配信者ビビイ(仮名)にさらに200万円を欺かれそうになった話
私が最後に払おうとした200万円は、
「借金200万円が返せれば、ご機嫌で配信できるし、旅配信もできる」
という、推してるファンからすると、平和な未来だった。
私は、その甘い言葉に一瞬、未来を見た。
この人が立ち直る姿。
楽しそうに旅をする姿。
「応援してよかった」と思える結末。
そして私は、
この人の未来を応援したいと思った。
振り込み画面を開き、金額を入力し、
本当に、あと一歩のところまで行った。
そこで、我に返った。
これまでの四年間で、私はすでに約200万円を欺かれている。
東京に引っ越すと言われて出した60万円。
結局引っ越しはせず、自作自演で自殺したことにして視聴者を心配させる、という別の演出が始まった。
配信中に「金が不安だ」と不機嫌になるたび、空気を和らげたくて払った計約140万円。
――払っても、払っても、また不機嫌になる、の繰り返し。
そう思った瞬間、指が止まった。
ちょうどその頃、ビビイは配信で露骨に言うようになった。
「今、金を払わねえ古参はいらねえ!!消え去れ!!」
私は、追い詰められた気持ちになった。
払わなければ見捨てる。
払わなければ排除する。
払わなければ、お前は“理解者”ではない。
そして極め付けに、彼はこう言った。
「たとえ借金200万円が返せても、借金200万円の設定はやめない!!」
この一言で、すべてがはっきりした。
借金は問題ではない。
返済は目的ではない。
これは“状態”だ。
永遠に続く、金を引き出すための設定。
その瞬間、私はようやく理解した。
ここで200万円を払っても、何も終わらない。
終わらないどころか、私は正式に「払う側の人間」として固定される。
だから、払わなかった。
200万円は振り込まなかった。
そして今、心底、払わなくてよかったと思っている。
そして同時に、強烈な恥ずかしさが込み上げた。
私は、自分の母が統一協会に多額の献金をしていたことを知っている。
「信じれば救われる」
「支えれば報われる」
そう言われ続けて、お金を差し出していた。
私は、あれと同じことをしていた。
教祖のように振る舞う人を信じ、
選ばれた理解者でいようとし、
不安と希望を巧妙に混ぜられた言葉に、未来を託しかけていた。
気づいた瞬間、ぞっとした。
そして、恥ずかしくなった。
今、残っているのは、
欺かれたという痛い経験と、
自分がどこまで行きかけていたかという冷や汗だけだ。
もう、彼のご機嫌取りの維持費は払わない。
もう、誰かの人生の赤字を、私の口座で補填しない。
配信者ビビイ(仮名)は、これからも語るだろう。
「金が足りない」
「理解者がいない」
「世間が悪い」
その物語りで使い捨てられる財布役に、私はもう、ならない。




