表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

転校初日(2)

 小夜の波乱の転校初日の朝。まるでこの後の波乱の学生生活を予期していたかのように、空はどんよりと曇っていた。雨が降るのも時間の問題と思われる。

 鬼頭が用意した制服を目の前に小夜は溜息をつく。黒地に白のラインが入ったセーラー服。おまけに白いスカーフと白のスカートときた。


 (白のスカート。汚れそう。それに丈が短すぎる)


 中学まで通っていた学校の制服は、足首近くまである紺色のワンピース型のセーラー服だった。同じ様に白いラインと白いスカーフだったが、それにしてもこれは。着なくてはいけないと思うが、どうしても手に取るのをためらってしまう。


 (これは、嫌がらせ?)


 この時、小夜は自分のスカートがとても短いと思っていたが学校に行ってすぐに認識を改める。鬼頭は十分に配慮して制服を準備してくれたのだと。それでもこの時は、半ばやけくそな気分で袖を通した。

 そして鞄を手に取ると隣の部屋を訪ねる。最初の日以降、緋乃の部屋で食事を取るのが習慣になっているのだ。


 「おっ、早いですね。お嬢! へー、前の制服も上品でよく似あいましたけど、今回のもいいっすよ」

 「それは嫌味?」

 「純粋に褒めているですけど。ねぇ、緋乃さん」

 「あぁ、よく似あっている。だが、その三つ編みはな。悪くはないが、せっかくきれいなストレートなんだ、結ばずに行ったらどうだ?」

 「邪魔です。それにこれは習慣ですから」

 「前の学校は、肩より下まであると髪を結ぶのが校則だったんですよ」

 「そうなのか? 随分、厳しいなぁ」

 「ミッション系のばりばりのお嬢様学校でしたからね」

 「保。制服は、どこに行けば買えるの? 放課後に行きたい」

 「どうしてですか? 鬼頭さんが全部用意してくれたでしょう?」

 「何か足りないものでもあったか?」

 「短い」

 「短い?」


 小夜の言いたいことが緋乃には理解出来なかった。しかし、長年側にいる保にはすぐに察しがつく。昔から小夜は、膝が出る丈の服は着てこなかった。

 彼女は、基本的に自分で洋服を買いに行くことがなかったので自然と家族の趣味が反映される。確か小さい頃、めずらしく短めのスカートで出かけた時に変質者に声をかけられたのだ。すぐに龍が助けたので何もなかったが、それ以降なるべく露出の少ない服装になっていったのだ。

 それに家では和装が多かったので、家出中に着ていた洋服は彼女がめずらしく自分で用意したもの。そのせいか自然と丈が短いものはなかった。


 「お嬢、その丈でも十分長いですよ」

 「嘘でしょ?」

 「あぁ、そう言うことか。でも、今日はそれで行ってみればいい。きっと今までの常識が吹っ飛ぶぞ」

 「…………分かりました。でも、落ち着かないわよ。これ」


 軽く頬を膨らませる小夜に二人は、苦笑する。保は、慣れているのかそのまま食事の支度に戻って行く。しかし、緋乃は内心どうしたものかと困惑していた。

 元々小夜は、顔立ちの整った黒髪の和風な美少女だったが制服を着た今は、生来の上品さと清廉な美貌がきわだっていた。正直、これはまずい。


 (奴らが群がるのが目に見えている。うーん、眼鏡をかけさせたところで余計に群がりそうだしな。これは、百合に相当頑張ってもらわないと。あのうなじも不味いな。馬鹿共が実力行使にでかねない)


 制服を着させたことで無意識に漂う少女特有の色香に拍車が掛っている。これでは、あの学校では簡単に手折られてしまう。だとしたら、完璧に作り上げて周囲の人間が近づけないようにしなければなるまい。


 「小夜。三つ編みは、止めておけ。私が巻いてやろう、その方が絶対いい」

 「えぇ~、地味目な感じがいいんですけど」

 「いや、こうなったら思いっきり作るぞ。生半可なやからが近づけないようにな」

 「どういう意味ですか?」

 「分からなくていい。さぁ、こっちに来い」

 「………………はーい。変な緋乃さん」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