。そして鞄を受け取ると小夜は、保健室をあとにした。その後ろ姿を見送ると教諭は溜息をつく。

 すると隣のベッドのカーテンが開き、そこから一人の男子生徒が出て来る。


 「随分と可愛らしいお姫様ね。あの調子で大丈夫なのかしら?」

 「可愛いだけじゃないと思うぜ。かなりするどい棘を持ったお姫様だ」

 「あら、風紀委員長のあなたが興味を持つなんて意外ね」

 「多分、あの子は鬼克の血筋だと思う。だけど、どの家に属するかまったく分からない。不思議な子だよ」

 「そうなの? じゃあ、ますます大変ね。誰でもいいから守護契約をするべきだわ。じゃないと、どちらからも狙われる。彼女に何かあったらこっちの首が危ういわ」

 「先生も大変だね。調停者として」

 「そう思うなら、もうちょっと夜叉とうまく付き合ってくれない?」

 「あのね、共存派とはそれなりにうまく付き合ってるさ。だけど、今の学園の生徒が共存派より強硬派の方が多いんだよ」

 「そこは、生徒会と交渉なさい」

 「生徒を助けるのが教師の仕事でしょ?」

 「ふふっ、私は調停者よ。あくまで中立なの」

 「…………分かりました。じゃあ、失礼します」


 男子生徒は保健室を立ち去るとそのまま校舎内へと消えて行った。

 


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