プロローグ
死ぬのは怖い。生きるのも怖い。だから、生死の境目が苦痛でしかなかった。死ねるなら死にたかった。生きろというのなら、地獄から出してほしかった。
_ミタリアは馬鹿だ。
自分を捨てた親が迎えになんて来ないのに、毎晩のように月に祈っていた。
『お母様がケーキを焼いて、お父様が門の前で手を振ってわたしを迎えに来てくれるの』
そう笑顔で言うミタリアは私の苦痛も知らなかった。でも、ミタリアは馬鹿だから_
靄がかかったように、そこからの記憶は思い出せなかった。
気づいたら裸足のまま孤児院を飛び出していた。身体中が悲鳴を上げるほど痛い。折れたであろう右腕も、感覚のない両足も庇うことなく走った。
……いや、逃げてたんだ。あの地獄のような日々から。
そこは『ミタリア』が物語を紡ぐのに一番嫌いな場所だった。降り止まない静かな雨と湿った路地裏、蛾が張り付いた街灯。
『ミタリア』が嫌いな、希望の欠片が一つも落ちてない場所。それと、私が死ぬに一番相応しい場所。
コツコツという、孤児院では聞いたことがない音が聞こえた。促されるように振り返ると、そこには傘を差さずに立つ男がいた。よく見ると男の着ているコートには血が飛んでいた。顔はちょうど見えなかった。
「…あ」
_捕まる。連れ戻される。戻りたくない。生きたくない。殺して。まだ生きたい。殺さないで。助けて。放っといて。
声にならない声が私の口から溢れた瞬間、意識が飛んだ。
もう全部、どうでもいい。
一人称の漢字を間違えたので『改』です!




