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ぽわかり 第3話【小】きっかけと足りなかったもの

しっかりんチェックがない頃の宿題のお話です。


一緒にやれば終わる。

でも、それだけじゃ足りなかった。

そんな、ちょっとだけ困った朝につながるお話です。




教室の空気が、少しだけ重たい。

黒板の前で先生が言った。

「じゃあ、昨日の宿題、提出してください」

がさがさと紙の音がして、先生の机の上にノートが並んでいく。

かりんも、きちんと宿題のページを開いて、教壇へ向かおうとした。

……その横で。

ぽわぁは、動かなかった。

「ぽわぁちゃん……?」

ぽわぁは、へにゃっと笑った。

「えっとねー……宿題、忘れちゃったー……」

先生が近づいてくる。

「ぽわぁさん、宿題は?」

「……やってないです……」

教室が、少しだけ静かになる。

先生はため息をつくでもなく、叱るでもなく、穏やかに言った。

「そう。今日は放課後に居残りで、昨日の分の宿題をやっていきましょう」

「はーい……」

ぽわぁは、しゅんと肩を落とした。

授業が始まっても、かりんは問題に集中できなかった。

黒板の数字が、頭に入ってこない。

――また、だ。

責めたいわけじゃない。

でも、どうしたらいいのか、分からない。



休み時間。

ぽわぁは机に突っ伏していた。

「私も一緒に残って手伝うから、すぐ終わるよ!」

「……ごめんね、かりんちゃん」

「大丈夫!」


放課後の教室は、昼間よりもずっと静かだった。

ぽわぁの宿題を見ながら、かりんは考える。

どうすればいいんだろう。

何をすれば、忘れなくなるんだろう。

「終わったー!かりんちゃんありがと〜!」

「一緒に帰りたいから残っただけだよ。先生に出しに行こう!」


提出を終えて、二人で下校する。

帰り道で、かりんはふと思いついた。

「ねえ、今日、ぽわぁちゃんのおうち寄ってもいい?」

「遊びに来るの?いいよー!」

「遊びじゃなくてね。宿題、先にやっちゃおうと思って」

「一人でやるより楽しそー!それに、かりんちゃんがいたら忘れないね!」

その日の帰り道は、いつもより少し早足だった。

ぽわぁの家は学校のすぐ近くで、寄り道というほどでもない。

机に向かって、二人並んで宿題を広げる。

計算ドリル。漢字ノートへの書き取り。

ぽわぁは途中でぼーっとしたり、文字を間違えたりしながらも、

かりんに言われるたびに、ちゃんと手を動かした。

「はい、次」「はーい」「そこ、書き順違う」「えへへー」

夕方になる頃には、全部終わっていた。

「よし!これで大丈夫!」

「これで大丈夫だねー」



――次の日の朝。

「……あれ?」

ぽわぁは鞄の中をのぞいていた。

机の中。鞄の中。

のぞいて、止まって、またのぞく。

動きが、だんだんゆっくりになる。

「どうしたの?」

「宿題……おうちかもー……一緒にやったのに……」

かりんの頭が、一瞬真っ白になる。

「昨日、一緒にやったのに!?」

「うんー。机に置きっぱなしだったかもー……」

「持ってくるの忘れたってこと!?」

「たぶんー」

朝の会が終わり、先生が前に立つ。

「じゃあ、宿題出してね」

かりんはすぐに立ち上がってぽわぁの手を引いた。

そのまま教壇の前まで行って、先生に向き直る。

「先生!ぽわぁちゃん、宿題はやりました!昨日、一緒に全部やりました!」

教室が少しだけざわつく。

ぽわぁも慌てて言った。

「ほんとですー!やりましたー!」

先生は二人を見て、少し考えるように目を細めた。

かりんもぽわぁも、こんなことで嘘をつく子ではないことを、先生は知っていた。

それから、ふっと笑った。

「そうなのね。じゃあ今日はいいわ。次は忘れずにね」

「はい!」

席に戻ると、かりんはぐったりと机に手をついた。

「……やったのに、忘れるなんて」

「ごめんねー」

かりんは、ぽわぁの鞄を見て、それから机を見て、考える。

一緒にやれば、宿題は終わる。

でも、それだけじゃ足りない。

「……次は、どうしよう?」

答えはまだ、思いつかなかった。



宿題は終わっていました。

でも、提出はできませんでした。


「やる」と「持っていく」は、

ぽわぁにとっては、まだ別の問題だったのかもしれません。


一緒にやることはできても、

一緒に忘れない方法は、まだ見つかっていない二人です。


※ちなみに「ぽわぁ」はあだ名のつもりです。

本名はまだ作者も知りません。

なので周りの友達も先生も親ですら、しばらくは「ぽわぁ」と呼ぶことになりそうです。


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