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ざんばらら  作者: 秦江湖
2/19

暗くてうるさいトンネルを抜けると、視界がパッと明るくなった。

「海だよ!海!」

彩が窓の外を指さして嬉しそうに言った。

「あんた騒ぎすぎ」

彩の向かい、窓際に座る奈美が注意する。

「だって海見えたらテンション上がんない?」

言い返す彩。

アタシは通路を挟んだ向かいの席から、みんなのやり取りを笑いながら見ていた。

お盆の時期を過ぎていたから電車の中は空いている。

「沙耶、写真撮ってやるから向こう行けよ」

「ありがとうございます」

隣に座っていた敏樹先輩に言われて女子席の方へいく。

「みんな記念写真いくよ」

アタシが言うと、向かい合わせに座っていたみんなが敏樹先輩の方を向く。

アタシを真ん中にして、敏樹先輩はスマホの撮影

アタシは辻本沙耶。

高校二年生の17歳。

髪はちょっとウエーブかかった茶髪のロング。

見た目はギャル。

友達に言わせると性格はサバサバしてるらしい。

すきなものは遊び。

さっき窓の外を見ていてテンション上げてたのが大島彩。

アタシらのメンバーの中では一番背が低くて童顔。

性格もちょっと甘えん坊なとこがあるかな。

で、彩を注意していたのが菅野奈美。

コミュ力が高くて、けっこう顔が広い。

アタシらの中では唯一のショートカット。

二人の向かいに座っているのが、遠藤杏と池上由佳。

杏は黒髪ロングで大人っぽいキレイ系。

外見はクールに見えて近寄りがたいけど、けっこう友達思いでいい子。

由佳はいつも明るくて、メンバーのムードメーカー。

中学の時から一緒の奈美と一番仲がいい。

アタシらは全員同じクラス。

クラスの中では目立ってるみたいで、遊んでるギャルグループなんて言われてる。

まあ、事実なんだけど。

今日一緒に来ている男子のグループは三人ともアタシらの学校の先輩。

まず、アタシの隣に座っているのが加藤敏樹先輩。

長身のイケメンで、学校でも人気がある。

そこそこ遊んでてセンスも良くてカッコイイ。

敏樹先輩の前に座っているのが、斉藤直也先輩。

性格は明るくて、いつもみんなを笑わせてくれる。

その隣が土田佳祐先輩。

三人の中では一番口数が少なくってクールに見える。

でもアタシらには優しいし、面倒見がいい。

アタシ達のグループと敏樹先輩のグループは今年の春くらいから遊ぶようになった。

きっかけは直也先輩で、アタシ達に声をかけてきた。

先輩達はカッコよくて楽しくて、アタシらはすぐに仲良くなった。

そして夏休みになったので、みんなで泊まりで伊豆の海にでも遊びに行こうってことになったわけ。

なんでアタシが一人で男子側に座っているかっていうと、みんなが気を遣ってくれたから。

実はアタシ、敏樹先輩のことが好きなんだよね。

今までアタシらと敏樹先輩のグループは何度か遊んでて、アタシはかなり最初の方から、敏樹先輩を気に入ってた。

だから今回の旅行は、いろいろと狙ってる。

上手くいけば付き合いたいけど、そこまでもっていけるかな?

さっきも言ったように先輩はけっこう競争率高いし。

でもアタシの魅力を全開にすればいけるっしょ。

「おっし!写メ共有したいからLINEでグループ作るよー!」

「お願いー!」

さりげなくみんなでグループ作れたぞ!

