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今回は意外な人物が再登場します。
たぶん、みなさんが忘れている人です。登場シーン短かったし…
それでは、楽しんで読んでください。
ゼウスの矛を投げつけた人物は…金田の親父だった。
「親父!?何でここに居るんだ?」
金田が驚く。その気持ちは俺たちも同じだ。どうやってここに来たんだ。
「とりあえず話しは後だ。」
親父さんが瞬間移動してゼウスの矛を拾う。そして、アダムに斬りかかる。
圧倒的な突きのラッシュだ。まるで、一枚の壁のように隙間のない突き。
しかし、アダムをそれを寸前で避け続ける。
「さて、お前たちも驚いてることだし種明かしすっか。
実は金田の服に発信器を付けといたんだ。それをたどって来たんだよ。」
「いつの間に!?てか、いつも付けてるわけじゃないよな!」
金田が自分の服を確認する。
「別にいつも付けているわけじゃない。今回だけだよ。お前たちが、おじさんの家に泊まったのを覚えているか?
そん時に付けたんだよ。静先生から大体の事情は聞いていたしな。
ちゃんと、来る途中に静先生のことも助けておいたよ。だから安心しろ。
そして、俺の魔法は少し先の未来を見るものだってのは分かるよな。だから、ベストタイミングで来れたんだよ。
風ちゃんは分かるんじゃないかな。前に対局した時にこの魔法をついつい使っちゃったんだよね。
だから、君の指し手を見ずとも勝てたんだ。いやはや申し訳ない。
さあ、おじさんも助けに来たことだし。アダムを絶対に倒すぞ。
このゼウスの矛を使えばアダムの体に傷をつけることが出来る。
こいつを止めないと世界は終わるからな。」
「どういうことだよ親父!」
「う~んとな。よく、闇がある所には光があるとか、悪がある所に正義あり、とか言うだろ。
つまり、全ての物事はそれと正反対、またはそれに準ずる何かが必要なんだよ。
仮に、1日ずっと太陽が登っていたら昼とか夜はなくなるだろ。
昼じゃないから夜なんだ。夜じゃないから昼なんだ。
つまり物事は何か比べることが出来る指標が必要なんだよ。
他のものと違いがあるから、それに名前をつけて区別するんだろ?
つまり、全てが平等になったらそこには何もない。あるのは『無』だ。
アダムは何かと理由をつけて全てを破壊し尽くすだろう。全てを『無』にするために。
だから、倒さなければいけない。絶対に。」
みんな頭の中で情報を整理する。とりあえず、状況はなんとなく理解したと思う。
「あなたの攻撃パターンは理解しました。」
親父さんが説明を終えた時にアダムがそう言った。
宣言通りに、親父さんの突きを次の攻撃が読めるかのように避ける。
そして、親父さんの突きを避けながら後ろに下がって親父さんと距離をおく。
そして、隙をみて瞬間移動して親父さんの背中に回り込む。
それを見た風が横から突風を飛ばしアダムを壁に叩きつける。アダムは壁に深く埋まる。
「助かったよ風ちゃん。でも、油断しちゃいけない。あいつはこの程度では倒せない。
しかも、まだ生まれたばかりなんだ。つまり、これから成長していくと言うことだ。
速く倒さないと、取り返しのつかないことになる。」
親父さんがゼウスの矛を構える。ゆっくりアダムが動き出す。
そして、全身が壁から出てきた瞬間に親父さんが瞬間移動して斬りつける。
どうやら、親父さんも途中で魔石を拾っておいたらしい。
アダムは親父さんの斬撃を避け、親父さんを蹴り上げる。
親父さんは空中で風の魔石を使い、方向転換してもう一度斬りつける。
しかし、それも簡単に避けられてしまう。確実にアダムの動きは良くなり始めている。
八重が分身を出して、その分身が瞬間移動してアダムのことを押さえつけようとする。
だが、それもアダムの指から出したビームですぐに消されてしまう。
「危ない!」
ノウが叫ぶ。その声に反応して親父さんが後ろに下がる。
そして、少し遅れて光の柱が落ちてきた。GODだ。
「GODとのリンク、再起動完了。動作確認。」
アダムが呟く。
「そうだわ!確かにボルトは倒したけれどGODは壊してはいなかったわ!」
八重が大声をあげる。最悪だ。八重の言ってるとおりGODは破壊していなかった。取り返しのつかないミスだ。
