11-2 アリーシアの心変わり
「ほんとだ。全く不思議なもんだな。日によって光ったり光らなかったりするんだから」
「でも、最近は光ってることの方が多いんじゃない?やっぱりこれって、何かの精霊色なんじゃないかなぁ」
ジョゼフとマリナが口々に言う。
そう、エヴル伯爵領を訪れたあの日以来、ティーの髪は時折、あの時と同じ不思議な輝きを放つようになっていた。
もしかするとそれ以前にも、ティーが気付かなかっただけで光っていたこともあったのかもしれない。マリナの言う通り、それが発現する頻度・時間共に、日を追うごとに増してきているのだ。
「ま、この件は、王宮でレアンドル殿下が調べてくれてるんだろう?言わずと知れた精霊石の専門家だ。任せておけば間違いないさ」
「はぁ…私のために、レアンドル殿下に動いていただくなんて、あまりに畏れ多いのですが」
セレスティンからこの話を聞いた時には、驚きのあまり卒倒してしまいそうだった。
「大丈夫だよ!レアンドル殿下って、セレン様のお友達なんでしょ?めっちゃ頭いいみたいだし、ちゃちゃっと調べて教えてくれるよ」
マリナはそう言ってカラカラと笑うが、セレスティンが王宮を訪ねて以来、レアンドルからは今のところ何の連絡もないようだ。調査が難航しているのか、あるいは公務に追われて、手を付ける余裕がないのか…
いずれにせよ、殿下のご迷惑になっていないといいのだけれど…と、ティーは小さく溜息を吐いた。
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時を同じくして、王宮では今年のリリー・プログラムが、いよいよ大詰めを迎えていた。
受講生たちは一人一人教官室に呼ばれ、成績書と修了証書を交付される。
そしてアリーシアも、マクレイン女史の教官室に呼ばれたのだが。
「――不合格?」
告げられたその言葉の意味を、アリーシアは理解できなかった。
口をぽかんと開けて、アリーシアはそれを、そのまま口に出してみる。
「ふ、不合格って、どういう意味よ?」
「そのままの意味です。貴女に、リリー・プログラムの修了証はお渡しできません」
マクレインは淡々と答えるが、当然アリーシアは納得いくはずもない。




