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14-8 クライン家の反転攻勢

「マクシム君には、いつか礼をしなければと思っていたのだよ。君のお陰で、息子はこんな素敵なお嬢さんとのご縁に恵まれたのだからね。昨晩の宴は、心ばかりの感謝の印だ。楽しんでいただけたようで何より」


「い…いやいや、辺境伯殿!悪い御冗談ですぞ!よりによってティーと…ご子息が結婚するなど!!」


にこやかに語るセルジオの前で、ロイズ伯爵は引きつった笑みを浮かべている。


「マクシム君。僕が、冗談でこんなことを言うと思うかね?」


「そ、そんな…まさか」


どこまでも爽やかなセルジオの笑顔を前に、伯爵の顔はどんどん蒼白になっていき――やがて、堰を切ったようにまくし立てる。


「有り得ない!ティーはみすぼらしい使用人ですよ!?アリーシアとは雲泥の差…いや、比較するのも馬鹿馬鹿しい!セレスティン君と不釣り合いにも程がある!!」


「ほう、『みすぼらしい』、とは。はて…」


そう言って首を傾げながら、セルジオは佇む2人を見やった。


セレスティンのタキシードは瞳の色に合わせ、深い蒼色を基調としたデザイン。同じ色合いでそろえたティーのドレスは、シックな造りながら、艶やかなシルクでたっぷりと裾が広がる優美なシルエット。


髪は華やかなアップスタイルに整えられ、ナチュラルに煌めくメイクを施したティーの姿は、昨夜とは見違えるほどに美しかった。


「僕には、とても似合いの2人に見えるが。皆もそう思わないかね?」


セルジオが使用人たちに問いかけると、皆揃って大きく頷く。


特に、ティーのスタイリングを担当したマリナは、零れる笑みが抑えきれないようだった。ノエラはティーの晴れ姿に、瞳にうっすらと涙をためている。


家族からの祝福の眼差しを受けて、セレスティンとティーは顔を見合わせ、穏やかに微笑み合った。


「…何よ、それ…」


そんな中、怒りに唇を震わせるのは――アリーシアだ。


憎悪に満ちた瞳で、ティーを睨み付ける。ティーは思わず、びくりと肩を震わせた。


「そのドレス、今すぐ脱ぎなさい!アクセサリーも全部!それは私のものよ!セレン様の婚約者は、私なんだから…!!」


怒り狂ったアリーシアは荒々しく席を立ち、ティーに詰め寄る。


セレスティンがティーを庇うように前に立ち、同時にルーが、アリーシアを後ろから両腕で抱え込んで止めた。


「アリーシア様、お席にお戻りください」


「何するの、離して!あんた、使用人のくせに私に命令するの!?」


アリーシアはルーの拘束を解こうと暴れるが、ルーもしっかりと押さえ込んで離さない。


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