「くそっ!親父、魔法で未来が見えるんだから何とかならねえのか!」
金田が親父さんを見る。
「確かに未来は見えるが、集中する必要があるんだよ。だから、これはお前に任した。」
親父さんが矛を金田に投げる。金田がそれを慌てて受けとる。
「未来が見えると言っても、未来は刻々と変わっていく。
だから、逐一おじさんが指示をだすから。みんな、それにしたがってくれ。」
俺たちはうなずく。そして、金田がアダムに向かって全速力で走り出す。
そのままアダムを斬りつける。アダムは避けて、逆に金田に向けてレーザーを放つ。
ぎりぎりで金田は避け、お返しにもう一度斬りつける。アダムはそれも簡単に避ける。
「金田!後ろに下がれ!」
親父さんが叫ぶ。金田はすぐに後ろに下がる。次の瞬間、金田のいたところにレールガンが落ちてきた。
「まだまだ来るぞ!ノウ君右へ!八重ちゃん前へ!トラベル君後ろへ!」
俺たちはそれぞれ指示にしたがって避ける。
「みんな、もう少し耐えてくれ!もう少ししたら静先生が来てくれるから。」
「静先生が!?」
「そうとも。傷が癒えたらすぐに来てくれるんだ。そしたら、レールガンは何とかなるかもしれない。
だから、それまで耐えきるんだ。いいな!」
『もちろん!』
俺たちは力強く答える。静先生が来てくれれば百人力だ。
「ノウ!ここの金庫室の場所を教えてくれ!」
金田がノウの方を見る。ノウも金田の呼びかけに応じて金庫室の場所を調べる。
魔法で紙に金庫室の地図が浮かびあがる。
「ここです。」
ノウがその地図を丸めて金田に投げる。金田は地図を受け取って、すぐに広げる。
「よし、場所は分かった。ちょっくら行ってくるから、これは任した!」
金田がゼウスの矛を八重に投げる。そして、瞬間移動した。
「待ちなさい!」
八重の言葉は金田には届かない。少し遅かった。
「…仕方ないわね。私の力を見せてあげるわ。」
八重がゼウスの矛をアダムの上に投げた。そこには、分身の八重がいた。
分身がアダムに向かって矛を投げる。しかし、アダムはとっさのことにも反応し、避けた。
矛が地面に突き刺さる。アダムがそれを引き抜こうとする直前、また現れた分身が矛を先に引き抜く。
そのままアダムを斬り上げる。刃先がアダムの腕をかする。
「どう?私の魔法は。分身はどこにでも出せるのよ。」
分身の八重が喋る。そして、消えた。
が、すぐに現れた。アダムがそのことにより避けるタイミングを間違い、矛がアダムの肩に傷をつける。
「どう?こうやって自由に出したり消したり出来るのよ。タイミングがつかめないでしょ。」
八重は分身を不規則に出し入れし、アダムを矛で突く。
アダムはタイミングが掴めず、完璧には避けきれない。少しずつアダムの体に傷がつく。
だが、いまだ決定打となるものはなかった。そのうえアダムの反応は良くなっていく。
そして、ついにアダムの反応が分身の突きを上回る。アダムは分身の突きを避けて、分身を殴る。
分身が壁に叩きつけられて消える。その衝撃でゼウスの矛が宙に舞う。
俺はとっさに瞬間移動して矛をキャッチする。そのままアダムを斬りつけようとするが、アダムはいない。
「こちらだ。」
俺は振りかえる。アダムは空中に浮いていた。そして、俺の首を締め付けてくる。
俺は息も出来ず、声も出ない。八重が俺を助けようと、分身を出してアダムに殴りかかるが、簡単に振り払われてしまう。
親父さんも、ノウもこちらに駆け寄ってくる。しかし、途中で親父さんが止まった。
「来るぞ!一旦下がれ!」
ノウと親父さんが下がる。そこにレールガンが落ちる。
続けざまにレールガンが落ちる。それを2人は寸前で避ける。このままでは近づけない。
風がアダムに向かってかまいたちを連続で飛ばすが効き目はない。全て弾かれてしまう。
万事休すだ。俺の意識もだんだん薄くなっていく。
俺の意識が消えようとした時、金田が俺の上空に出現した。
「待たせたな!今、助ける!」
金田の両手にはゼウスの矛が握られている。いったいなぜ。
アダムも金田がゼウスの矛を持っているとは思っていなかったようで金田の攻撃を避けれない。
矛はアダムの腕を切り落とした。その反動でアダムが俺の首を放す。
「危ねえ。あやうくトラベルが死ぬとこだった。なんとか間に合った。」
金田が胸を撫で下ろす。
「さあ、こっから反撃開始だ!」