11-5 アリーシアの心変わり
「アリーに殿下の婚約者の座を奪われることを危惧した公爵令嬢が、裏で手を回し、お前を不合格に仕立て上げたんだろう。お前のその美しい精霊色に嫉妬して、最初から目を付けていたに違いない」
「そんな…そんなこと、絶対に許せないわ…!そんな汚い手を使って、私から殿下を奪うなんて…!!」
言うなり、アリーシアは再び、枕に顔をうずめてしまう。
「アリー、許せないのはお父様も同じだ。勿論、このまま黙っているつもりもない」
今まで手塩にかけて育ててきた愛娘が、こんな卑劣な罠にかけられたとなれば、ロイズ伯爵の怒りは計り知れない。
伯爵はアリーシアの肩に、そっと手を掛けると。
「だからアリー、お父様と一緒に王宮へ行こう。真実を明らかにするために」
「真実を…?」
アリーシアが、ゆっくりと顔を上げる。
「お父様が直接王宮へ乗り込んで、この不正を訴えるのだよ。そうすればアリー、お前の不合格は当然取り消される。オルレアン公爵令嬢もただでは済まないだろう。レアンドル殿下の婚約者選定も、白紙に戻るだろうね」
「…でも、待って、お父様。私に意地悪をした人は、もう一人いるわ。マクレインっていう主任教官よ。きっとあの人も共犯なんだわ…王宮に乗り込んでも、あの人にまた追い返されて終わりよ」
アリーシアは不安げに言うが、伯爵は余裕の笑みを崩さない。
「心配いらないよ。お父様は既に、国王陛下と直接面会するための申請状を、王宮に出しておいたからね」
「国王様に…?」
アリーシアがまた、目を見開く。ロイズ伯爵も、自信たっぷりにうなずいた。
「そうだよ。明日の朝一番で王宮に向かおう。だからアリーシア、今夜からしっかり準備しておくんだ。国王陛下に、失礼のないようにね」
それを聞いたアリーシアの瞳に、微かな光が戻る。
「…分かったわ。お父様、ありがとう…!」
そう言って抱き着いてくるアリーシアを、伯爵はしっかりと抱き返した。




