2ー2 訂正版
え~とですね、2ー1と2ー2が同じ内容だと指摘をいただきました。
その通りです。訂正版をここに掲載します。
今まで気づかずにすみませんでした。
叫び声とともに火向の手は炎に包まれた。炎の周りの空気の揺らめきから、いかに炎が熱いか分かる。
火向が動く前に八重が先ほど拾った銃を火向に発砲した。
しかし、銃から放たれた弾丸は火向の手の前で灰になって消え去った。
「無駄なことはするな。俺に対して物理攻撃は意味をなさねえよ。
分かるか、抵抗しても苦痛が増えるだけなんだよ。だから、おとなしく殺されろ。」
「そんなのごめんよ。」
八重が銃を乱射する。しかし、弾丸は全て火向の元へとは届かない。
そして、トリガーを引いても弾が出なくなった。全弾を撃ち尽くしてしまったらしい。
「弾切れか。じゃあ、こっちの番だな。」
火向は手を横に払った。すると、手から無数の火の玉が飛んできた。
八重がとっさに分身を魔法で作り出し盾にした。分身は一瞬にして燃え上がり消えた。
八重は俺たちに向きなおった。
「このままじゃ勝てない。私に作戦があるわ。ついてきて。」
八重が出口のドアに向かって走った。それに俺たちもついていく。
火向が俺たちを追って走りだそうとしたのを、八重が分身を作り出して邪魔をする。
「作戦って、なんなんだ?」
俺は八重に問いかけた。金田も八重の方を見た。
「作戦と言うよりは賭けなんだけどね。まず、ここの入口まで走るの。
そして、着いたら金田には大量の……を魔法で出して欲しいの。
それを確認したらトラベルには外に私たちを連れてテレポートしてほしい。」
俺は八重が金田に何を頼んだのか聞き取れなかった。
「確かにそれなら所持金0の俺でも魔法で出すことができる。
でも、そんなもので良いのか?そんなので火向を倒せるのか?逆効果なんじゃ…」
「大丈夫よ。さっきの本によるとね。」
俺は八重が金田に何を頼んだのか聞きたかったが、それはできなかった。
後ろから大きな火の玉が飛んできたからだ。後ろを見ると火向がいた。
はやくも次の火の玉をだそうと詠唱しているところだった。
俺は走る速度をさらに上げた。一生走らなくても良いぐらいだ。
火向が詠唱を終えて火の玉を飛ばしてきた。八重が分身を作り出し、それを防いだ。
だが、八重の魔力は底を尽きそうとしていた。明らかに八重は走るスピードが落ちてきている。
火向はまだまだ余裕そうだった。詠唱をまた始めた。
八重が残った魔力で分身を作り終えるのと、火向が詠唱を終えるのは同時だった。
火の玉と分身がぶつかって消えた。そして、八重の魔力も底を尽きた。
八重が足を止めた。それは魔力が尽きたからではなかった。出口に着いたからだ。
金田が小切手を俺に見えるように破った。俺は金田の魔法の発動条件が満たされたのを確認した。
そして、八重と金田の手を取って外にテレポートした。
火向は出口のドアの前で止まった。 そして、詠唱を始めた。どうやらドアを破壊するらしい。
俺たちは息を切らしながら八重を見た。
「本当に大丈夫なんだろうな。俺は言われたとおりに大量の酸素を魔法で出したからな。」
「大丈夫よ。見てなさい。」
俺と金田は心配しながら火向を見た。
なにせ、俺と八重は魔力が尽きて、金田も所持金0だから3人そろって魔法が使えないのだから。
火向が詠唱を終えようとした時、火向は倒れた。
そして、すぐに体が光ってテレポートしてしまった。ただ、光はいつもと違い黄色く光っていたが。
「八重、いったいどう言うことか説明してくれ。」
俺は八重の方を向いた。
「じゃあ、説明するわね。まず何で火向が倒れたのか、から。
あれは空気中の酸素濃度が急上昇したからよ。私たちは酸素は無害だと思っているわ。
しかし、さっきの本によると酸素濃度が上がると人にとって有害になるのよ。
ちょっとくらいなら気絶くらいで済むけど、あまりに高いと死に至るそうよ。
私も半信半疑だったけど、これぐらいしか手はなかったし。
それに、酸素の価値なんてないから金田の魔法で出せると思ったのよ。
所持金が無くても価値が無いものなら出せるんじゃないかなと思ってね。」
「確かに俺が小切手に酸素と書いたら額面には0円と表示されたしな。」
金田が納得したようにうなずいた。
「しかし、この作戦って、けっこう運任せだったんだな。
お前にしちゃ珍しいよな。いつもは、こんな賭けしないのに。」
「火向炎は強いわ。まともに戦ったら勝てない。だから、賭けにでるしかなかったの。」
「なあ、もう1つ聞きたいんだけど。火向ってテレポートの魔法を使えたっけ。」
八重は首を横に振った。
「いいえ。彼は使えないわ。テレポートした時の光を見た?
