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14-7 クライン家の反転攻勢

「ですから、セレスティン君とアリーの結婚の件です。式の日取りはいつにいたしましょう?会場は?来賓は誰を招きましょうか」


「折角のお式ですもの、王都で盛大に開催したいですわね…そうだわ、王宮のホールを貸し切っては如何でしょう?」


「お父様、私、ウェディング・ドレスは自分で選びたいの!いいでしょう?」


盛り上がるロイズ一家だが、セルジオは不思議そうに首を傾げてみせると。


「はて。皆さま、何か勘違いなさっておられるようですな」


思い思いの結婚式を語らっていたロイズ一家が、その言葉にぴたりと口を止める。


時が止まったような空気の中で、セルジオはにっこりと笑みを浮かべてから。


「私は、息子とアリーシア嬢を結婚させるとは、一言も申しておりません」


「は…?へ、辺境伯殿、それは、どういう…」


そう。昨夜の夕食会でも、セルジオは結婚については何も言及していない。ロイズ家が早とちりして、勝手に話を膨らませていたに過ぎなかった。


魚のように口をパクパクさせる伯爵を尻目に、セルジオは涼しい顔で。


「さて、そろそろ準備が出来たようですな。セレスティン、入りなさい」


セルジオの声を合図に、侍女たちがダイニングの扉を開け放つ。


その向こうから現れたのは――タキシードとドレスで正装した、セレスティンとティーだった。


「皆さまにも、是非お伝えしたいと思いましてな。この度セレスティンと、こちらのレティーシア嬢が、婚約することとなりました」


そう宣言したセルジオの笑顔は、これまでティーが見た中で一番、誇らしげに輝いているようだった。



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昨夜、セレスティンが考え出した“作戦”。


それは、『ロイズ一家の前で、ティーとの結婚を宣言する』、というものだった。


ロイズ家にお暇願うためには、兎にも角にもアリーシアとセレスティンの結婚を諦めてもらわなければならないが、自分たちの都合しか頭にない彼らのことだ。やんわりと断った程度では引き下がらないだろう。


しかし、セレスティンに既に婚約者がいたとしたら?


いくら社交の常識が通用しない彼らであっても、この状況に置かれては、さすがに自分たちの立場を理解するはずだ。


セレスティンは、アリーシアと結婚する気はない。つまりクライン家にとって、ロイズ家は“招かれざる客”であることを。


そして、セレスティンたちの狙い通り。


ロイズ家は3人揃って、仲睦まじく並んだセレスティンとティーの姿に、呆然と固まっていた。


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