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2-4 エレノアたちの謀略

止むことのない揺れと車輪の軋む音の中、ティーは静かに目を閉じる。


今回の辺境伯家への出向だって、ロイズ伯爵から命じられればティーに断る権利など無い。


ロイズ家において、主の言うことは絶対だ。


(…ねぇ、お母様。これが私の、運命、でしょうか)


瞼の裏に浮かぶ、母の笑顔に問いかけても、決まって何も答えてはくれないのだった。


――しかし、ティーはまだ知らない。


彼女を取り巻く運命の歯車が、大きく動き出していることに。



☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩*✯☪︎⋆。˚✩☪︎⋆



「じゃあ、ティーはもう辺境伯家に向かったのね?これでしばらくあの辛気臭い顔を見なくて済むんだから、お父様も清々したでしょう!」


朝食の席で、晴れやかな笑顔を浮かべたアリーシアが言うと、ロイズ伯爵も頷き。


「うむ。やはりお前は賢い子だね、アリー。考えてみればアリーはこれから3か月間、王宮に住み込みだからな。身の回りのことはあちらの侍女たちがやってくれるだろうし、ちょうど良かった」


父親から褒められて、アリーシアは得意気に胸を張りながら、フレンチトーストを口に運ぶ。


――腹違いの姉から全てを奪うことは、とても容易かった。


アリーシアはただ、エレノアの言う通りにしただけだ。父と母の結婚パーティーの場で、客人たちを出迎える時間帯、ティーを呼び止めてわざと怒らせるように仕向ける。


そしてタイミングを見計らい、階段を転げ落ちる演技をする。さも、義理の姉に突き飛ばされたかのように見せかけて。


アリーシアを溺愛していたロイズ伯爵は激怒し、エレノアの狙い通りティーを勘当した。邪魔者は排除され、そしてアリーシアは何でも言うことを聞く召使いを手に入れた。


当然のことだ。何の精霊色も持たない無価値な人間であるティーと違って、アリーシアは選ばれた存在。アリーシアこそ、全てを手に入れるにふさわしい。


上機嫌で食事を進めるアリーシアだが、ここで隣に座るエレノアは優雅にティーカップをソーサーに戻しつつ、娘を見やると。


「さあ、これで辺境伯家の一件は片付いたことだし、あなたも出発の準備を進めなければ。アリー、旅支度は出来ているの?」


「勿論!ティーに言って、もうあらかた済ませてあるわ」


エレノアに聞かれ、アリーシアは自信たっぷりに頷いて見せる。


「ああ、これから私も王宮のパーティーに参加できるのね!殿下に相応しい令嬢になれるように、ドレスもアクセサリーもたくさん詰め込んだのよ」


リリー・プログラムの受講者は期間中家を離れ、王宮で暮らしながら勉学に励む。プログラムの中には、実際の茶会や夜会に参加する『実地試験』も含まれており、そこには当然、名だたる王侯貴族に加え、レアンドル王子も出席するのだ。


華やかな王宮のホールで、レアンドルにエスコートされながらダンスを踊る自身の姿を想像し、アリーシアはうっとりと宙を見つめた。


「私も早く、殿下のお隣に並ぶお前の姿を見たいものだな。頑張るんだぞ、アリー」


「ええ!」


アリーシアは満面の笑みで頷き、グリルチキンを美味しそうに頬張るのだった。



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