早速、今撮った写メをアルバムに追加。

そのあともみんなでたくさん撮った。


窓の外に海が見え始めてから、1時間もすると目的地に着いた。

駅から外に出ると、日差しの強さと気温の高さでむわっとする。

駅前はバスの発着所があって広場みたいになっていた。

大きな建物がない代わりに、青い空には白い雲が浮かび、蝉の鳴き声がどこからともなく聞こえてくる。


ホテルに直行してチェックインしてから着替えて、海へ。

砂浜に打ち寄せる波の音と、太陽を反射してキラキラ光る海。

最高に夏って感じ。

午後からだったけど意外と焼けたし、思ったより遊べた。


夜になってから、近くのコンビニでお酒やお菓子を買って先輩たちの部屋に集まった。

最初は学校のこととか芸能人のこととか話してたんだけど、時間が遅くなるにつれて誰が言いだしたのか、夏には定番の怪談になった。

部屋の電気を暗くして、みんな順番で怖い話をしていく。

次に彩の番になった。

「実は私のお婆さんとお爺さんが昔このへんに住んでたんだよね……だから小さい頃はよくこの海に遊びに来てたんだ……」

彩の話しだと彩が中学になる頃に、お爺さんとお婆さんは東京にある彩の家に住むようになったらしい。

「なんか近くに絶対に入ってはいけない神社があるって言われたの。入ったら祟られるって言われた」

「なんで祟られるの?」

杏が彩に聞く。

「わからない……お婆さんも子供の頃にそう言われたんだって。理由はわからないけどダメなんだってさ……」

「うそ?ここって曰つきの場所なの?」

奈美が彩に聞く。

「うん……」

彩が神妙な顔で頷いた。

「でもそんな神社、地図にないよな?」

佳祐先輩がフロントから持ってきたパンフを開くと、周辺の有名スポットを載せた地図がついていたけど、神社のことは書かれていない。

「これじゃん」

直也先輩がスマホで検索すると、そこそこ有名な心霊スポットに混ざって、彩が言う神社があった。

「神社の名前とかわかんねーけど、海のそばの神社で立ち入り禁止、○○県○○町ってたぶんここだろ」

「へ~意外と有名なのかな?」

彩が画面を見ながら感心したように言う。

「せっかくなんだから明日行ってみようぜ」

敏樹先輩が言うと、直也先輩も佳祐先輩もノリノリで賛成した。

もちろん私たちも面白そうなので賛成。

「彩、場所ってわかる?」

「うん。ここの近くに森があるの。その中にあるって聞いたよ」

奈美が聞くと彩が髪の毛先をいじりながら答えた。

「じゃあ明日行って記念撮影でもしてこようよ」

アタシがみんなの顔を見て言う。

「だね!心霊写真とか撮れたりして?」

杏が枕を抱きながら言った。

「それ普通に怖いんだけど♪」

由佳が楽しそうに言う。

せっかくの夏休み。イベントは多いほどいいよね。

楽しまないと!


