12-2 ロイズ家の来訪
その姿に、途端に顔を輝かせたのは、アリーシアだ。
「セレスティン様!ようやくお会いできましたわ!」
言うなりアリーシアはセレスティンに駆け寄ったかと思うと、その腕にぎゅっと抱き着いた。
セレスティンがぎょっとするのも構わず。
「私、セレスティン様に助けていただいたお礼をどうしても伝えたくて…それでこうして、会いに来たんです。1日中馬車に揺られるのはとっても辛かったですわ」
「は…?一体、何を言って…」
瞳を潤ませ、頬を紅潮させセレスティンを見つめるアリーシアに対し、セレスティンは持病の『アレルギー』が発動しているようだ。身体をよじってどうにか離れようとするが、アリーシアは腕を緩めない。
と。
「おやおや。夕食をとろうと思ったら、今日は随分と賑やかだね」
玄関ホールに、新たな靴音と朗々とした声が響く。
「これはこれは、辺境伯殿。ご無沙汰しております」
皆の注目を一身に受け、悠々と階段を下りてきたのは、セルジオだった。
「マクシム君。こんな時間に、一体何事だね?」
「お夕食時にお邪魔して申し訳ありません。しかし、過日いただいていた手紙のお返事を、いち早くお伝えしたかったものですから」
「手紙…?」
セレスティンが、そう言って眉をひそめる中。
ロイズ伯爵は、大きく頷いてから。
「クライン家のご令息から、アリーシアへの求婚。謹んで、お受けいたしましょう」
ロイズ伯爵が一礼し、アリーシアはキャッと声を上げ、両手で顔を覆って恥じらって見せる。
対してセレスティンとセルジオは一瞬呆気にとられた後、意味深に視線を交わした。
(アリーシアお嬢様が…セレン様と、結婚…?)
ティーはただ、その場に呆然と立ち尽くすのだった。