黄色だったでしょ。あれは魔石を使った時の光よ。魔石はマシンの技術を利用した物らしいわ。
禁書によると、魔法の力をマシンによって結晶化して、それを砕くことによっていつでも魔法を使うことが出来る。
特徴は使用すると黄色の光が出ること。魔石を作る技術は失われたはずだけど。」
「なるほどね。確かに銃といい魔石といい、戦争にはもってこいの技術だな。」
「ええ。その通りよ。問題は、どうやってマシンの技術を手に入れたかよ。もう失われた技術なのに。
それに禁書に載るぐらいなんだから国家レベルの機密よ。」
「なあ、そんなことよりも、あれは誰だ。」
八重の話をさえぎって金田が指差した方向にはスカイボードに乗った少女がいた。
スカイボードの大きさは1人用だったから、ここまでは1人で来たんだろう。
制服を着ていることから、どこかのマジックスクールの生徒だと言うことが分かる。
「皆さんはEクラスの生徒さんですか~私は風と書いてフォンと言います~」
風と名乗った少女はスカイボードから降りて俺たちに近づいてきた。
顔つきもそうだが、動き方や口調から察するに、ゆったりとしている子のようだ。
「そうだけど。もしかして、あなた静先生が言っていた他校のEクラスの生徒なの?」
八重の質問に風がゆっくりと首を縦に振った。
「そうですよ~。私は静さんの指示を受けて、あなたたちに会いに来たんです。」
「よく無事にたどり着いたわね。魔法連合国家に襲われなかったの?」
「私は風を操る魔法を使うんですけど、それを利用してスカイボードのスピードを格段に上げることができるんです~
だから、だいじょぶだったの~」
「なるほどね。もっと聞きたいことがあるんだけど、ここじゃ聞けないわね。」
金田が手を挙げた。
「はいっ。だったら俺の家はどうだ。旅館なんだし。」
「それは良いアイディアね。そうと決まればスカイボードに乗って。
風ちゃんは私の後についてきてね。」
八重がスカイボードの準備をした。俺と金田は別の移動手段を提案しようとした。
しかし、八重がスカイボードを楽しそうに見ているのを見ると、何か言っても無駄な気がしたので諦めた。
「準備万端よ。乗って。」
俺たちは覚悟を決めてスカイボードに乗り込んだ。
そして、案の定にスカイボードは急速に浮上して急発進した。
俺たちの体は座席に張りついた。いつか、座席と合体するんじゃないかとも思えた。
本当は風がついて来ているかどうか確認したかったが、自分の生死を確認するだけで精一杯だった。
そのまま、生死の境をさ迷うこと10分。俺たちは金田の家の前に着いた。
「すごい家ですね~気に入りました~」
風が金田の家を見て感想をもらした。俺も八重も、いや誰でもこの家を見たら何かしら言葉が出てくる。
俺はホテルだと思うのだが、金田家は旅館だと主張している。
旅館と言うのは昔あった日本と言う国のホテルのことを示すらしい。
金田の父さんが日本好きだから、こうなったのだと。
旅館は木造で作られていて、中には庭園と言うものがあって松などが生えている。
「この旅館が気に入ったか。良かった良かった。」
金田がウンウンとうなずく。
「やっぱり旅館なんですか~私も日本が好きだから分かります~」
「おおっ。日本好きか。いい趣味じゃん。まあ、とりあえず中に入ってくれ。」
俺たちは金田に導かれて中に入った。中には金田の父さんがいた。
「おうっ。トラベル君に八重ちゃんか。それと…」
金田の父さんが風を見て困惑した表情をうかべた。
「ああ。親父、この人は風って言うんだ。ちょっと、いろいろあってな。」
金田のお父さんが何かを思い出したのか手を打った。
「そういや、静先生からの連絡の中でそんなことを言っていたような気がするなあ。
お前たちのことも、だいたい分かってるから安心しな。とりあえず今日は泊まってきな。
金田っ、案内してやれ。」
「おう。任しとき。」
金田が奥へと手招きした。俺たちも、それについていった。
「しかしなえ、あなたの父さんは相変わらず元気でいるわね。」
「ああ。まったくだよ。元気すぎて困っちゃうぜ。もう41だってのによ。
そういや、八重の親は大丈夫なのか?俺たちが襲われてるんだから、親だって狙われているかも。」
八重が首を横に振り、お手上げのポーズをとる。
「2人とも音信不通よ。遺跡発掘に行くといっつもこうなんだから。
まあ、2人とも魔法に関してはエキスパートだから大丈夫だと思うけど。」
八重がため息をついた。そして、2人の話を聞いていた風が俺に話をふった。
「八重さんと金田さんは分かりましたけど~トラベルさんはどうなんですか~」
その言葉に場の空気が固まった。風が俺たちの反応を見て、不安げな表情になる。
「俺の両親は1年前、事故死したんだ。死ぬまでは2人とも教師をやっていた。」
「そうだったんですか…」
風が悪いことを聞いたと感じて顔を伏せた。
そのまま、俺たちは目的の部屋まで黙って移動した。