次の日。

アタシ達はコンビニで虫除けスプレーとか買い込んでから森に行くことにした。

「でも大丈夫かな……ちょっと不安だよ」

彩が心配そうに言う。

「大丈夫だって」

「沙耶、怖くないの?幽霊とか」

「正直、幽霊とか信じてないし、そんなもんいるわけないって」

「えっ?じゃあなんで神社行くの乗り気なの?」

「そういう雰囲気は好きだから」

「はあ……そんなもん?」

「うん」

だからアタシはこれから足を踏み入れる神社に対しても、おばけ屋敷に行くみたいな感覚だった。

問題の立ち入り禁止区域は、拍子抜けするくらいホテルの近くにあった。

「なーんかありがたみがないな……」

アタシが言うと、奈美が、

「でもこんな暑い中、歩き回るの考えたらラッキーなんじゃない?」

と額の汗を拭いながら言った。

「それ言えてるわ……暑いもん」

杏も日差しに目を細めながら言った。

神社があるという森は国道沿いにあった。

たしかに立ち入り禁止と書かれた汚い看板はあるけど、柵も何にもない。

普通に入れるでしょ?これなら。

しかも雑草が生えてるけど道みたいなのもある。

真夏の日差しをフロントガラスに反射して、何台も車が通り過ぎていく。

「とりあえず行ってみようぜ」

敏樹先輩が言うと、直也先輩と佳祐先輩も続いた。

アタシ達もあとに続く。

山に入る前に虫除けスプレーもしてきたし、迷わないようにコンビニで赤いガムテープも買ってきた。

「これを長めに切って木の枝に貼っていこー!」

アタシは由佳にもガムテープを手渡して、来た道の枝に貼り付けていく。

「帰りはこれを辿ればOKってことだね!」

同じように貼りながら由佳が言う。

「そういうこと♪」

アタシからしたら幽霊や祟りより、道に迷うほうが怖いよ。


そのままアタシ達は雑草が生い茂る道を歩いていった。

「やっぱジャージで来て正解だったね」

「うん。言えてる」

杏が歩きながら言うと、奈美が答えた。

「草とかこんなにあるんだから脚とかに触れたら気持ち悪いしね」

奈美がアタシに向かって言う。

「でしょ?やっぱ正解だったでしょ?」

暑いのが気になったけど、森に行くというからには生足出してはちょっとなって思ったから。

「私もジャージにすればよかった~」

「しょがないじゃん、だって持ってきてないんだし」

ショーパンで来た彩と由佳は脚に触れる草が気になるらしくて文句を言っている。

二人はジャージを持ってきてなかった。


「それにしても暑いね……」

「蝉の声うるさい~」

「でも夏だからあたりまえか……」

歩いていくうちに、周りに大きな樹が増えたせいか木陰ができて涼しくなってきた。

同時に少し薄暗い。

「なんか雰囲気出てきましたね?」

アタシは横を歩いていた敏樹先輩に話しかけた。

「だな」

最初は先輩達が前でアタシ達が後ろだったけど、いまは男女並んで歩いている。

10分も歩いただろうか?だんだんと辺りが静かになった気がする。

蝉の声も気が付いたら聞こえなくなっていた。

「なんだこれ?」

敏樹先輩が目の前を指さす。

見ると樹と樹の間に太い縄が張ってあった。

「これしめ縄って言うんじゃね?神社とかにある」

直也先輩が後ろから言う。

「じゃあ、もう近いってことか?」

佳祐先輩が額の汗を拭いながら言った。

「これってここから入るなってこと?」

由佳が不安げに言う。

「こっからが問題の心霊区域ってわけね♪」

アタシの中で俄然盛り上がってきた。

「とりあえず、こんなのシカトでしょ」

敏樹先輩が笑いながらしめ縄をまたいだ。

アタシ達もあとに続く。

たしかにここまできたら止まらない。

「なんか臭くない?へんな臭いするんだけど」

奈美が鼻と口元を押さえて言う。

「蠅が飛んでる音しない?」

杏がキョロキョロしながら言った。

「なんか不快だな~」

アタシも辺りを見回して言った。

とりあえず臭いのもとみたいなのは見当たらない。


少し歩くと、開けた場所に出た。

けっこう広くて、そこだけ樹が生えていない。

そこには石造りの苔が生えた鳥居があって、ひび割れた石が一直線に敷き詰めてある先にボロボロの拝殿があった。

ここが例の神社だ。

周囲は静まり返っていて、この辺だけちょっと涼しいくらい。

アタシ達はちょっとの間、この神社と境内を呆然と見ていた。

「ここだよな」

直也先輩が敏樹先輩に聞く。

「そうだな」

敏樹先輩は頷くと歩き出した。

私も歩きながら周囲を見回す。

「あっ」

ふと地面に目がいった。

降り注ぐ陽の光に地面がキラキラと光っているように見える。

「なにこれ?」

アタシはみんなの列から二、三歩はなれるとしゃがみこんで光る地面をよく見た。

地面になにか透明なものが埋め込んであるんだ。

それもそこらじゅうに沢山。

一つを手に取って、かざしてみる。

「綺麗…」

涙の雫みたいな、ちょっと曲がった形の水晶だ。

丸みを帯びた方には紐が通るくらいの穴が開いている。

「いいじゃん、これ」

これ、記念にゲットしておこう。

「沙耶、なにそれ?」

アタシが列に戻ると杏が聞いてきた。

「なんだろ?そこらじゅうにあるんだけど綺麗じゃない?私、気に入っちゃった」

「こんなとこにあるの、ちょっと気味悪くない?」

「そうかな?」

私の中では気味悪いとかいうよりも、綺麗でなんだか惹きつけられるものを感じた。

東京に戻ったら革紐でも通そうかな。

「でも綺麗でいいかも」

彩がアタシがかざした水晶を見て言う。

「うわっ...これ見てみろよ」

敏樹先輩が拝殿を指して、話していたアタシたちも顔をそっちに向けた。

扉の辺りにはやたらと字が書かれた紙が貼ってある。

ほとんどは汚れて黒くて、何が書いてあるのかわからない。

「とりあえず写真とかどうよ」

直也先輩の提案で、拝殿をバックにみんなで記念撮影をした。

「心霊写真とか撮れたら、人生初なんだけど」

奈美が興奮気味に言う。

さっきまで気味悪がってた杏も楽しそうにしてる。

何人かのスマホで入れ替わり撮ったときだった。

バタン!

