表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

ぽわかり 第4話【小】 まだ名前はない


忘れ物に気づいた朝のお話です。


まだ習慣になる前。

まだ名前もない頃。

でも、少しだけ「やり方」が生まれ始めた朝です。



朝の教室は、少しざわざわしている。

朝の会が終わって、一時間目までの短い休み時間。

ぽわぁは自分の席に座ったまま、鞄の中をひっくり返していた。

机の上には、筆箱とノートがきちんと並んでいる。

「……あれぇ?」

小さく首をかしげて、もう一度鞄をのぞく。

それを見て、近くの席のかりんが顔を上げた。

「どうしたの、ぽわぁちゃん?」

「えっとねー……算数の教科書、ないかもー……」

ぽわぁは困ったように笑った。

深刻そうというより、「あれ?」くらいの顔。

かりんは一瞬だけ目を見開いて、それからすぐに立ち上がった。

「……本当に?」

「うんー。おうちの机かもー」

かりんはぽわぁの鞄の中を一緒に確認する。

ノート、下敷き、定規にコンパス。

やっぱり、算数の教科書だけがない。

「……授業、もうすぐ始まっちゃう」

「隣の子に見せてもらえば良いよねー?」

ぽわぁはあっさり言った。

かりんは少し考えてから、首を横に振る。

「先生に言って、それから隣の子にも授業の前に言っておいたほうがいいと思うの!」

そう言って、ぽわぁの手首をそっとつかんだ。

「先生に言いに行こう!」

「かりんちゃんが?」

「一緒に行くの!」

二人で教室の前の方へ向かう。

黒板の前には、すでに担任の先生が来ていて、教材の準備をしていた。

「先生!」

かりんが声をかけると、先生は振り返る。

「どうしたの?」

「ぽわぁちゃんが、算数の教科書を忘れてしまって……」

ぽわぁはぺこっと頭を下げる。

「ごめんなさーい」

先生は少しだけ驚いた顔をしてから、穏やかにうなずいた。

「そうなの。今日は隣のお友達に見せてもらいなさい。」

「はーい!」

「それにしても、最近ちょっと忘れ物が多いみたいね。

朝、もう一度だけ確認できるといいかしら。」

先生はそれだけ言って、黒板の準備に戻った。

席に戻る途中、ぽわぁが小さく言う。

「怒られなかったねー」

「怒られなかったけど、忘れ物に気をつけないと!」

かりんはそう言いながらも、少しだけ安心したようだった。

席に戻ると、かりんはぽわぁの机の上をちらっと見る。

ノートはある。筆箱もある。

「……ねぇ、ぽわぁちゃん」

「なぁに?」

「朝、ちゃんと鞄の中、見た?」

「見たよー。たぶんー」

「……“たぶん”じゃなくて」

かりんは少し考えてから、ぽわぁの方を向いた。

「一個ずつ、確認したほうがいいと思うの!」

「確認?」

「うん。声に出して、とか」

ぽわぁはぱちぱちと瞬きをする。

「声に出すの?」

「そうしたら、忘れにくいって聞いたことがあるの!」

ぽわぁは一瞬考えてから、にこっと笑った。

「それ、いいかもー。楽しそー!」

「楽しいかは分からないけど……」

チャイムが鳴って、算数の授業が始まる。

ぽわぁは隣の子の教科書を見せてもらいながら、さっきの言葉を思い出していた。

声に出して、確認する。

それだけで、何かが変わる気がした。

まだ名前はない。

でもそのやり方は、いつのまにか、ぽわぁとかりんの朝に残るものになっていく。


窓の外から、校庭の声がかすかに聞こえてくる。





まだ「しっかりんチェック」という名前はありません。


ただ、

声に出して確かめると、

少しだけ安心できる。

それくらいの感覚でした。


この朝の出来事が、

あとで名前のつく習慣になるとは、

この二人は、まだ知りません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