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第十五章 ロイズ伯爵の悪あがき

「ああ~、スッキリしたぁ!見た?バレッタを取った時のあの子の顔!もうほんと、ざまぁって感じ!」


ロイズ一家を追い返す作戦は大成功に終わり、ティーはマリナたちと共に自分の部屋へと戻ってきた。


部屋の中は、侍女たちが朝までに元通りに片付けてくれていた。そしてこの部屋で、マリナたちは朝早くから、作戦に向けてティーを完璧にスタイリングしてくれたのだった。


晴れやかな笑顔で語るマリナだったが、隣のアンヌは苦笑を零し。


「ほら、マリナ、嬉しいのはもう十分分かったわ。そろそろ手を動かして、ティーの着替え、手伝ってあげて」


「えっ…だって、着替えちゃうの勿体なくて…!今のティー、こんなに綺麗なのに!どんな国のお姫様にも負けないくらい!」


ティーとアンヌを交互に見つめながら、マリナは目を潤ませて訴える。


実際、マリナが丁寧に仕上げたティーのメイクもヘアも、鏡を見たティーが思わず自分に見惚れてしまうほど、見事な出来栄え。もはや、マリナの“作品”と呼んでいいほどのクオリティだ。


その言葉にはアンヌも、納得した様子で頷いて。


「確かに、ほんとに綺麗よ、ティー。マリナにこんな才能があったなんて知らなかったわ」


アンヌがそう言って微笑む前で、ティーとマリナは顔を見合わせ、それぞれに照れ笑いを浮かべた。


「アンヌさんも、ありがとうございました。こんなに素敵なドレス、一晩で用意するなんて大変だったんじゃありませんか?」


「あら、そんなこと。そのドレスね、亡くなった大奥様のものなのよ」


不安げな瞳のティーに、アンヌはにっこりと笑みを浮かべ。


「ティーは大奥様に似て小柄で華奢だから、手直しもほとんど必要なかったの。私の見立て通り、良く似合ってるでしょう」


「大奥様の…!そんなに、大切なドレスだったんですか?」


ティーが目を丸くする中、アンヌはいつも通りのウィンクをぱちり。


「クライン家の花嫁に、代々受け継がれてきたドレスよ。きっと大奥様も、天国で微笑んでらっしゃるわ」


そう言って、アンヌがふと窓の外を見やる。


今は亡き、セルジオの妻、そしてセレスティンの母だった女性。アンヌの瞳を見ていれば、彼女がどれだけ慕われていたかが窺い知れる。


しかし、アンヌはすぐにティーに視線を戻すと。


「さ、勿体ないけど、その格好じゃ朝ごはんも食べられないわ。早く着替えましょうね」


「はぁ~い…」


不満げな返事を零しながらも、マリナはしぶしぶティーの背に回り、ドレスのレースアップをほどき始めた。その横でアンヌも、手際よくアクセサリーを外していく。


「ほら、マリナもそんな顔しないで。…そうねぇ、マリナには、次は結婚式のスタイリングもお願いしようかしら?」


「け、結婚式…!?」


ティーが驚いて思わず声を上げ、マリナはぱぁっと明るい笑顔を弾けさせる。


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