背後で大きな音がして、全員が振り向いた。

拝殿の扉が開いている。

「風か?」

直也先輩が周りの草木を見ながら言う。

でも風なんて吹いていない。

「なーんかゾクゾクしてきたじゃん。ねっ?」

アタシが杏達にふる。

拝殿の奥は真っ暗で見えない。

まるで口を開けて待ってるみたい。

「入るぞ」

敏樹先輩が言うと、みんなでぞろぞろと古ぼけた階段を上り、拝殿の中に足を踏み入れた。

「なんだこれ?」

「やだ...」

中に入ってアタシ達が見たものは、壁のいたるところに貼られた文字だけの紙と、壁に書かれた文字。

これ扉にも貼ってあったな。

「うわ~これ凄いわ」

アタシは感心したように声を上げた。

「これ御札だな……壁に書かれてるのはお経みたいなもんかも」

直也先輩に言われて「ああ!これ御札か!」と納得した。

「なんでこんなに内側に向けて貼ってあるんだろう?」

杏が首を傾げる。

御札に囲まれた拝殿の奥にある祭壇にみんなの視線が向いた。

見た瞬間、なんだかゾクッとする。

アタシが寒気を感じたと同時にみんな一斉にむせた。

「ウエッ!ほこりかよ!?」

「ゲホッ...なにこれ...」

「ウゲェ!ゲッホゲホ…!」

みんな咳が止まらない。

ずっと閉められてたから埃が溜まってた?

しばらくして、ようやく咳が止まった。

喉に違和感を覚えて、まだ胸のあたりが、いがいがする感じがするけど。

祭壇には日本刀と首飾りが飾ってあって、その上に鏡が置いてある。

首飾りは私が外で拾ったものを数珠繋ぎにしたものだ。

だいぶ埃をかぶっているせいか、私のよりキラキラしてない。

アタシ達は他にも何か探したけれど、得におもしろそうなものはなかった。

「なんもねーな。帰るか」

敏樹先輩が拍子抜けした口調で言うと、みんなに拝殿から出るように促した。

拝殿から出て階段を下りたときだった。

「うっ…」

急に吐き気を催したアタシは口に手を当てたが、そのまま膝をついて嘔吐した。

全身の力が抜けたみたいになって、汗が止まらない。

最悪……なんなのこれ?

「沙耶大丈夫?」

「どうしたの?平気?」

みんな心配そうにアタシのそばに寄り添う。

なんとか立てそうだけど、好きな先輩の前でゲロっちゃうなんて最悪以外の何者でもない。

「大丈夫かよ?」

アタシが座り込んでいると敏樹先輩がしゃがんで背中をさすってくれた。

「立てるか?」

「はい…」

間近で聞かれて私がうなずくと、抱えて立ち上がらせてくれた。

うっそ!敏樹先輩やっさし~!

結局、帰り道はホテルの部屋までずっと敏樹先輩に付き添われながら帰った。


ホテルに戻ってもいまいち気分がすぐれなかったアタシは部屋で自分だけ一休みしてから海に行くことにして、みんなには悪いので先に行ってもらった。

一時間くらい寝てたら治るかな?…しかしなんで急に具合悪くなったんだろう?


コンコン…


ドアをノックする音が聞こえた。

誰だろう?ドアまで歩いて行って声をかける。

「はい。誰?」

「俺。大丈夫か?」

敏樹先輩だ。

急いでドアを開けるとTシャツに海パン姿の敏樹先輩が立っていた。

「悪いな起こさせて」

「ううん」

私がベッドに腰掛けると、敏樹先輩は窓際のイスに座った。

「先輩どうしたんですか?」

私が聞くと敏樹先輩は、ちょっと間を置いてからタバコを取り出して指に挟み、

「心配じゃん。やっぱ」

照れくさそうに言った。

「気にしないで遊んできたらいいのに。もったいないですよ」

私が笑って言うと敏樹先輩は「うーん…」と考えたふうな顔をすると、私の方を見て話した。

「おまえいないと意味ないしさ……っていうか、沙耶って彼氏いるの?」

「えっ…いませんけど…」

なになに?このシチュエーション!?

「俺、沙耶のこと好きなんだけど」

「えっ!?マジで!?うっそでしょ!?」

しまった!思わずタメ口になってしまった!

「だから心配でさ。海とか呑気に遊んでる気しなくてさ」

アタシは嬉しくて仕方なかった。

ほんとうは今この場でガッツポーズとかしてはしゃぎたいけど、そこは我慢した。

「ありがとう…超嬉しい」

「俺と付き合ってよ」

この一言で気分悪いのは吹き飛んだ。

「うん。アタシも敏樹先輩のこと好きだから……お願いします」

「マジで?やった!」

敏樹先輩は立ち上がって喜んだ。

そんなに喜んでくれるなんて、私も嬉しくなる。

「具合良くなったしアタシも海に行くから先に行っててください」

「そっか。でも、もうちょいゆっくりしてもいいんじゃん?まだ昼前だし」

「そっか…… そうですね!」

せっかく二人きりなんだしね。

この時間を大事にしよう。

敏樹先輩はアタシの横に腰掛けると、肩に手を回して抱き寄せた。

私が寄り添うように体をあずけると、そのままキスをして二人共ベッドに倒れ込んだ。


その日の夜、またみんなで飲んでから女子だけでさらに語った。

アタシの部屋に集まって、二つあるベッドの上にみんなばらけて座る。

「沙耶、マジで敏樹先輩と上手くいったの!?」

奈美が興奮気味に聞く。

「まあね~♪」

「良かったじゃん!沙耶!」

「ありがとう!」

枕を抱きながら杏にお礼した。

「え~ちょっと教えてよ!その状況」

彩が前かがみになって聞いてきた。

「うーん、なんていうか、向こうから好きって言ってきたよ」

答えながら、今思い出してもニヤケてくる。

「えっ!じゃあ敏樹先輩も沙耶のこと好きだったんだ!?」

「そういうことになるねえ~」

驚く由佳に余裕かまして返した。

あのときはアタシもビックリしたんだけどね。

「いいな~私も彼氏欲しい!っていうか、夏の海で彼氏ができるとか羨ましい!」

「奈美も杏も頑張んなよ~浩一先輩のこと」

奈美と特に仲がいい由佳が二人を励ます。

浩一先輩っていうのは、三年生でサッカー部のキャプテン。

爽やかなスポーツマンタイプで、女子には結構人気がある。

まあ、アタシはどっちかっていうと敏樹先輩みたいにそこそこ遊んでてノリが良くてオシャレな人がタイプだけど。

「ねえ、杏~、私達も頑張ろう!?」

「そうだね!お互いね!」

奈美が杏にふると、杏は笑顔で返した。

実は、奈美と杏は同じ人が好きなのだ。

二人はライバルってことになるんだけど、そのへんは仲良しグループの和を乱さないように、恨みっこ無しってことでお互い納得してる。

まあ、好きになったもんはしょうがないよね。

「二人とも頑張れ~!ダメだった方は私がいい人紹介してあげるから」

彩が手をあげながら言った。

「彩は、ダメだったらとか言わない」

「人に紹介する前に、あんたがいないでしょうが」

アタシと由佳につっこまれた彩を見て、みんな笑った。

「どうせなら浩一先輩も、私と杏と両方付き合ってくれたらいいのにね!今日は私、明日は杏とかさ」

「なんかそれって日替わりじゃん?」

「そうそう!」

奈美と杏のやりとりを見て、またみんなで笑う。

「あー!なんか楽しいね!こういうの最高!」

「そうだね♪」

アタシが言うと杏がカクテルを飲みながら答えた。

「今しかないもんね?」

「言えてる~来年は受験だもん」

奈美に由佳が返す。

そう!来年は受験だからね。

こんなふうにお気楽にはできないかも。

「でも来年に奈美てもみんなで海とか行こうよ」

彩が、ちょっと寂しそうにみんなに言う。

「もちろん。アタシら友達だから」

「そうそう!ずっとね!」

アタシと杏が宥めるように言った。

まあ、受験っていっても一日くらいは海に行けるでしょう。

「みんなで一緒にいれるのは、あと一年半か~」

奈美がしみじみと言うと、由佳がみんなに向かって言った。

「絶対に来年も行こうね!」

「OK~!じゃあアタシらの友情に乾杯!」

「乾杯~!!」

みんなでカクテルの缶を持って乾杯した。

それから恋愛話を一通りしてから、今度は別の話題に。

時々、声の大きさに気をつけながら時間も忘れて話してた。

みんなが眠くなって由佳と奈美と彩が部屋に帰っていく。

アタシと杏が横になる頃には、空が薄紫色になっていた。

薄明かりが差し込むベッドの中で、杏がアタシの方を見て微笑みながら言う。

「沙耶、改めておめでとう!」

「サンキュー、杏!おやすみ!」

アタシも笑顔で返した。

改めて言われると、ちょっと照れくさい。


いいなぁ……こういうの。

17歳の夏は最高の思い出になったよ。

これも、みんながアタシの友達でいてくれたおかげだ。

ありがとう!

目を閉じながら、みんなの顔を思い浮かべた。


今年も最高の夏休みの思い出ができた。





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